毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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05-27 じゃじゃ馬ならし

「ミトリカちゃんはついさっきアディーシャ様とお出かけになりましたよ」

「おや、タイミングが悪かったですね」

 

 書庫を出た後、アディーシャの研究室にミトリカを尋ねたが、いたのは人の良さそうな若いエルフの男性だけだった。

 書類を整理していた彼によると、アディーシャと弟子たちは異常箇所を見つけるために森中に散って動いているらしい。

 最年少の彼が集めたデータを整理しているとのことだった。

 

「皆さんが来たのを聞いて喜んでましたから、是非会って上げて下さい。夜なら戻ってると思いますので」

「それはもちろん。では失礼します」

「はい、お疲れさまです」

 

 礼を述べて部屋を辞すると、ヒョウエが肩をすくめた。

 

「まあ当然ですか。エルフの人たちだって原因を探すのに色々尽力してるんだし」

「大丈夫なのかね、術師がばらけてよ。あのクロトカゲみたいな怪物がでないとも限らねえだろう?」

「そこは流石に衛士の護衛を付けるとは思うがな」

「まあそれはそうですわね。流石にそこまで不用心でもないでしょう」

「それでは・・・うん?」

 

 ヒョウエが自分の袖を見下ろした。一点の血の染み。

 

(うーん? "魔力解析(アナライズ・マジック)"でも何も反応がないんですけどねえ)

 

「どうされました、ヒョウエ様?」

「いえ、何でもありません。そう言えばシャンドラさんのご容態はどうですか?」

「命に別状はないようだが、まだ意識が戻る気配はないそうだ。まあナッグ婆がついているから問題はないと思うが・・・」

 

 癒し手の長の老婆の名前である。

 セーナにとっては祖母のような存在であるとのことだった。

 

「・・・魂を抜かれたような状態だと言ってましたね?」

「精神の働きがひどく弱くなっているとは言っていたな。それがどうかしたのか?」

「いえ・・・うん、まあ後回しでいいでしょう。今はまず霊地の巡礼を片付けてしまいましょうか」

「アイサー、オヤブン」

 

 片言の日本語で、モリィがふざけて敬礼した。

 

 

 

「どうです?」

「うーん・・・こっちも何もねーな」

 

 杖にまたがって森の中を高速移動し、霊地を巡ること十幾つかめ。

 他の霊地と同じく、3mほどの自然石を立て、周囲に石を並べた小さなストーンサークル。

 更にその周辺に綺麗な輪っか状のキノコの列、いわゆる「妖精の環(フェアリーリング)」が広がっている。

 

「なあセーナ、この『妖精の環』ってエルフの住んでない森でも見るけどよ、魔法のものなのか?」

「ええとその・・・なんだったかな・・・ティカーリ!」

 

 最後尾のティカーリが苦笑した。

 彼女は杖にまたがれず、ヒョウエの念動だけで宙に浮いている。

 

「ほとんどのものは違うみたいだね。大多数は自然の働きにより円形にキノコが生えるんだって。でもこうした霊地の立石(メンヒル)の周辺に生えるものは地脈の力が関係しているんだって」

「そう言う事だ。まあ詳しいことは後でサーワにでも聞いてくれ」

 

 うむうむと頷くセーナの耳を、ティカーリが軽く引っ張る。

 

「何を偉そうにしているんだか。一緒にリシュー様に教わったでしょ」

「そ、そうだったかな・・・」

 

 耳を引っ張る力が強くなる。

 

「セーナはね、昔から嫌いなことは手を抜きすぎなんだよ。

 まだナパティ様の方がまじめに勉強してたよ?」

「ぐぐぐぐぐぐぐぐ」

 

 事もあろうに兄と比較され、悔しそうに顔を歪めるも反論できないセーナ。

 ヒョウエが苦笑して――

 

「伏せてっ!」

「!?」

 

 杖が側転した。

 ほとんど同時に光の弾丸が一行の後方から前方、一瞬前まで彼らの頭部があった空間を貫く。

 "警戒(アラート)"の術がかかっていなければ、そしてヒョウエが素早く反応してなければ、全員が即死していただろう。

 

