毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
ウインクを終えた巨大な顔と中点に輝く太陽を、誰もが交互に、そして不安そうな目で見比べていた。
「関係あると思います?」
「ないとしたらとんでもない偶然ってことになるだろうのぉ」
正午に変異を起こす人や木々。ミトリカが魔力を放射し、正午に"
それらの関連を疑わないようであれば、睡眠不足か"
「にしても・・・」
と、大樹の顔を見上げながらモリィ。
「何で誰も気付かなかったんだ? 魔力の波動を毎日発してたってことだろう?」
「そりゃまあ、間違ってもまじまじと見つめたいものではありませんし・・・」
「顔を中心に放射状に発せられとるから、王宮の中では気付けんかったんじゃろうなあ・・・波も微細なものじゃったし、実際外にいたところで、わしら以外は気付かなかったわけじゃしな」
「私や他のエルフも気付かなかったからな。森の中の様々な変異の波動が邪魔になっていたのかもしれん」
「ですね。まあそれは後で議論することとして」
セーナの言葉に頷いて、改めてヒョウエが樹の顔を見上げる。
「やはりあれがもろもろの変異の原因の一つなのは間違いないでしょう。
あれに干渉する前に、少なくとも並行して、あれを改めて調査してみる必要があると思うのですがどうでしょう」
シャンドラが頷いた。
「じゃな。しかしそれには手が足りん・・・シュヴィン、ちょっとひとっ走り行ってアディーシャ達をこっちに呼んでこい」
「いいんですか、お師匠? アディーシャ様が変異の治療に当たっているのは・・・」
「トゥラーナにはわしが許しを貰ってくる。対処療法を続けるより、まずは大本をどうにかせねばなるまい」
「わかりました」
命令された若いエルフが王宮広場の外に駆け出した。
シャンドラが周囲を見渡す。
「そう言うわけでわしは報告を兼ねて族長の所に行ってくる。
ヒョウエ殿達はすまぬが待機しておいてくれ。
「わかりました」
ヒョウエたち、弟子たち、衛士達がそれぞれ首肯するのを確認し、シャンドラは王宮のほうに歩いて行った。
術師の中ではシャンドラに次ぐ地位にあるというアディーシャは、紫色の髪と神秘的な雰囲気を持つエルフの中年女性だった。
中年とは言ってもその顔にはシワ一本なく、前世で言えば美魔女と言われるたぐいの人種である。
「アディーシャ様は遠見や予見の術に長けた方なんですよ」
シャンドラの弟子の一人は誇らしげにそう言ったもので、人望も厚いのだろうなと察せられる。
弟子であろう数人のエルフを連れてこちらに歩いてきたアディーシャが、ヒョウエの前で軽く膝を折る、人間の貴婦人風の礼をした。
「お初にお目にかかります、ヒョウエ殿下。シャンドラ様の下で術師を務めさせて頂いております、アディーシャと申します」
「これはご丁寧に、アディーシャ殿。故ありまして今はただの術師ですので、どうぞヒョウエとお呼び下さい」
「わかりました、ではヒョウエ殿と」
物腰は丁寧だが、どこか謎めいた雰囲気でアディーシャが微笑んだ。
「しかし僕たち人族の礼儀にも通じていらっしゃいますが、森の外に出たことがおありで?」
「はい、若い頃に少し」
アディーシャが頷く。微笑みはその間も絶やさない。
「しかし・・・話には聞いておりましたが、さすが"
「まあ《加護》がそちら方面なので。生前から魔法には憧れていましたから運が良かったですね」
「"
「その辺は何ともわかりませんが・・・いや、確かに本人の希望や適性と《加護》がずれていたという話は聞きませんね。
リアスのご先祖様も確か《剣の加護》ですよね?」
リアスの付けている白の甲冑を見つけた初代『白のサムライ』のことである。
