毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「五人揃って冒険者」
01-15 働かざるもの食うべからず


 

 

 

「魔術師の魔法と僧侶の魔法と呪い師の魔法の何が違うかって? どれも同じだよ。真なる魔法の残りカスさ」

 

                ――火の神(ボルギア)に仕える"炎投げ師(フレイムスローワー)"語る――

 

 

 

「えー、ノストロ村の二足歩行する人喰いサンショウウオ退治、クレンダ第二鉱山の巨大蜘蛛駆除、キリ谷のヒトデ擬態怪物の群れへの対処、水瓶山で目撃された身長2.4メートルの巨人の調査・・・後クソン村とファール村のゴブリン退治。

 以上毎日戦隊エブリンガーさんが受諾と言うことでよろしいですね?」

「・・・よろしいけどさ、毎回パーティ名連呼しなくてもいいじゃん・・・」

 

 げんなりした顔でモリィがぼやく。受付の女性は最近良く見る奇妙な無表情。

 

「規則ですので。それでは毎日戦隊エブリンガーさんの受諾を・・・ぷっ、ぶふっ!」

 

 いつものことだが、今日は情けないモリィの表情がだめ押しになったらしい。

 受付女性は横を向いて肩を震わせ始めた。

 釣られたのか、横に立っていたアシスタントの男性まで笑い始める。

 

 横に立っている馬鹿(ヒョウエ)を睨み付けるモリィ。

 すまし顔のまま、ヒョウエはついと目だけを逸らした。

 

 

 

 結成以来、毎日戦隊エブリンガーは・・・と言うよりモリィを仲間に加えたヒョウエはこれまでにも勝る勢いで大量の依頼をさばくようになっていた。

 依頼を受けない日は例のダンジョンに潜って、ひたすら怪物と戦う日々である。

 所有者なので使用料は免除だ。

 

 当然だが冒険者の依頼は命の危険を伴う案件であり、精神的疲労も馬鹿にならない。普通ならそれなりの中休みを入れなければ到底もたないだろう。

 が、ヒョウエはもちろんモリィも大金を必要とする身で、かつ危険や過労をものともしないタフさと実力を備えていた。

 ヒョウエが最低ラインとは言え治療呪文を扱えることも大きい。

 一回では1センチ四方の小さな傷一つを癒す程度とは言え、無制限に連打できるのであれば肉体の傷は問題にならない。

 

「馬小屋に泊まってちまちま治療呪文を発動してたのを思い出しますねえ・・・」

「なんで馬小屋?」

 

 治療されながら首をかしげたモリィだったが、冒険者族のスラングか何かだろうと聞き流すことにしたのはどうでもいい一幕である。

 

 一方で杖に乗って高速移動できる事、モリィの《目の加護》で対象を素早く見つけられるのも大きい。

 都市の冒険者の店であっても、周辺の村――都市の食糧供給を支えている人々だ――からの依頼は存外に多い。

 大半は村人が対応できない、ダンジョンから出て野生化したモンスターへの対応だ。

 

 この時ネックになるのがそうした村の大半が貧しく、十分な報酬を出せないこと。

 移動におおむね数日かかり、またモンスターを山野から探し出すのにも時間がかかる、つまり経費がかさんで更にもうけが少なくなる。

 拘束時間が長くなれば相対的な報酬がさらに低くなる。

 

 それでもゴブリン退治などは赤箱の初級冒険者などが良く受諾するのだが、対象が強くなるとそれを倒せるパーティにとっては報酬も手間もおいしくない仕事になりがちで、受諾に時間がかかったり、そもそも受諾されなかったりする。

 どうしても受諾されない場合はギルドが自腹を切って報酬を追加し、それなりのパーティに頼み込む事も多い。

 

 が、高速で飛行できるヒョウエならばこれらのデメリットをほぼ無視できる。

 《目の加護》を持つモリィが加われば尚更だ。

 ヒョウエが来て以来この手の依頼はすぐに解決するようになり、今ではその実績からそうした依頼はあらかた六虎亭に集中するまでになっていた。

 依頼と解決件数の多さも冒険者の酒場、つまり冒険者ギルド支部としての評価に直結するわけで、職員たちがヒョウエを高評価するのも自然な成り行きだろう。

 

「えーと、どこから行くんだ?」

「クソン村のゴブリン退治が一番近いですね。そこからクレンダ第二鉱山、キリ谷、水瓶山、ノストロ村・・・いや、巨人は実害が出てないので人喰いサンショウウオを優先しましょうか。ノストロから水瓶山、最後にファール村のゴブリン退治ですね。

 うまく行けば一日で終わりますよ」

 

 酒場の壁に貼ってある近隣の地図を眺めながら二人が相談する。

 人語を喋る馬を見るような目で他の冒険者がそれを眺めていた。

 

 

 

「ヒャッハー!」

 

 ご機嫌なモリィの声と共に風を切って杖が飛ぶ。

 あの後王都を出た二人は、さっそく最初の村に向かっていた。なお王都の門はちゃんと歩いて出る。空を飛んで城壁を越えると城門破りで犯罪になるからだ。

 

「現金なものですね。最初は僕の首を絞めてたのに」

「まあそう言うなって! 慣れてなかったんだからよ!」

 

 悪びれもせずモリィが笑う。もっともヒョウエも笑っているので根に持っているわけではない。

 

「それじゃスピードアップしますよ。一応気を付けてください」

「おう、わかった・・・待て! 街道の先! 隊商が襲われてる!」

「! わかりました!」

 

 自分で視認はできなかったものの、モリィに従ってヒョウエは杖の針路を変えた。

 

 

 

「きゃあっ!」

「くそったれがっ!」

 

