毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
翌朝、一行は宮殿を出発した。
ヒョウエの杖は服とともにミニサイズになってしまったので、徒歩での追跡だ。
ヒョウエの術力なら全員を浮かせて移動することも十分可能だが、
なお前の晩、全員に愛でられまくったうえにカスミが最後まで添い寝をしたがったが、断固拒否したことを言い添えておく。
ふよふよ浮かぶ●んどろいど、もといヒョウエを先頭に一行が歩く。
それに続くのが目の鋭いモリィと、ここがホームのセーナ。
リアスとカスミが後方警戒を兼ねて後ろに続く。
「・・・」
「・・・・・・」
「もしもし、お二方、ないしお四方。何か後ろから妙な視線を感じますがちゃんと周囲を警戒してくれてます?」
後ろから動揺の気配があった。
「・・・」
「い、いえ、ちゃんと見ておりますわ!」
無言のセーナとカスミに、リアスの言い訳。モリィはわざとらしく口笛を吹いている。
「はあ・・・お願いしますよ、もう」
疲れたようにヒョウエが溜息をついた。
「気配が強くなってきました。かなり近いですよ」
半日ほど歩き、そろそろ昼食にしようかというところでヒョウエが口を開いた。
全員の顔が引き締まる。
「隊列を入れ替えましょう。先頭にリアス、続いてモリィ、セーナ、カスミで」
「かしこまりましたわ」
素早く隊列を入れ替えて前進を再開しようとするところで、ヒョウエがリアスの肩に降り立った。
「ヒョウエ様?」
「ここからは気付かれないよう、忍び足で行きます。リアスは難しいでしょうから、僕が浮かせます。他の三人は大丈夫ですね?」
三人が頷いた。モリィとセーナは腕のいい
まして忍者のカスミが忍びの術に長けていないわけがない。
「・・・」
「・・・(こくん)」
ヒョウエのゼスチャーにやはりリアス以外の三人が頷く。
一行は無言で前進を再開した。
「・・・(すっ)」
「・・・」
ヒョウエが手を上げるのと同時、一行が音も立てずに停止した。
「!」
指さす方向を見て目を見開いたのはモリィとセーナだけだった。
超高精度カメラ並みの視覚と、精霊の加護を得たエルフの感覚だけが、森の木々の奥に隠れた小妖精の存在を捉えられたのだ。
「・・・」
「(こくり)」
ヒョウエがカスミの方を見て、カスミがそれに頷いた。
セーナが手を上げてそれを制止する。
「?」
「? ・・・!」
カスミが首をかしげ、一瞬遅れてヒョウエが「それ」の存在を思い出す。
セーナに対して「了解」のハンドサインを出すと彼女は頷いて精神を集中させ、僅かに間を置いた後、魔力が一行の姿を覆い隠した。
「よし。小声でなら喋ってもいいぞ。何せ相手はピクシーだからどこまで通じるかはわからないが、この距離であれば大丈夫だろう」
「なんだこりゃ? 透明化の呪文か?」
「いわゆる"エルフの隠れマント"ですよ、モリィ。薄々感じてましたが、気配や音も遮断するみたいですね」
「え? 隠れマントって魔法の宝物じゃねえの?」
「そういう宝物は確かにあるが、これは精霊の力を借りた魔法だ。エルフなら大概のものは使える」
「はー・・・」
目を丸くするモリィ。同様の術を使うカスミが感心したように頷く。
「噂には聞いておりましたが、音や気配まで遮断できるのは便利でございますね」
「精霊魔法は総合的な魔法ですからね。『隠す』という概念自体を術にすることが出来ます。その分制御も消費もきついですけど。さ、行きますよ」
無言に戻って四人が頷いた。
そろそろと、これまでにも増して静かに一行が忍びよる。
やがて見えてきたミトリカは、何かに集中しているようで一行には気付いていない。
「むーん・・・やっ!」
(!)
(?)
ヒョウエたち、魔力を見る事ができるものには強力な魔力がミトリカから放たれて、かたわらの樫の巨木に吸い込まれるのが見えた。
「よーしよしよし」
満足げに頷くミトリカだが、ヒョウエやモリィにも何が起こっているのかはわからない。
ただ、セーナだけは僅かに眉をひそめた。
どうする?とでも言いたげにセーナがヒョウエに視線をやる。
やりましょう、というようにヒョウエが頷くと、四人が頷きを返した。
「にゃあっ!?」
ミトリカが奇声を上げた。
全身をがっちりと絡め取る、念動による金縛り。
その時には既に周囲をリアス、カスミ、槍を構えたセーナが固めていた。
後方には雷光銃を構えたモリィと、その肩の上で杖を構えるヒョウエ。
浮遊の術も打ち切って文字通り全力を込めた念動の魔力を、さすがのミトリカも振り払うことが出来ない。
「あっ、お前!? くそっ! 放せよクソヤローッ!」
「女の子が乱暴な言葉使っちゃいけませんねえ」
にやっと笑うヒョウエ。
ね●どろいどにしてくれたささやかな意趣返しである。
「テメーの知ったこっちゃね・・・」
わめき声が途切れる。ヒョウエの念動が口まで及んだのだ。
「さて、あなたに聞きたいことは三つ。
ひとつ、あなたは何者か。
ふたつ、この森を覆う異変と関係があるのか。
みっつ、この異変は何が原因なのか。
無論、答えによっては質問が増えますけどね。さあ、どうです?」
杖を動かして口回りだけ念動を解除し、ミトリカがぷはっと息を吐き出す。
それと共に、嵐のような罵詈雑言が一行を襲った。
「*★∩≠♀♂※▽〃▼#∵∞∫¶∃!!!!!!」
R18およびR18Gタグを付けたくないので内容をここで記すことは差し控えたい。
ただ、リアスとカスミとセーナが顔を真っ赤にし、モリィですら鼻白むレベルのものだったとだけ述べておく。
顔をしかめたヒョウエが再び杖を振り、森に沈黙が戻る。
「―――」
程度は違うにせよ唖然、もしくは憮然とする一行。
ヒョウエが大きく息をついたのが合図だったかのように、どうにか再起動する。
「ったく、とんでもねえやつだな・・・色々な意味で」
「しかしどうしましょう?」
「私は王宮に連れて行くのがいいと思う。エルフの術師が総掛かりならこいつを押さえ込み続けることも可能なのではないか? もちろんヒョウエの術がどれほどもつか次第だが」
「王宮まででしたら問題ないでしょう。では――っ!?」
その時、樫の大樹の表面がバリバリと裂けた。
「何だ、人の顔?!」
はっと気付いたセーナとヒョウエが同時に空を見上げた。
「そうか、正午!」
巨大な顔のついた樹の両側から太い腕が生え、引き抜いた根が足になる。
「!」
「しまった!」
それでわずかながらに集中が途切れたのか、それとも先ほどから解呪を試みていたのか、僅かながら念動の枷が緩む。
「ЫНИМЫЦЬФЕРАФ!」
ヒョウエにも理解出来ない言語でミトリカが何かを叫び、周囲が暗転した。