毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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05-22 畜力(チャージ)

 王宮を背に、1kmほどを挟んで青い鎧と"ブラゴール"がにらみ合いをしている。

 

(これは・・・恐らく単純に熱変化に強いんでしょうね。あの表面の脂なりなんなりで弾いたわけではない。"冬神の吐息(テトラ・ブレス)"もこの分では望み薄ですね。それ以前にあれは周囲への巻き添えが大きい)

 

 大気を集めて過冷却し、極低温の冷気として叩き付ける"冬神の吐息(テトラ・ブレス)"は、原理上効果範囲が拡散しやすい。

 拡散させなければそもそも冷気が発生しないためだ。

 

(となると・・・いや、まずはもう一つ試してみるか)

 

 青い鎧が閃光と化して突貫する。

 角を生やした巨大な女体型の口が、真っ赤に裂けて笑みの形を作った。

 

 

 

 どん、と"ブラゴール"のへそ、女体型とトカゲの継ぎ目あたりに青い鎧が飛び込んだ。

 周囲の黒い肉が流体のようになって鎧をすり潰そうとするが、"隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"の生み出す膨大な魔力を圧縮した騎士甲冑はびくともしない。

 それでも注意を怠らず、全身で魔力波動を知覚する。

 魔力の波動を放ち、その反射を感知する念響探知(サイコキネティックロケーション)にも似た捜索行為。

 

(・・・核がない・・・"怪人(ヴィラン)"ではないのか!?)

 

「むん!」

『!?』

 

 念動の力を無制御に、全方向に放つ。

 "ブラゴール"の肉が内側からはじけ、女体がちぎれて地面に落ちる。

 その中から青い鎧が飛び出して先ほどと同じ位置に戻るが、その時には液体化した女体部分がトカゲと再融合し、数秒で元通りの半人半獣型になる。

 

「・・・」

『・・・』

 

 ふりだしに戻ったな、と言いたげにブラゴールが口を歪ませる。

 

(いいや、違うね)

 

 だが兜の下で、ヒョウエもまた笑みを浮かべた。

 

 

 

 しばしにらみ合いが続く。

 追いついて来たリアスとモリィ、ミトリカとアディーシャたち。

 王宮の周辺に展開した衛士達もスケールの違う戦いを前に、見守ることしかできない。

 

「!」

 

 ブラゴールが体中から触手を射出した。

 一キロの距離を瞬時に詰めて、数十本の黒い槍が青い鎧に殺到する。

 

「ふっ!」

 

 青い鎧がそれらを両手で払う。

 吹き飛ばされた触手の先が液体化して、下の広場に黒い水たまりを作った。

 いくらかは防ぎきれずに騎士甲冑に当たるが、傷一つ負わす事もできずに弾かれる。

 

「・・・ヒョウエは何故動かない?」

「わかんねえ。何かあるんだろうとは思うが・・・いや待て」

 

 モリィの目には、僅かながら魔力が鎧の隙間から洩れているのがわかった。

 

(こいつぁ・・・何か待ってるんだな?)

 

 触手が次々と射出される。

 次第にさばききれなくなる青い鎧を見ながら、モリィが強く唇を噛んだ。

 

 

 

(もう少し・・・もう少しだ)

 

 両手ならず両足をもフルに使い、触手を叩きつぶす青い鎧。

 広場には黒い液体となった触手の残骸が雨のように降り注ぐ。

 

 誰もが空を仰いでいた。

 青い鎧は触手を払い、ブラゴールを睨み付けている。

 ゆえに、誰も気がつかなかった。

 

「・・・!? 全員、構え! 前方に敵だ!」

「!?」

 

 衛士の一人の叫びに、全員が地上を見た。

 これまで地上に降り注いだ触手の破片が、最初に見た黒トカゲの姿になってにじり寄ってきていた。

 その数は百近い。

 

「やべえ、援護するぞ!」

「言われずとも!」

 

 モリィ達が一斉に走り出す。

 エルフの衛士達は槍を構えて横列を組み、衛士隊の中に小数いる術師が援護の術に集中し始める。

 そこに、一気に速度を上げたブラゴールの分体の群れが激突した。

 

「うわあああーっ!」

「怯むな! 耐えろ!」

 

 3mを越す巨獣の体当たりにも、エルフの衛士たちは耐えた。

 精霊魔法を用いて人間を越えた身体能力を得ている上で、術師たちの護りの呪文を受けてかろうじてではあるが。

 

「このっ!」

「おおっ!?」

「怯むな! あやつが本体を倒すまで耐えるのだ!」

「セーナ様!」

 

 刀を構えたリアスと、得物を槍に持ち替えたセーナが斬り込み、モリィとカスミがそれを援護する。アディーシャ達も術での援護に加わった。

 だが、それでも数が違う。

 基本のスペックが違った。その上分体たちはほぼ不死身だ。

 リアスが切り裂こうとも、液体からすぐに元の黒トカゲに再生する。

 モリィが雷光銃のフルチャージで吹き飛ばしても、多少体積が減る程度で、ほとんどダメージを受けているようには見えなかった。

 

「くっ、もう少し・・・!」

 

 面頬の下でヒョウエが歯がみする。鎧の隙間から洩れる魔力が一段と強くなっていた。

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