毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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05-11 フライ・ライク・アン・アロー

 風を切り裂いてヒョウエが飛ぶ。

 小さくなっても、いやむしろ小さくなったからこそ速度は上がっている。

 速度が上がりすぎて、周囲に念動障壁を張らなくてはならないほどだ。

 

「・・・?」

 

 飛び立って一分ほどして違和感を感じた。

 今ヒョウエはほぼ全力、亜音速で飛行している。周囲に障壁を張らなければ空気抵抗でダメージを受けるレベルの速度だ。

 それなのに顔に到達しない。せいぜい3キロほどの高度であるのに、全く距離が縮まらない。

 

「!?」

 

 下を見て目を見張った。

 飛び立って数秒ほど――距離で言えばせいぜい1キロほどしか離れていない。

 そのまま一分ほど上昇してもみたが、やはり地上との距離は開かなかった。

 ため息。

 そのままヒョウエは針路を変えて地上に降りていく。

 今度はぐんぐんと地上が近づいて来た。

 

 

 

「おい、一体どういう事だよ? 途中で止まってたぞ」

「ああ・・・やっぱり地上からだとそう見えるんですね」

「どういうことですの?」

「実はこれこれしかじか」

 

 簡単に状況を説明すると、四人とも眉を寄せて考え込んだ。

 

「どういう事だ? わけわかんねえな」

「幻術、それとも精神操作の類でしょうか?」

「その様な事が出来るんですの、カスミ?」

「申し訳ありません、心の術に関しては私も詳しくは・・・一族の先達にその様な話を聞いたことがあるだけでして」

「まあ心の術かどうか、確かめるのは簡単・・・でもありませんか。モリィ、セーナ。あなたたちの得物はどれくらい遠くまで届きます?」

「あ、なるほど」

 

 ぽん、とモリィが手を打った。

 

「あたしの雷光銃はフルチャージなら数百メートルは行けるが、それ以上遠くに届くかどうかはわかんねえなあ」

「あの顔に届かせるだけなら問題ない。ヒョウエの言ったような妙なものがないのであれば、だが」

「じゃあセーナにお願いしましょうか。問題は王宮に矢を撃っていいのかということですが」

「あー・・・それは大ごとですね、言われてみれば」

「・・・一応お爺様にお伺いを立ててみようか?」

「そうしましょう」

 

 まじめな顔でヒョウエが頷いた。

 

 

 

 幸い許可は二つ返事で下りた。

 いわく、

 

「イボに針を刺したところで患者を害したことにはなるまい」

 

 とのことである。

 再び王宮の外に出て、正面2kmほどのところで立ち止まる。

 目ざとい衛士達が視線を向けてきていた。

 

「それでは少し離れていてくれ」

「わかりました」

 

 ヒョウエたちが離れたのを確認すると、セーナは弓と矢を持ち、大きく深呼吸した。

 呟くように呪言を口にする。弓に矢をつがえ、斜め上に構えて静止。

 

「・・・おお・・・」

「・・・!」

 

 器に水が満ちるように、弓を構えた姿に魔力が満ちていく。

 ヒョウエとモリィが目を見張る中、ふっ・・・と矢が放たれた。

 

「!」

 

 視線が上空に集中する。

 果たして、セーナの放った矢は空中の一点で静止していた。

 

「あー、やっぱりか・・・」

「僕が飛んでいたときもあれくらいの?」

「そうだな、あれくらいの高さだった」

 

 1キロほどの高さにある一本の矢であるから、常人が視認するのは難しい。

 モリィは《目の加護》で、セーナはエルフの鋭敏な視覚で、ヒョウエは魔力感知能力によって大体の距離を測れるが、リアスはもちろん、カスミでも遠視の術を使わねばろくに見えない。

 

「こうなると精神操作の術という線はなくなりましたね。矢には心はないでしょうから」

「お前の念動みたいに空中で動きを止める術がかかってるのかね?」

「少なくとも念動ではないと思います。飛んでいたときにはそう言うのは全く感じませんでしたから。

 何と言うか、全力で飛び続けてはいるんですよ。でも前に進まないんです」

「???」

 

 眉を寄せて目を白黒させるモリィ。

 リアスが溜息をついた。

 

「いつものことですが・・・魔法というのは本当にわかりませんわね」

「一応魔法を扱える身で言うのも何だが・・・同感だ」

「同じく」

 

 セーナとカスミが異口同音に頷いた。

 