 馬車の中から聞こえて来た悲鳴に、護衛のオレンジ髪の冒険者が罵り声を上げた。

 赤箱冒険者に良くある隊商の護衛。二月ほど街道をのんびり行き来する、楽な仕事のはずだった。

 それが都を出て三日目で山賊に襲われ、パーティの生き残りも今は自分だけ。

 それなりに腕に自信はあったが、三倍の数の敵に襲われてはどうにもならない。

 

「くそっ、ついてねえ・・・」

 

 腕と足を切られ、走る事も剣を振ることも満足にできない。

 下卑た笑みを浮かべてジリジリと近づいてくる山賊ども。

 俺もここまでかと覚悟を決めたとき、目の前の三人がいきなり妙なポーズを決めた。

 

「げっ!」

「が!」

「ぐひゃっ!?」

「・・・へ?」

 

 一瞬踊りでも踊っているのかと思ったが、すぐにそれが何らかの打撃を受けたからだと男は思い至った。直後に山賊たちは倒れ、すぐに周囲の山賊も同じ運命を辿る。

 理解が追いつかず、男と生き残りの商人たちが呆然と立ちすくんだ。

 

「おーい、大丈夫ですか!」

 

 見上げると金属の棒にまたがった、冗談みたいな格好の魔法使いが降りてくるところだった。

 

 

 

 幸いなことに、隊商と護衛に即死したものはいなかった。

 心臓や肺を貫かれていても脳が死ぬまでに数分の猶予はある。

 それまでの間ならばヒョウエの治療呪文でも十分間に合った。

 ヒョウエが治療をしている間に、軽傷の商人や護衛の男に手伝わせてモリィが山賊たちを縛り上げる。

 

「いやー、助かりました! お若いのに素晴らしい腕前ですなあ!」

 

 人の良さそうな隊商の長がヒョウエの手を掴みブンブンと上下に振る。モリィの雷光銃は手加減が難しいので、山賊たちを倒したのは全てヒョウエの金属球だ。

 

「些少ですがお礼として・・・」

「あーいや」

 

 金袋を開こうとしてくる長を止め、ヒョウエがちょっと考え込んだ。

 実際山賊を退治したり捕まえたりすれば報奨金が出るので、金銭的なお礼は――それは勿論あれば嬉しいが――必要ない。

 考えをまとめて、つい、と杖を動かす。

 

「うわっ!?」

「お?」

 

 隊商の壊れた木箱から小袋がひとつ飛び出して、モリィの手に収まった。袋にはメットーで有名な菓子店の焼き印が押してある。

 

「これを一つと、山賊たちを次の町の番所に僕たちの名前で引き渡すこと、それと二十の町や村で僕たちの名前と今の一幕を吹聴していただく。それでどうでしょう」

 

 ほう、と長が感心した顔になった。

 

「なるほど、商売の基本をよくわかっていらっしゃる。まずは名前を売ること、即ち信用を得ることというわけですな?」

「その辺りは商人も冒険者もさほど変わらないと思ってますよ」

 

 なるほどなるほどと上機嫌で頷く長。

 実際冒険者はフリーランスの何でも屋だ。名前が売れるに越したことはない。

 

「それで・・・とと、これはしたり。お名前を伺っておりませんでしたな。わたくしこの一団をまとめておりますジヴダッドと申します」

「ヒョウエです。こちらはモリィ。王都の六虎亭で『毎日戦隊エブリンガー』というパーティで活動しています」

「なるほど、耳に残る名前ですな。まず名前を売る手段としては悪くない」

 

 普通なら笑ってしまうような名前だが、商人としてはある意味で感じるものがあったらしい。モリィが「えー」という顔になる。

 一方でオレンジ髪の冒険者が首をかしげ、「あ」とヒョウエを指さした。

 

「そうか、お前六虎亭の"大魔術師(ウィザード)"か! ・・・あ、いや、すまん」

「別に謝る必要はありませんよ。僕は気に入ってますので」

 

 今度はオレンジ髪が「えー」と言う顔になった。恩人の手前口には出さないが。

 ふとその視線がモリィのそれと合う。

 

(・・・あんたも苦労してんだな)

(わかってくれるか・・・)

 

 常識人の二人が妙に通じ合っているのをよそに、長はうむうむと満足そうに頷く。

 

「いいですなあ、"六虎亭の大魔術師(ウィザード)"! それで行きましょう!」

「いいですね、お願いします!」

「ええ、ええ、任せて下さい!」

「「ええ~~~!?」」

 

 今度はモリィとオレンジ髪がハモった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さいよジヴダッドさん! そりゃいくらなんでも失礼ですって!」

「何でです? いいじゃないですか"大魔術師(ウィザード)"」

 

 きょとんとする長。埒が明かないと見たオレンジ髪の冒険者は、今度は脇で話を聞いていた大柄な商人に水を向ける。

 

「なあルタリさん、あんただってそう思うだろう?」

「いやあ・・・俺も"大魔術師(ウィザード)"なんて言ったらかっこいいと思うけど」

「なんてこった、こんなに俺達と一般人で意識の差があるとは思わなかった・・・!」

 

 先に述べたとおり、"大魔術師(ウィザード)"は冒険者の間では軽侮の言葉に近い。

 とは言えあくまで冒険者の間では、である。

 そう言えば俺も子供の頃は大魔術師(ウィザード)"って普通にかっこいいと思ってたっけ?と頭を抱えるオレンジ髪。モリィもちょっと意表を突かれたのか戸惑った顔になっていた。




 受付嬢に男性アシスタントが付いてるのは、受付嬢(若くて美人です)に絡んだり、威圧的に接したりする馬鹿に対処するためです。
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