毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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05-26 馬鹿が歩きでやってくる

 王宮正門前は修羅場になっていた。

 なお衛士達は誰も自分たちの王女を止めようとはしていない。

 女性衛士に至っては期待に目を輝かせているものすらいる。

 ナパティの人望のほどが察せられよう。

 

「セーナ! お前は兄をその手にかけようというのか!?」

「できるものならあの時に息の根を止めておきたかったわ! この一族の恥が!」

「・・・何があったんだよ?」

 

 恐る恐る訊ねたモリィを、セーナがきっと睨む。

 

「お前達、こいつが森を出た理由は聞いているか?」

「・・・・・・・・・・・・・・あー」

 

 風呂を覗いていたら興奮して火の加護が暴走、発火して気付かれたという話である。

 本人はそれ以上語らなかったが、その後何があったかは想像するに余りある。

 

「それだけでも最悪なのに、あの時覗かれた中に私もいたんだ!」

「うわぁ」

「それは・・・」

「仕方ございませんね。ケジメとしてもここはキュッと殺っておくべきでしょう」

「何を物騒なことを言っているのだクール系ロリペドメイド!?」

「誰がクール系ロリペドですか?」

 

 北極の氷のような視線で、踏みしだかれている馬鹿(ナパティ)を見下ろすカスミ。

 その瞳は既に真っ青に染まっている。

 

「おおう、ちょっとゾクゾクする・・・ナパティ新性癖!」

「それが末期の言葉と言うことでいいんだな?」

 

 カスミと同じくらい冷たい目でセーナが言い放ち、槍を振り上げる。

 

「待て、待つのだ愛しき妹よ!」

「言いたい事があったら言ってみろ。遺言代わりに聞いてやる」

 

 必死のナパティだったが、完全に目が据わっているセーナにはまるで通じない。

 

「全然聞く気がないではないか! ヒョウエ、お前からも何か言ってやってくれ!」

「と言われましてもねえ。よそ者の僕たちが身内の問題に首を突っ込めるはずがないでしょう。ああ、骨は拾ってあげますよ」

「ヒョウエ! 冗談にもほどがあるぞ!?」

 

 ついに泣きの入ったナパティに、ヒョウエが溜息をつく。

 

「割と本気だったんですけどね。大体なんでここに来たんですか。追放されたんですよね?」

「理由があるからに決まっているだろうが! 流石に何のわけもなく、追放された故郷に戻ってくるか!」

「ふむ。ではどう言った理由で?」

 

 ナパティが真剣な表情になって頷いた。

 

「うむ、夢で見たのだ」

「よし殺す!」

「ストップストップストップ!」

 

 本気で槍を振り下ろすセーナを、必死でヒョウエが止めた。

 

 

 

「あー、取りあえず、族長様なりナタラ様なりのご裁可を待つことにして、ナパティ様は牢屋に入って貰うって事で・・・どうかな?」

「む・・・」

 

 しばらく揉めた後、ティカーリが出してきた提案を何とかセーナに納得させる事に成功する。

 その場の全員が疲れた顔になっていた。ただし馬鹿(ナパティ)を除く。

 

「貸し一つですからね、ナパティ様」

「うむ、感謝するぞ、さすがティカーリ! 愛しているぞ愛しの君よ!」

「蹴りますよ? 死ぬまで」

「アッハイ」

 

 笑顔でドスを利かせる幼なじみに、ナパティはそう答えるより他なかった。

 

 

 

「はあ・・・」

 

 牢に連行されていくナパティ(何人かの女性衛士にこづかれているのは見なかったことにする)の背中を見ながら、セーナがぐったりと自分の槍にもたれかかった。

 その背中から疲労と悲哀の匂いが漂ってくる。

 

「あー・・・取りあえずそれではお父上に会いに行きませんか。報告もしなくてはなりませんし」

「そうか・・・そうだな・・・」

 

 おっくうそうにセーナが身を起こした。

 

 

 

