毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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五の巻「不思議の国のヒョウエ」
プロローグ「モリィの失言」


「説曹操、曹操就到(曹操の話をすれば曹操がやってくる)」

 

                          ――中国のことわざ――

 

 

 

「グラス湖に出没する白い仮面をかぶったオーク、退役軍人ノードストローム氏からの盗賊撃退依頼、サイドオータム村のヒマワリを荒らすゴブリン駆除、サークル村の井戸から出てくる女の調査、エノレム村からの爪刃熊(クロウブレード・ベア)駆除依頼・・・」

 

 夕方の六虎亭カウンター。

 先だっての事件から半月ほど、今日も今日とて毎日戦隊エブリンガーは山のような依頼を掛け持ちしていた。

 今日はやや早めに依頼が終わり、日のある内にメットーに戻って来れている。

 

「はい、全て確認致しました。こちら報酬の三万三千ダコックになります」

「どうも」

 

 金貨の詰まった袋を手に取って一礼する。

 にへら、とモリィが顔をゆるめた。

 

「今日は払いのいい依頼が多かったなあ。どうよヒョウエ。お前もそろそろ黒(等級)に昇進するんじゃね? そしたらあたし達も黒箱だぜ、黒箱!」

「これで昇進はちょっと難しいですかねえ」

 

 肩をすくめるヒョウエ。

 その背後から受付嬢が口を挟む。

 

「緑等級までは実績を積んでいけば昇進できますが、黒等級、そしてもちろん金等級への昇進は相応に大きな案件を解決しなければ難しいです」

「例えば真なる毒龍(ヒドラ)の討伐、とかですね」

 

 頷く受付嬢。

 納得がいかないのか、モリィが言葉を続ける。

 

「でもダンジョン即日踏破とかしてるだろ? それでも足りねえのかよ?」

「あのダンジョンは『穏やかな』類でしたからね。評価が高くなるのはモンスターがあふれ出して、周囲に甚大な被害を与えるタイプです。

 ああした比較的安全なダンジョンの攻略で黒等級になるなら、多分十個以上は・・・」

「ちぇっ、ケチくせえなあ」

「そう言う規則ですので」

 

 ぼやくモリィに肩をすくめる受付嬢。

 報酬が少ない、依頼主の扱いが悪いなど、けんか腰で文句をつけてくる連中に比べれば、この程度の文句などかわいいものだ。

 

「大きな被害を出した案件ほど、解決時の評価点も高くなりますからね。そんな事件が起こらないのが一番ですよ――まあそれはそれとして、お金になる案件がもっとあると嬉しいんですけど」

「ヒョウエ様、台無しです」

 

 カスミが溜息をついた。

 

 

 

 空いたテーブルにつき、ヒョウエが金貨の袋を開けた。

 330枚の金貨がひとりでに飛び出して、じゃらじゃらと10枚ずつの山になる。

 隣のテーブルの冒険者達がぎょっとした顔になっていた。

 

「では例によって一割、三千をパーティ共有資金に集めて、残りは7500ずつ山分けと言うことで」

「「「異議なし」」」

 

 金貨の内三十枚、山三つが別の袋に入り、ちゃらちゃらと音を立てる。

 ヒョウエが手を振ると残りの山が7つ半ごとに4つに分かれ、四人それぞれの手元に積まれた。

 

「ひょう、何度見てもいいなあ、この輝きは!」

「まあお金が大事なのはわかりますけど」

 

 苦笑するのはリアス。

 最初の頃は自分の分もまとめてカスミに預けていたが、これも修行だと言うことで、このところは自分の分は自分で管理している。

 

「仕事終わったんだからいいじゃねえかよ。料理も来たしまずは乾杯しようぜ!」

 

 満面の笑顔を浮かべるモリィの提案に、反対する者は一人もいなかった。

 

 

 

 エールを一気に煽ったモリィがぷはあ、と息を吐く。

 ちなみにヒョウエは香草茶、リアスはワイン、カスミは甘水(スイートウォーター)だ。

 

「あー、この瞬間のために生きてんなー。

 しかし昇進かあ。ヒョウエなら黒どころか金板狙えると思うんだがなあ」

「金等級が生まれるって言うのは金等級が必要になるくらいの大事件が起こるって事ですからね。

 それに金等級だと国家にも強く束縛されますから、いいことばかりでもないですよ」

 

 先日出会った金等級冒険者を思い起こして溜息をつく。

 素朴な正義感と善性の極みのような人物であったが、それでも言葉の端々に窮屈さを感じているのが見て取れた。

 リアスが頷く。

 

「ですわね。相応の身分には相応の義務が伴うものです」

「それでも黒板くらいにはなりてぇもんだな。

 黒箱なら随分と割の良い依頼も来るだろ?」

「そりゃまあ、信頼と実力の双方をギルドが最高に評価してるって事ですからね。

 依頼主の方もそれは大金を預けようって気になりますよ」

「うらやましい話だねえ。あーあ、黒箱に昇進するくらいの丁度良い大事件が起きないかなあ」

 

 頭の後ろで手を組み、椅子の脚を宙に浮かせてブラブラするモリィ。

 

「あのね、モリィ。そんな事言ってると・・・セーナ!?」

「え?」

 

 酒場の入り口に姿を表したのは、先だっての事件で知り合ったエルフの戦士、《風の乗り手》セーナだった。

 ヒョウエたちの姿を認めると、周囲のざわめきを無視して足早に近づいてくる。

 その顔は今にも泣き出しそうだった。

 

「ヒョウエ、そして仲間達よ・・・頼む、我らが森を助けてくれ。今ズールーフが大変なことになっているのだ!」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 他の三人からの視線が集中する。

 

「な、何だよ? あたしゃ関係ないぞ!? 関係ない・・・よな?」

 

 焦ったモリィが大きく手を振って無実をアピールした。

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