毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ピクシー・・・」
「おう、ピクシーだ、文句あっか?」
腕を組んで空中にふんぞり返る小さな妖精。
身長は15センチほど、透き通った鋭角な羽根からはかすかな燐光が放たれている。
つり目に赤金メッシュの跳ねた短髪、荒っぽい口調のよく似合うきつめの美少女だ。
「おうおう、なんだ、何じろじろ見てやがる。オレのツラがそんなに珍しいかよ?」
「いや失礼。ピクシーを見たのは生まれて初めてですのでね。
思っていたより綺麗なものですね」
「・・・。うん、そうかそうか! 何せオレ様だからな! 綺麗で当然だ!」
一瞬目を見開いた後、ピクシーの少女は笑みを浮かべ、腰に手を当ててそっくり返った。
口元には満足そうな笑み。
「ところであなたのお名前は? 僕はヒョウエ、彼女はセーナです」
「ヒョウエにセーナか! 変な名前だな! オレはピクシーのミトリカだ!」
「「!」」
「ん、なんだ? オレの顔に何かついてるのか?」
首をかしげるミトリカ。ちらりとセーナと視線を合わせる。
「ここから少し北のところに喋る岩のおじいさんがいたでしょう。
あのひとからあなたの事を聞いたんですよ」
「あーあのじいさんか。話なげーよな」
「ですよねー」
うんうんと頷き合う二人。
セーナは何か言いたそうだが口には出さなかった。
「とにかく話がくどくてさー、同じ事を何度も・・・って、そうじゃねーよ! テメー何もんだ!」
「おおう」
我に返り、いきなり大声を出したミトリカに、今度はヒョウエがのけぞる。
ちなみに人間の1/1000ほどの肺活量と声帯しかないピクシーが、何故人間と問題なく会話できるのか。
魔力で無意識のうちに声量を上げているという説、限定的な精神感応を併用しているからではないかという説などがあるが、気まぐれで飽きっぽいピクシーが長期間研究に付き合ってくれた例がないため、未だに確かな研究成果はない。
「何者だと言われましても、人間の
「そういう意味じゃねーよ! テメーみてーな魔力のカタマリに森を歩き回られると困るんだよ! さっさと森から出ていけ!」
すっ、とヒョウエの目が細まった。
明らかに変わった雰囲気に、ミトリカがびくっと震える。
「な、なんだよ?!」
「そこのところ、もう少し詳しく話して貰えませんか。僕が森を歩くと・・・いいえ、巨大な魔力が森にあるとなぜまずいんです?」
「そ、それは・・・」
「それは?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・う、うるせーっ! 邪魔なんだよおまえはっ!」
「!?」
「ヒョウエ!?」
ミトリカの体から――ヒョウエのそれに匹敵、あるいは凌駕するような――巨大な魔力が放たれた。
虹のような色とりどりの花火が部屋の中で静かに弾ける。
「―――」
セーナがまぶしさに思わず目をつぶる。
目を開いた時、部屋の中にピクシーの姿はなかった。隣にいたはずのヒョウエも消えている。
「ひょ、ヒョウエ! どこだ!?」
「大きな声を出さなくても聞こえてますよ。こっちです」
「ああ、ヒョウ・・・えっ?」
声のした方向――足元を見下ろして、セーナが絶句した。
ばたばたと足音がしてモリィが、続けてリアスとカスミが飛び込んできた。
「どうした、何だ今の魔力、の・・・」
「ヒョウエ様、ご無事・・・」
モリィとリアスが絶句する。
そしてカスミは。
「か・・・かわいいーっ!」
「勘弁して下さい、ほんとに・・・」
手を組んで目をきらきらさせるカスミ。
身長30センチ、2.5頭身のデフォルメされた姿になったヒョウエが深い深い溜息をついた。
遅れてやって来たエルフの戦士達に事情をぼかして説明し、主立ったものを――寝ていたものは叩き起こして――会議室に集める。
「・・・で、そう言うわけです」