 セーナとナパティの父ナタラは、トゥラーナに代わって玉座で長達と話をしていた。

 ナパティの話を聞き、その顔が疲れたように歪む。

 周囲の長――人間の世界で言えば大臣たちも同様だ。

 

「・・・あの馬鹿息子が・・・」

「いかが致しましょうか、父様」

「しばらく放っておけ。多少は奴の頭も冷えるだろう」

 

 深い溜息と共に言葉を吐き出す。

 大方のものはそれに頷いたが、サーワは厳しい顔のままだった。

 

「むしろ即座に森の外に再追放してしまうべきではないでしょうか? ナタラ様の御子とは言え、決まりは決まりです」

「うんまあそれはそうなんだが・・・」

 

 弱り顔のナタラ。

 

(・・・サーワも覗かれた一人なんだ)

(あー・・・)

 

 ヒョウエの耳に囁くセーナ。

 

「聞こえてますよお二方」

「ひえっ」

 

 ちろりと睨まれて二人が首をすくめる。

 ナタラとサーワはしばらく言い合っていたが、なんとかナタラがサーワをなだめてその場は収まった。

 

「ところでナタラ様。シャンドラ殿の部屋からは残念ながら何も見つかりませんでした。

 森を一通り回って見たいと思うのですが、目星は付いていませんか? 森を覆う・・・なんというか、瘴気の濃いところとか」

「ふむ・・・」

 

 ちらりと周囲の長達の顔を見まわすが、どの長も首を横に振った。

 

「うーん。霊地のようなところはありますか? 地脈の力が吹き出している場所とか。そうしたところで異常はないのでしょうか」

「アディーシャにいくつか回って貰ったところでは、そうしたところに特にこの、瘴気と呼んでしまうがそれが濃いと言うことはないらしいな」

「やはり一筋縄ではいきませんか。サーワさん、少しよろしいでしょうか?」

「はい、なんでしょう?」

「書庫にあるですね・・・ん?」

 

 ヒョウエが自分の袖を見下ろす。

 

「どうかしましたか?」

「いえ、なんでも。それで書庫に入らせて頂きたいのですが・・・」

 

 ちらり、とナタラの方を向く。

 ナタラが頷いたのを確認してサーワが頭を下げた。

 

「わかりました、ではどうぞ」

 

 ヒョウエたちも一礼して謁見の間を退出する。

 サーワについて歩きながら、ヒョウエが自分の袖を見る。

 青い袖に一点、真紅の血の染みが付いていた。

 

 

 

「これですね」

 

 書庫で見せて貰ったのはズールーフの森の地脈ポイント、先ほど言った霊地のリストだった。

 

「はい、ありがとうございます」

「?」

 

 モリィが首をかしげるが、何も言わない。

 

「それでは写して頂けますか」

「はい、少々お待ちを」

「・・・?」

 

 サーワがヒョウエの出した和紙に地図を写す。

 今度はヒョウエが首をかしげた。

 

 

 

 写して貰った地図を手に、サーワと別れて廊下を歩く。

 

「で、その霊地に行くのか?」

「ああは言いましたが一応確認してきたいですからね。モリィの目ならアディーシャさんも気付かなかった何かに気付けるかも知れませんし」

「余りおだてるなよ? 魔法にゃ無力なことも多いって、この前わかったろ」

「得手不得手はありますよ。頼みにしてるんですから頑張って下さい」

「・・・へっ」

 

 照れたように、モリィが鼻の頭をかく。

 むすっとするリアスを、カスミが必死になだめていた。

 それを横目で見つつ、セーナが口を開く。

 

「しかし禁書庫に入ったのは何か意味があったのか? 禁書庫の本に用があったわけでもあるまい」

「まあそれこそ念のためと言う奴ですね。

 ・・・何かこう、ひっかかるんですよ。

 本当に何かつかめそうなのにするりと手から抜けていく感覚があるんです。

 ああもうもどかしい・・・」

 

 地図を握った拳でこめかみをこつこつと叩きながら、ヒョウエは廊下を歩いていく。

 顔を見合わせながら、少女たちがその後に続いた。

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