「・・・!」

 

 光の弾丸がヒョウエの念動障壁を軽々と削り取るのを《目の加護》で目撃し、モリィが目を見張る。

 同時に光の弾丸の正体に気付き、更にその目が見開かれた。

 

「降りますよ!」

 

 念動の力を分割し、六人を地上に降ろすヒョウエ。

 全員が瞬時に戦闘態勢を整えた。

 

「おい、ヒョウエありゃあ・・・」

「わかってます」

「何・・・!?」

 

 セーナ達はこの時点でようやっと、敵の正体に気付いたようだった。

 光る弾丸は一抱えほどの光球となって宙に静止している。

 その中に見える小さな人影は。

 

「どうしたんです! ミトリカ!」

 

 光る玉の中で、シルエットしか見えないピクシーがヒョウエたちを睨んでいた。

 

 

 

「ミトリカ!」

 

 ヒョウエの声に応えるように、ミトリカが再び光の弾丸になった。

 

「やべえ、伏せろっ!」

「きゃあっ!?」

 

 ティカーリの槍が粉々に砕けて吹き飛んだ。

 余波ではじき飛ばされ、ティカーリが転がる。

 

「マジでやべえなあいつ!」

 

 ヒョウエの持つ九つの魔力経絡。

 それを全部注ぎ込んだ障壁を、たやすくとは言わずとも貫通した光の弾丸。

 

「ヒョウエ様の術でも防げないのですか!?」

「念動障壁は魔力を集中していると言っても面レベルですからね・・・点に集中しているミトリカ相手ではいささか分が悪いですね」

「のんきに言ってる場合か! 金縛りとかあるだろう!」

「僕が"巨人機(ギガント)"の集中砲火を喰らったときのこと、忘れました? 強い魔力は魔力を弾くんですよ」

「魔力なら怪人(ヴィラン)以上って事か・・・!」

「後は集中効果ですね。この短い間に随分と制御がうまくなったようで」

「言ってる場合か!」

 

 またしても光の弾丸。

 全員が伏せてミトリカの体当たりをやり過ごす。

 

「きゃっ!」

 

 間に合わなかったリアスの盾が、左上二割ほど削り取られた。

 

「ミトリカ! いい加減にしないとひどいですよ!」

 

 びくっ、と光球が震えた。光球の中のミトリカの瞳が揺らぐ。

 だがそれも一瞬のことで、次の瞬間には再びその瞳から感情の色が消える。

 

「なら、叱って上げますよ! ミトリカ!」

「ヒョウエ!」

 

 セーナの声が響いた。

 よたび、ミトリカが光の弾丸となる。

 その前に仁王立ちで立ちふさがるヒョウエ。

 光が爆発した。

 

「お・・・・おおお!」

 

 術で過剰な光をカットできるカスミでさえ見えないほどの魔力の光の爆発。

 それをはっきり見て取れたのは、やはり《目の加護》を持つモリィだけだった。

 

 正面から突っ込んで来たミトリカの光球を、ヒョウエが両手で正面からがっちりと受け止めている。その手に膨大な魔力が集中しているのが見えた。

 オリジナル冒険者族の魔力チートである"隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"と、魔法種族の天然チートであるドータボルカスの魔力が真っ向正面からぶつかって凄まじいスパークを発していた。

 

「アアアアアアアアア!」

 

 ミトリカが叫ぶ。

 

「ミトリカァァァッ!」

 

 ヒョウエが叫ぶ。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ミィィィィィイィトォォォォォォォリィィィィィカァァァァァァァ!」

 

 光が爆発した。

 

「ぐっ!」

 

 物理的威力を伴った魔力の爆発に、さすがのモリィも目を押さえ、圧力に押されて地面に転がった。

 それでもすかさず立ち上がり、爆風の余韻の中で目を凝らす。

 

「ヒョウエ! ミトリカ! どうなった!」

「決まってるじゃないですか」

 

 少し疲労のうかがえる、だがいつも通りの声。

 

「じゃじゃ馬娘のお帰りですよ」

 

 ヒョウエの両手の上に、意識を失ってぐったりしたミトリカが横たわっていた。

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