毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
モリィ達四人と分断されたヒョウエが、宙に浮きながらしばし考え込む。
(黒トカゲは最初からこれを狙っていた? だとすれば僕と、僕たちの能力をよく知っている人間でないとこれはできない。
内部に裏切者? であるならば誰だ? シャンドラさんを殺害したのは儀式を妨害してあの顔を守るため? それとも口封じ?
僕たちを分断して閉じ込めたのも、儀式の妨害か? あるいは・・・ああ、駄目だ駄目だ)
思考に深くはまり込みかけた事に気付き、ほっぺたを両手でパンパンと叩く。
「悪い癖ですね。わかっちゃいるけどやめられない、ってほんとですよ・・・さて」
ふわりと地面に降りる。
30センチになってしまった呪鍛鋼の杖を両手で握り、森の土に突き立てた。
「
銀色の杖を中心に、見えない波動が周囲に伝わっていく。
しばらく目を閉じて集中していたヒョウエが、ふう、と息をついて目を開いた。
続けて"
物にせよ生物にせよ、術者の見知った何かのある方向とそこまでの距離を大まかに示してくれる術である。
今度もしばらく集中していたが、やはり息をついて目を開く。
「やっぱり周囲にモリィ達の気配はなし。噂に聞く『隠れ里』に閉じ込められましたかね。あるいはモリィ達のほうが、かな」
『隠れ里』。異界化、妖精境などとも言うが、つまる所異空間に閉ざされた結界、小世界を作る術である。ズールーフの森を包む結界もその一種だ。
真なる魔術師=神々を除けば今の世界でそれを作れるのはエルフかピクシーの妖精魔法使い、それも多数の術者が協力し合う必要があると言われている。
「とは言え
"
壁というか結界というか、そうしたものに阻まれたのは恐らく間違いない。
インヴィジブル・マローダーに取り込まれた偽の王都、ミトリカに取り込まれた彼女の内面世界を思い出しつつ周囲を見渡す。ぐるっと見渡して最後に上。
「取りあえずはまあ、迷った時は上からですよね」
再び宙に飛び上がり、そのまま森の木々の上に出る。
「うわー・・・」
思わず声が出た。
太陽のない、それでも真昼のように明るい青空。
地平線の彼方まで三百六十度全方位に続く森。
青空と木々の梢以外には鳥の姿すら見えない。
「まあ取りあえず、こう言う時は実験ですね」
溜息をつくと、ヒョウエは全力で上空に飛んだ。
結果として、やはりこの森?は閉じた世界だった。
上空に飛べば、巨大顔の結界の時のように一キロほどより上には行けない。
いくら飛んでも位置が変わらないような状態だ。
ならばと森の木に目印を付けて適当な方向に飛べば(太陽もなければ方位磁石も当然のように働かないので方角がわからない)、一分ほどで元の場所に戻ってきた。
周囲が閉じた空間になっているのは確定らしい。
「全速で飛びましたから・・・さしわたし20キロほどでしょうかねえ。
さて、ダンジョン・コアやヴィラン・コアの中なら取りあえずどっちかに向けて進めばいいんですけどこの場合は・・・」
先ほど述べたように『隠れ里』は結界の一種だ。これをかけた術者が中にいるとは限らないし、ダンジョン・コアのような術式の起点が内部にあるとも限らない。
そうしたものが無い場合、内側から結界の脆い部分を見つけて力づくで押し通る必要がある。
その箇所、弱点を見つけなければ、いかにヒョウエが魔力チートの持ち主とは言え、力任せに推し破るのは不可能だ。
溜息をついて地上に降りる。
「やれやれ・・・っと」
"
ヒョウエが溜息をつきながら『隠れ里』のほころびを捜している時、残されたモリィ達は――にらみ合っていた。
「ですから、まずはヒョウエ様の居所を突き止めるのが先ですわ!」
「仕切んなよ。足跡がないんだから追えるわけねえだろ」
「捜してみもせずにわかりませんわ! 近くに行ったら何か感じるかも知れないでしょう!」
「だからいっぺん戻ってだな・・・」
「ヒョウエ様が危地にあるかもしれませんのに悠長なことはしてられませんわ!」
「・・・」
「・・・」
普段は多少の反目はあってもうまく折り合いを付けてやっている二人である。
だが、ヒョウエが恐らくは罠にかけられて分断されてしまった現状、互いに焦りが余裕を奪っていた。
「お嬢様、モリィ様。それこそこの場で言い争っていては埒が開きません。ますますヒョウエ様を危うくするだけです」
「そりゃあまあ・・・」
「わかってはいるのですけど」
カスミが割って入るが、結局のところ問題はどちらを選択するかなので状況が解決するわけではない。
カスミも立場的にどちらについても角が立つ。
「・・・」
「・・・」
自然、モリィとリアスの視線はセーナに流れる。
カスミを含めて三人の視線を集中されたセーナが溜息をついた。
パーティの「お客さん」であるゆえに今まで口出しはしなかったが、こうなってはやむを得ない。
「今回、お前達の言い方で言えば私が依頼をして報酬を払う。そしてお前達がその依頼を受ける立場で、私は依頼人だ。それはいいな」
「そりゃそうだ」
「ええ、それが何か?」
「なら
モリィとリアスが顔を見合わせた。
「まあそれなら」
「しょうがありませんわね」
二人が頷き合い、カスミがほっと溜息をついた。
セーナが苦笑する。
「お前達、二人とも年上なのだからカスミに苦労をかけるな。かわいそうに、弱り切っていたではないか」
「せ、セーナ様! わたくしはそのようなことは・・・」
カスミが慌て、モリィとリアスはばつの悪そうな顔になる。
また苦笑。
「ともかく、ヒョウエが気配ごと消えたと言うことは何らかの強力な魔術が絡んでいる可能性が高い。
私は魔術は不得手だし、モリィも魔術を見る事はできても干渉は出来ない。
ここは引き返して、術の達者なものを応援に呼んで来るべきだろう。
丁度この森には感知の術の達人がいる。
アディーシャと彼女の弟子たちがいれば、ヒョウエ救出の可能性は随分上がるはずだ。いいな」
セーナの確認に、三人が無言で頷いた。
ふらふらと、ヒョウエが森の中をさまよっている。
本人としては捜索しているつもりだが、当てもなく飛んでいるだけなので、傍から見ればやっぱりさまよっているようにしか見えない。
「・・・!?」
いきなり、目の前に巨大な木が立っていた。
巨大と言ってもズールーフの王宮ほどに大きくはない。高さ40メートルほどの「常識的な」巨木だ。
良く見れば各所にこぶのようなふくらみがあり、それぞれには蜂の巣かキツツキの住処のような穴がぽっかりと空いている。
「これは・・・」
「きゃっはー!」
いきなり、空中のヒョウエに抱きついてくる影があった。
「!? ミトリカ!?」
「うん、そうだよヒョウエ! 待ってたんだ!」
「・・・!?」
ヒョウエの首っ玉にかじりつき、満面の笑顔でピクシーの少女がそう言った。