毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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04-34 真紅の衣

「ハハハ! ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 地震の唸りを圧して高笑いが響き続ける。

 真紅の駆動騎士。

 極めて優秀な魔導技師でもあるウィナー伯爵の、これが切り札だった。

 超古代の遺物(アーティファクト)である魔導甲冑(パワードスーツ)

 魔法干渉力場を生みだし、ほとんどの魔法を阻害する紫のマント。

 それらから感じ取れる莫大な魔力はリアスの「白の甲冑」すら遥かに上回る。

 

 彼らが呆然としていたのは一瞬だった。

 だがその一瞬の隙を突いて、三人のエージェントが倒されている。

 

 流れが変わった。

 エージェントたちが押される。

 モリィ達が加勢してようやく互角。

 地上に降り、援護に加わろうとしたセーナに悠然と近づく真紅の駆動騎士。

 

「近づくな!」

 

 言葉と同時にセーナの矢が放たれる。

 放たれるとほとんど同時に着弾したそれは、真紅の甲冑の表面装甲とぶつかってまばゆい光の爆発を起こす。

 光の消えた後には、全く無傷の真紅の甲冑。

 

「・・・」

 

 既に二の矢を構えていたセーナの額に汗が浮かぶ。

 

「はははは、驚いたかね? 慣性中和装甲と言ってね、物理的なエネルギーを魔力でもって相殺してしまうのさ。

 君のそれは呪術で矢を強化している――単純に威力を上げているのではなく、矢という概念を強化しているのかな?

 まあとにかく呪術だろうと神授魔法だろうと、結局のところは強い方が勝つ。ましてや真なる魔法の産物に、その残りカスである呪術が勝てるわけはあるまい」

「くっ・・・!」

 

 見下した口調であざけるウィナー。

 魔法には大雑把に分けて《真の魔法》と、そこから分化した《神授魔法》、《妖精魔法》があることは先に述べた。「呪術」とは妖精魔法の別名だが、神授魔法を重視するものは侮蔑的表現として使うことがある。

 今のウィナー伯爵がまさにそれだった。

 

「しかし《精霊神の加護》か・・・ここで折角の地震が中途半端なものになっては困る。

 万が一もあるし、君にはここで消えて貰わねばなるまい」

「セーナ!」

「セーナさん!」

 

 セーナの周囲には白兵戦の能力を持たないモリィしかいない。

 この中で一番白兵戦に強いリアスは三人がかりで押さえ込まれている。

 負けてはいないが、見事な連携の前に攻めあぐねていた。

 

「・・・」

「!」

 

 ウィナーの突き出した両手の間に光球が生まれる。

 

「クソッ、チャージを・・・!」

「残念、遅い」

「! モリィ! どけっ!」

「なっ」

 

 間に合わないと察したセーナがモリィを突き飛ばし、反対方向に跳ぶ。

 

「ご立派」

 

 駆動兜の下で笑みを浮かべてウィナーが光球を解き放つ。

 雷光銃のフルチャージ攻撃をも凌ぐほどの光が、セーナを飲み込んだ。

 ファンファーレは、鳴らなかった。

 

 

 

「・・・。・・・っ!?」

「なっ・・・」

 

 ファンファーレは鳴らなかった。

 だがその男は魔法のように現れた。

 

「・・・嘘だろ、おい」

 

 全身を覆う水色の騎士甲冑。翼をあしらった同色の兜、銀の星を染め上げたサーコートに真紅の籠手。

 右手に持つのは冷え冷えとした光を放つ剣――真なる毒龍(ヒドラ)の腹を切り裂いて出てきたという魔剣"毒龍を切り裂くもの(ヒドラ・スタッバー)"。

 左手に構える騎士盾、たった今ウィナーの光芒を弾いたそれは、神より授かりし金剛不壊の盾"ヴィブラント"。

 

「星の・・・騎士っ!?」

「こんなとこで何やってんだよロージ!?」

 

 モリィのツッコミに、ロージ――金等級冒険者『星の騎士』、もう一人の英雄(ヒーロー)は兜の覗き穴からウィンクして応えた。

 

 

 

「来るのが遅いですわ! 何をやってらしたんですの!」

「いや申し訳ない、レディ。魔法装置の伝達系統・・・だっけ? を処理していてね。恐らくだがこの男が意図したほどの地震は起こせまい」

「・・・ひょっとして、最初からこの計画のことを察しになられて?」

「ヒョウエくんに君たちがいるように、僕にも頼りになる仲間がいてね。

 まあこの場に間に合ったのは僕ともう一人だけだけど、そっちは戦闘はからっきしなもので、援軍は僕一人だけさ。戦力が不足してたらごめんね」

「あなたを相手に戦力不足と言える人はそうはいらっしゃいませんよ・・・」

 

 呆然とした表情のままでカスミ。

 にっ、とロージの時のまま、星の騎士が好青年の笑みを浮かべた。

 

「そう言う事だ! ウィナー伯爵は僕が抑える! レディ・セーナは何とか地脈を抑えてくれ! 他のみんなは倒せなくてもいい、伯爵の部下を押さえ込んでいてくれ!

 レディ・セーナに手を出されなければこちらの勝ちだ! そうすればヒョウエくんを治療する余裕も出来る!」

「「「「おおおおおおおおおおおっ!」」」」

 

 雄叫びが上がる。

 モリィが、リアスが、カスミが、ディグや"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェイル)"の面々すらもが叫び、高揚している。

 子供の頃から寝物語に聞かされた、世界を救った伝説の英雄。

 その英雄と今肩を並べて戦っている。

 裏の世界で戦ってきた男たちにすら火をつけるほどのカリスマ。

 

「こ、こいつら・・・っ!」

 

 流れが再び変わる。

 リアスやエージェント達がウィナーの部下たちを押し始めた。

 その様子をセーナが唖然として見ている。

 

「レディ・セーナ! 頼む!」

 

 ハッとしたセーナが表情を引き締めて頷いた。

 

「わかった、そちらも頼む」

 

 セーナが膝をつき、床に手を当ててエルフの聖句を唱え始める。

 星の騎士がうなずいて剣と盾を構え直した。

 

 

 

「お・・・おのれおのれおのれ! またしても貴様か『星の騎士』ッ!」

 

 真紅の甲冑の拳が震えている。

 

「好きこのんで君の邪魔をしているみたいに言わないで欲しいな。

 元はと言えば君の仲間が僕の装備を盗んだからこうなったんじゃないか」

「あいつを仲間などと言うな! けがらわしい! ・・・だが、貴様が出て来たところでどうしようもない! "青い鎧"ならまだしも、貴様にこの魔導甲冑のパワーが受け止めきれるかっ!」

 

 風が唸った。

 あるいは"青い鎧"のそれに匹敵しようかというパンチ。

 だが水色の騎士はそれを"ヴィブラント"の表面で滑らせる。

 ベクトルをそらせた反動を強靱な足腰で完全に吸収し、大陸最優の冒険者は小揺るぎもしない。

 

 流れをそらされ、完全に無力化された拳が通り過ぎると同時に長剣が振り下ろされる。

 的確に関節部に食い込んだその剣は、先ほどのセーナの矢と同じく小さな魔力の光を爆発させて止められた。

 

「やれやれ、面倒な」

「ちっ」

 

 ぼやくロージ・・・星の騎士グラン・ロジスト。

 舌打ちしてそれを睨むウィナー。

 

「だが一発でも当たればおしまいだ! この『真紅の衣(クリムゾン・ガーブ)』のパワーにどこまで耐えられるか!」

「必要とあらば、夜明けまででも」

 

 星の騎士が不敵に微笑んだ。

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