幕末から明治にかけての武士だった彼は、こちらに来て無双の剣の冴えで歴史に名を残した。
「はい、その様に伝えられておりますわ。そう言えばカスミとモリィさんのご先祖様はどうなのでしょう?」
「『紅の影』さまについてはわたくしも存じません。ただ、光と闇の術をよくしたとは聞いております」
「あたしも聞いたことはねえなあ。ただ、爺さんも親父も《目の加護》だったんで、ひょっとしたらひい爺さんもそうだったかもしれねえな」
そんな事を話して暇を潰していると、シャンドラが戻ってきた。
「トゥラーナの頑固ジジイめ、渋りよったが何とか説き伏せたわい。まったく、まず原因をどうにかしないことには被害が延々増えるだけじゃろうが」
「頑固ジジイって、お前も頑固ジジイだろうが」
呆れた顔のセーナに、両手を振り回してシャンドラが叫ぶ。
「わしの方が一歳若い! だから奴の方がジジイじゃ! 後わしは柔軟な思考の持ち主じゃ! 奴と違ってな!」
胸を張る白ひげの猿のような老人に、直弟子を含めて呆れた顔になる一同。
アディーシャだけが微笑みの表情を維持していた。
その日の午後は次の術式の準備と予備観測で過ぎた。
ヒョウエは術式構築の補助や魔力供給、"
モリィは《目の加護》を用いた並行観測などで術師たちに協力し、カスミは荷物からサイドテーブルを取り出し、茶を淹れたり菓子を用意したりなどでちょろちょろと動き回っている。
「暇ですわ・・・」
「ああ・・・」
その一方でリアスとセーナは無聊をかこっていた。
高度な術が使えるわけでもなく、知識があるわけでもなく、魔力に敏感なわけでもない。
しかも下手に身分があるせいで雑用をしてもらう事もできない。
一応セーナは現在戦士階級である"護り手"であるから、建前としては衛士達と同等なのだがそれはそれである。
「暇ですわ・・・」
「ああ・・・」
置いていかれたような感覚を覚えつつ、草原に座り込んだ二人が繰り返す。
その背中がすすけていた。
数日が過ぎた。
その間、二回ほどシャンドラが儀式を執り行ったものの、やはり結界を解除するには至らなかった。
一方でアディーシャ率いる観測班の方は少しずつではあるが着実に情報を蓄積していった。
「まずあのヒマワリ顔ですが、やはり毎日正午に微細な魔力波動を発しているのを確認しました」
王宮内部、族長の部屋で会議を兼ねた報告が行われている。
ナタラやサーワなど主立った者が集まっているが、シャンドラの姿はない。
「加えてそれとはまた別の波動を持続的に発しています」
「ふむ? ウインクするときの波動が変異を起こしているとして、そちらは何をもたらしているのだ?」
「そちらは何とも。ウインクによる波動が変異を起こしているというのも、状況証拠からの類推でしかありませんし・・・」
「うーむ」
顎をつまんだトゥラーナが周囲を見渡す。
「そういえばシャンドラはどうした。今朝会議をするのは伝えてあったはずじゃろう」
「はい、父上」
ナタラが頷く。
「ふん、クソジジイめ、ついに耄碌したか。わしのことをさんざんジジイ呼ばわりして自分が寝ぼけていれば世話はないわ」
悪態をつくトゥラーナに、ナタラやアディーシャが苦笑する。
どうやらこの老人二人はそう言う仲であるらしい。
「誰ぞ、あのクソジジイを叩き起こして連れてこい。寝間着のままでもかまわ――」
「失礼します!」
衛士が部屋に飛び込んできた。
「ほ、ご報告・・・」
「落ち着け! 何事だ!」
一喝したのはナタラ。
衛士は深呼吸すると、直立不動の体勢になった。
「じゅ、術の長シャンドラ様が殺害されました!」
「何いっ!?」
全員が椅子を蹴倒して立ち上がった。