毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「・・・」
そしてまたミトリカも歯がみしていた。
小さな象ほどもある巨体にのしかかられ、必死で耐えるエルフの衛士。
額に玉のような汗を浮かべ、それでも矢継ぎ早に術を放つ術師たち。
モリィやリアス、セーナやカスミ達は元よりだ。
それなのに自分は離れた場所で、こうしてただ見ているだけだ。
「こんな魔力があるのに・・・あいつら全員助けられるくらいの力があるのに・・・あたしは・・・!」
涙のにじんだ目で空を見上げる。
その視線の先に、黒い触手に包まれようとする青い鎧。
「・・・?」
ピクシーの生来持つ魔力視覚が、青い鎧の本質をある程度まで見抜く。
極めて膨大な魔力を圧縮し、術式と共に固形化した具現化術式。
今も発する巨大な魔力を更に集中させ――
「・・・!」
目を見開く。
道がぱっと開けたような気がした。
「こう・・・だよな」
自らの強大すぎる魔力を少しずつ解放する。
だがそれを発散させず、暴走させず、心の手で掴んで自分の回りに押しとどめる。
力を放出しながらそれを押しとどめるマルチタスク。
それが魔力の制御のまさに基本であることに、ミトリカは気付いていない。
「・・・よし・・・!」
これ以上ははじけてしまうというほどに自分の周囲に魔力を圧縮し、前方を睨む。
もう一度魔力を掴む心の手を確かめ、ミトリカは突貫した。
「うわあああああああああ!」
「!?」
『ギギッ!?』
弾丸の速度で光の玉と化したミトリカが飛ぶ。
衛士達の隊列に襲いかかっていた分体達を横一直線に貫き、次々に破裂させた。
半分ほどの分体達を液体に変えたところでミトリカは宙に舞い上がった。
まとっていた魔力の光はほぼ消えている。
「はあ、はあ、はあ・・・」
「それよ! それでいいのよミトリカ! あなたは今、魔力を制御したのよ!」
アディーシャの言葉に、ミトリカが汗のにじんだ顔に笑みを浮かべた。
自分に絡みつく触手の隙間からそれを見て、青い鎧は頷いた。
(ならば・・・!)
魔力をさらに集中させる。
その体が、魔力視覚を持たないものにもわかるほどの、淡い燐光を放ち始めた。
『ギギギ・・・』
更に触手を放ち、青い鎧を完全に包み込んでしまうブラゴール。
1kmも伸びた触手の先に黒い球体。
笑みを浮かべ、青い鎧を握りつぶそうと力を込めた次の瞬間、まばゆい光と共に触手の先端が消失した。
『!?』
消失だ。焼き切られたのでも砕かれたのでもない。
触手の玉のあった空間にまばゆい光。
いや、まばゆく光を放つのは青い鎧。
「
光が直視できないほどになる。
その光が宙高く飛び上がり、頂点で反転してブラゴールを目がけて一直線に降下する。
「はじけろ!」
『カ―――アアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
まばゆい輝きと共に
次の瞬間、ブラゴールの巨体は細胞の一片も残さず原子の塵に返った。
"
ヒョウエの得意とする物質変性系の術の一つ。
それを極限まで高めた上で体にまとい、体当たりして全力で放出する。
青い鎧を出しているときは、魔力を自分の体に集中させているために、離れた場所に術の効果を及ぼすことが難しい。
それ故のこの形態だ。
「怪人の場合、コアを砕いてしまうと魔力の暴走が起きかねませんが・・・もしあなたが怪人だったら、本当に無敵だったかも知れませんね」
本体の消滅と共に液体となり、今度は再生せずに動かなくなった分体達を見やってヒョウエは安堵の息をついた。
「ヒョウエ! ヒョウエー! 見てたよな!? オレやったぜ!」
下からミトリカが飛び上がってきて、兜の装飾にしがみつく。
面頬の下で笑みを浮かべ、ヒョウエはこのおしゃまなピクシーの頭を撫でてやった。
「さて・・・と。ちょっと下で待っててください、ミトリカ」
「? ああ、わかったぜ」
素直に離れていくミトリカを確認して、ヒョウエは更に精神を集中させた。
天に掲げた右手を大きく一回転させる、"
大樹の王宮を見る。
ここからだと例の顔を丁度真横から見る形になった。
(集中・・・範囲を絞って・・・)
光が走る。
次の瞬間、巨大な顔は周囲の花弁ごと焼き切られて消失した。
「お・・・おおっ!?」
「父上!?」
「族長!」
王宮内部、謁見の間。
緊張した面持ちで玉座に座っていたパンダ、もといトゥラーナの姿が一瞬ぶれて元のエルフの老人に戻った。
「これは・・・やってくれたの、ヒョウエたちが」
「はい。恐らくは他の同胞や森の変異も・・・!」
一方王宮周辺の広場でも、周辺にいくつかあった変異が元に戻っていた。
アディーシャが興味深げに頷いている。
「なるほど。あの顔が常時出していた波動は、変異を維持するためのものだったのね。
まずミトリカが魔力で下準備をする。ウインクで変異を起こす。その後はもう一つの波動を常時発して、変異を固定化してたんだわ。
年単位でこの状態が続けば、変異が完全に定着してたかもしれないわね」
あー、と周囲が頷く。
「それはわかったけどよ、あの化け物を倒したのはともかく、どうやってあの顔を焼き切ったんだ?
どうにも手出しが出来ないから今まであのまんまだったんじゃねえか」
「簡単な事よ。まあその簡単な事にシャンドラ様も私も今まで気付いていなかったのだけれど。あの結界、結界があるにもかかわらず樹はそのままの距離に見えるでしょ? つまり――」
「光だけは素通しすると言うことですよ、あの結界は」
アディーシャの言葉に、いつものボーイソプラノが重なった。
「ヒョウエ!」
「ヒョウエ様!」
「や、皆さんお疲れさま」
杖にすがって、ぐったりと立つヒョウエがいた。久しぶりの等身大だ。
「"
「ですね」
アディーシャが頷く。
ふう、とヒョウエが息をついた。いつもの如く、その顔には疲労の色が濃い。
「おんぶいるか?」
「あ、お願いします・・・」
「お待ちなさい、モリィさん! 今度こそ私の出番ですわ! 力があるのはどちらか考えれば、自明の理でしょう!」」
「おめーは鎧着てるだろ。ごつごつしてて痛ぇんだよ!」
「優しくおぶいますわ!」
「ならあたしの時もそうしろよ! マジで痛いんだからなあれ!」
「あーもしもし、リアス様、モリィ様」
「何ですか、カスミ」
「なんだよ」
「あちらを」
カスミが指さした方には、セーナにおんぶされるヒョウエの姿があった。頭の回りをミトリカが飛び回っている。
「こんなものでいいか?」
「すいませんね」
「なに、お前の働きに報いるにはこんな物では到底足りるまい」
「いいなー。あたしもヒョウエにおんぶしたい」
「ま、そのうちにな」
「「あああああああ!?」」
モリィとリアスが絶叫する。
エルフの衛士、術師たちから和やかな笑い声が起こり、カスミが溜息をついた。