毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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05-21 "ブラゴール"

「術師の皆さん、護りの術をよろしく」

「聞いたわね。みんなしゃきっとしなさい! 私たちの森は私たちで守るのよ!」

「は、はいっ!」

 

 怯えていた術師たちがアディーシャの一喝でどうにか体勢を立て直す。

 

「"緑の盾"! 全員で詠唱!」

「はっ!」

 

 術師たちが同調して術を発動する。

 周囲を緑がかった半透明の力場が覆う。

 黒い獣たちの体当たりが力場に弾き返されたのを確認し、ヒョウエの姿がふっと消えた。

 

「転移の魔術!?」

 

 目を見張ったアディーシャとミトリカ、エルフの術師たちが再度目を見張った。

 対照的に、モリィ達はにやりと口元を歪める。

 

 疾風が吹きぬけた。

 あるいは青い閃光。

 3mを越える黒獣たちの巨体が、嵐に吹き飛ばされる子犬のように吹き飛ばされる。

 頭を砕かれ、体をへし折られ、森の木に叩き付けられて動かなくなる。

 

 そしてもう一度。

 それで一行の周囲の黒獣達はほぼ一掃されていた。

 10mほどの距離を開けて遠巻きに囲む形になった生き残りと、女体型が天を仰ぐ。

 モリィ達もまた。

 

 木々の梢の間にいて、それでも全く損なわれないその存在感。

 透き通った湖のような青い騎士甲冑。どこまでも鮮やかにひるがえる真紅のマント。

 

 ファンファーレが鳴った。

 少なくとも彼らは確かにそれを聞いた。

 

 奏でるものなどいなくとも。

 そこがたとえ荒野のただ中であっても。

 ヒーローは、ファンファーレと共に現れるのだ。

 

 

 

 周囲を睥睨する「青い鎧」。

 この形態になったときのみ発動する魔法的感覚が、森の木々を透かして周囲の敵を視認する。

 生き残りはおよそ百五十。

 そして体躯は5m程度だが、ほかの黒獣の数十倍の魔力を内包する女体型の生えた黒獣。

 

(やはり、奴がボスか)

 

 動こうとしたとき、感覚が異変を捉えた。

 

(!?)

 

 はじき飛ばし、体を砕いて叩き付けた黒獣達の体がじゅるり、と溶けた。

 水たまりのようになったそれは地面をするすると移動し、女体型に向かう。

 女体型の足元にたどり着いたそれは女体型に吸収されるように消えた。

 

「!」

「巨大化しやがった・・・!」

 

 液体状になった黒獣を吸収した女体型は、体長10mを越えていた。

 体高は6mを越え、アフリカ象の倍ほどの大きさになっている。

 顔のない女が、赤い口を更に広げてニヤリと笑った。

 

(このっ・・・!)

 

 急降下。

 青い拳が顔のない女の顔面をとらえ、振り抜かれる。

 肉と骨を砕く手応え。

 ぱぁん、と女の頭部が破裂する。

 

(!?)

 

 巨大黒獣が地面に這いつくばる。

 それと同時に全ての黒獣が破裂した。

 先ほどと同じようにその体が液体のように地面に広がる。

 

「え・・?」

「おい、どうしたんだ?」

「勝った・・・のか?」

 

 ざわつく術師たち。

 

「ちげーよ! 全然変わってねえよ! こいつらまだ生きてんぞ!」

 

 ミトリカの声が響く。

 それが合図であったかのように、全ての液体化した黒獣が女体型目がけて殺到する。

 

(ちっ!)

 

 青い鎧が女体型を持ち上げる。だが黒獣達の方が一瞬早かった。

 液体化した黒獣達は矢の速度で宙を飛び、女体型に融合して一つの塊となる。

 

(・・・いけない!)

 

 融合した固まりが脈動し、うねり、物理法則を無視して本来のサイズ以上に巨大化していく。

 

(やむを得ないか!)

 

 このままでは森への大規模な被害が不可避と見て、決断する。

 結界の向こう、森の中に数キロにわたって広がる空白と、その中央に立つ巨大な樹。

 

「ぬんっ!」

 

 その広場の端、大樹と人のいる場所を避けて黒い塊を投げつける。

 王宮周辺の結界をすり抜けるときに一瞬稲妻を走らせ、うごめく黒い塊が地響きと土煙を上げて大地に叩き付けられた。

 

「な、なんだっ?!」

 

 王宮の周囲を守っていた衛士達がざわめきながらも即応体勢をとる。

 青い鎧が黒い塊と王宮の間に割り込み、王宮と衛士達を背に守る形になる。

 その視線の先で黒い塊が100メートル以上の大きさに成長し、何かの形をとろうとしていた。

 

 

 

 大地が揺れる。

 震動に足を取られながらも先行して走るカスミとセーナの速度は落ちない。

 再び震動。

 木々の間を飛び出し、不安におののくエルフたちの居住区画を走り抜けたところで更に震動。

 居住区画をもう少しで抜けるというところでそれが来た。

 

「・・・!」

「なんだ!?」

 

 まばゆい光が木々の間を貫いて二人の目を刺す。

 王宮広場に駆け込んだ二人が見たのは、黒いオオトカゲの背中に角のある女性の上半身の生えた、先ほどの女体型を100mほどに巨大化させた大怪物。

 その周囲に広がるのは融解し、ガラス化した地面。

 

 で、ありながら巨大女体型には目立った損傷は見られない。

 大樹と巨大怪物の間、高度200mほどに青い鎧が浮いていた。

 

「まさか・・・あの光の術を受けて無傷とでも? そんな馬鹿な」

「あの"黒い怪物(ブラゴール)"のことを警戒しているな。何らかの術を放って、それで傷をつけられなかったというあたりか?」

「で、あろうかと存じます・・・ブラゴール?」

「エルフの伝承に出てくる、あのような怪物の名前だ」

 

 かつてこの怪物を越えるサイズと再生力を持っていた怪人"ムラマサ"を一瞬のうちに焼き尽くした青い鎧の必殺技、"太陽神の眼(マドゥロク'ス・ゲイズ)"。

 それを弾く"ブラゴール"に空恐ろしいものを感じる。

 物理打撃はすぐに再生し、熱にも強い。

 

(ヒョウエ様・・・!)

 

 カスミの頬を汗がひとしずく伝った。

 

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