「けど、じゃあなんなんだ?」

「それなんですけどセーナ、ここから上空に飛び上がると、永遠に飛び続けると言ってましたね?」

「ああ、結界の・・・つまりあれもそうだというのか?」

「現状では可能性でしかありませんが。結界を張った人か、そうでなくても魔術に長けた人に相談できませんか?」

「わかった。話してみよう」

 

 セーナが頷いた。

 

 

 

「ほれ、早くせんかい! はよう! はよう!」

 

 目をらんらんと輝かせているのはズールーフの森の術の長、シャンドラ。

 白ひげと白髪の塊からシワだらけの目元が覗く、猿のように小柄なエルフの老人である。

 セーナから話を聞くなり、止める間もなく飛び出てきた。

 

「急かさなくても顔は逃げませんよ。むしろ逃げてくれた方が嬉しいですが」

 

 そんなことを言いつつ王宮から再び出てくると、先ほどいたあたりの地面に一本の矢が刺さっている。

 セーナが撃った矢だった。

 

「お? どうしたんだ?」

「言ったでしょう、空中に止まってるわけじゃないって。空中を飛び続けて、今地面に落ちたんですよ――逆に言えば何分も飛び続ける矢を撃ったセーナが凄いんですが」

「言われたとおり全力で撃ったからな。弓だけは得意なのだ」

 

 セーナがはにかむように言ったが、その表情もシャンドラのセリフで暗転する。

 

「弓だけはな。いずれ族長となる身なんじゃから学問や術も苦手なりに修めんかい。素質は悪くないのに術の修練から逃げ回りよって」

「うっ」

 

 顔を引きつらせるセーナ。

 冷たい目で主を見上げるカスミ。

 リアスがセーナと同じように顔を引きつらせる。

 それらに見てみぬふりをする情けがヒョウエとモリィにもあった。

 

 

 

 地面に落ちた矢を、セーナが再び全力でヒマワリの暑苦しい顔に向けて撃つ。

 放たれた矢はやはり、上空一キロほどのところで静止した。

 

「ふむう。面白い。面白いな」

 

 術で視覚を強化しているのだろう、シャンドラは空中に静止した矢を飽きもせずに眺めている。

 

「姫よ、孔雀鷲を回してくれんか。もそっと近くで見たい」

「何でしたら僕がお連れしますが。孔雀鷲と違って空中に止まれますよ」

「おう、できるのか。では頼もうかい。ほれ早く、ほれ早く!」

「はいはい」

 

 興奮するシャンドラに苦笑するヒョウエ。

 騒がしい老人だがこう言うのは嫌いではない。

 何と言ってもヒョウエ本人がその同類だ。

 

 

 

「おっ。おおおお! 何となあ。これほどの念動術を見たのは800年の人生で二回目じゃわい!」

「ヒョウエは"来たりし者(アラーキック)"だからな。我々と比べても術力は桁外れだ」

 

 はしゃぐシャンドラに、どことなく自慢げに説明するセーナ。

 ヒョウエが無言で肩をすくめた。

 

 六人を持ち上げても速度は余り変わらない。

 一分ほどして一行は上空一キロメートル、飛ぶ矢に追いついた。

 

「ふむう」

「本当にぴったり止まってますわね・・・」

「何と言うか、力はかかったままですね。止まってるわけじゃなくて、やっぱり飛び続けてるんです」

「何言ってるんだか、ほんと訳わかんねえ」

 

 念動を得意とするだけあって、ヒョウエは力のベクトルというものを感知できる。

 空中に静止してるように見える矢には射出したときとほぼ変わらない力がかかっており、「静止しているように見えるが飛び続けている」という状態であることがわかった。

 

「じゃろうな」

 

 シャンドラが頷く。

 

「何かおわかりで?」

「うむ。簡単に言えば広さを無限に引き延ばす結界じゃな」

「無限の空間ということですか!? つまり無限の速度で移動できない限り突破できないと?」

「おお、わかるか。まあかいつまんで言えばそう言う事じゃ。無限の広さを一瞬で移動できる手段か、そもそも空間を越えて転移する手段を持っていなければ突破することはできん」

「もしくは結界そのものを破るか、ですね」

「無論それもある。ただその場合・・・」

「ヒョウエが二人に増えた・・・」

 

 猛烈な勢いで専門的な話を繰り広げるね▲どろいどと老人を、残りの四人がげんなりした目で見つめていた。

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