「なんとなあ・・・」
ぬいぐるみサイズ、それもキュー●ー人形か、ね△どろいどのような頭でっかちのディフォルメヒョウエが――セーナがその場に最初からいた事を除いて――事情を説明し終えると、ジャイアントパンダのトゥラーナが溜息をついた。
周囲の人間もつられて溜息。
話の内容に溜息をついたのか、それともこのビジュアルに溜息をついたのか、多分両方だろう。
なお理性を飛ばして先ほどまでヒョウエを愛でまくっていたカスミは、我に返ってから顔を真っ赤にして俯いていた。
おほん、とセーナの父ナタラが咳払いをする。
「しかし、ミトリカと言ったか。そのピクシーが犯人か、もしくはそれに近いところにいるのは間違いないな」
「ですわね。取りあえず発見して斬り捨てるべきでしょう。ヒョウエ様に狼藉を働いた相手に情けは無用ですわ」
「・・・他に手段がない場合にはな」
笑顔でぶっそうな事をのたまうリアスに、ナタラが冷や汗を浮かべた。
妻の若い頃を思い出してでもいたかもしれない。
「まあともかく、逆にこれで手掛かりを得られたかもしれません」
「どういうこった、ヒョウエ?」
「・・・なるほど、感染呪術ですね?」
「はい」
サーワの言葉にヒョウエが頷いた。
『感染』。
感染呪術 、伝染呪術などとも言われる魔術理論の一つだ。
簡単に言えば一度接触したもの同士、元は一つであったもの同士には繋がりが出来ると言うことで、例えば丑の刻参りの時に藁人形に髪の毛を入れたり、魔法陣を描くインクに自分の血を混ぜたりなどがこれに当たる。
「彼女の魔力で僕はこうなったわけですからね。今彼女と僕の間には強い繋がりがあります。魔力が僕の体に残っていますから尚更に」
この場で気付いているのはヒョウエ以外にはいないが、呪術の名を関するとおり、この手の作業は人間の使う神授魔法(系統魔法)より妖精魔法(呪術)の使い手のほうが向いている。
しかし探知系統の専門家かヒョウエのように多彩な術を修めている術師であれば、アドリブでそうした術の痕跡を追うことは不可能ではない。
少し前に習得した"
神授魔法と妖精魔法が本質的には同一のものであるという証左であろう。
「魔力の強いものというのも引っかかりますが・・・」
「その辺も相手を見つけて問い詰めるしかないでしょうね。
エルフの方々は引き続き森の捜索を、僕たちはミトリカを追うと言うことで」
「戦士達を何人か、あるいは何十人かつけてもよいが」
「僕くらい魔力のある方がいらっしゃるなら是非ともお願いしたいですが」
「それはさすがに・・・おらんのう」
トゥラーナが苦笑する。
「咄嗟のことで防御が完全ではなかったのもありますが、相手も強力無比な魔力の持ち主ですからね。下手に人を増やしても犠牲者が増えるだけです。現状では僕たちだけで追うのがベストではないにしろベターかと」
出席者が一斉に頷く。
「よかろう。あらためて頼むぞヒョウエ」
「最善を尽くします」
ヒョウエたち五人が一礼した。
「ところで、ヒョウエ様はずっとそのままなんですの?」
「解呪できなくもないでしょうけど、さすがはピクシーと言うべきか、術のかかり方がかなり強固で時間がかかりそうです。それに解かない方が魔力による繋がりが強いでしょうから・・・なんです、みんなしてその目は」
「いやあそのな・・・」
「当分戻らないと言うことでしたら、その、抱っこさせて頂けないでしょうか?」
「わ、わたしもお願いしますヒョウエ様!」
「あたしも・・・」
自分を見る少女たちの目の光に、ヒョウエが冷や汗を流す。
「ちょっとセーナ、助けてくれませんか」
「・・・すまん。私も抱きたい」
「ブルータスお前もか!」
ヒョウエの絶叫が会議室に響く。
トゥラーナやナタラその他はそれを生暖かい目で、サーワがちょっと異常な光を宿した目でそれを見つめていた。
どうでもいい話ですが、キューピー人形は2005年に著作権が切れているそうです。