毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
モリィが安堵したように息をついてニヤリと笑う。
「へっ、じゃじゃ馬娘のお帰りか。確かにその通りだな」
「まあ、最近僕の回りはじゃじゃ馬ばかりではありますけど」
ヒョウエの不用意な一言でモリィの目がすっと細まる。
「ほーお。そりゃあたしのことか? あたしのことか?」
「
モリィに頬をつねられるヒョウエ。両手にミトリカを乗せているので抵抗できない。
その様子を見て溜息をつくリアスとセーナを見て、更に溜息をつくカスミとティカーリ。
(「じゃじゃ馬」にご自分も含まれると言うことは・・・)
(夢にも思ってないんだろうなあ・・・)
互いに気付いたカスミとティカーリが、視線を合わせて更に溜息をつく。
「「?」」
リアスとセーナが振り向いて、同時に首をかしげた。
「"
ヒョウエの両手から発せられた魔力が、手の上のミトリカに吸い込まれていく。
すぐにミトリカが目を開いた。
「ミトリカ!」
「大丈夫ですか、ミトリカ」
「あれ、セーナ・・・ヒョウエじゃん。どしたの・・・」
ぼんやりとした顔で上半身を起こし、周囲を見渡していたミトリカだったが、突然ハッと目を開いた。
「え? え? どういうこと? オレ何したんだ!? あいてて、体が・・・」
「落ち着いて。魔力を使いすぎた反動です。今治療しますけどしばらくは安静に」
再び魔力がミトリカに吸い込まれ、表情が落ち着いていく。
「悪い、助かった。それでオレは・・・」
「アディーシャさんたちと出かけていたと聞きましたが」
「そうだ! 最近森のケーキが悪くて、アディーシャが森の調査に出かけるってんでついてったんだよ」
「森のケーキ?」
「景気だろ」
「雰囲気と言いたかったんじゃないでしょうかね。で、それで?」
「アディーシャと一緒に飛んでたんだけど、アディーシャがいきなり立ち止まってさ、これからヒョウエが来るからそれを襲えって・・・え? 何でオレはそれに頷いたんだ!?」
ショックを受けた顔になるミトリカ。
「落ち着いて下さい。それで?」
「う、うん。それで何か変な薬を飲まされて・・・後は良く覚えてねえや・・・」
ミトリカの言葉が空気に溶けて消える。
他の六人は何も口に出来ず、ただ顔を見合わせるばかりだった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
沈黙が森の中に満ちる。
それを破ったのはやはりヒョウエだった。
「ミトリカ、その時衛士はいましたか? 護衛の人です」
「いや、オレとアディーシャの二人だけだったな。腕には覚えがあるから大丈夫って」
「ではもう一つ。そのアディーシャに見覚えはありませんでしたか?」
「見覚え?」
「昔、盗賊の生首を転がしてきた、例の黒フードの女にですよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
ミトリカが考え込む。それと入れ替わるように、セーナとティカーリが声を上げた。
「ちょ、ちょっと待てヒョウエ!」
「アディーシャ様がこの事件の黒幕だって言うんですか!?」
「そう思いたくはないんですけど・・・色々符合してしまうんですよね。
『探知の術、千里眼の術の達人なのに何も見つけられていない』
『昔森の外に出ていたことがある』
『ミトリカの身柄を引き取ることを熱心に希望した』
『危険な時期にもかかわらず、ミトリカと二人だけで森を歩いていた』
・・・どうです?」
「ぬ・・・」
「いえ、ですがしかし・・・」
擁護しようとは思うが、反論が出てこない二人。
「つまりこうです。
アディーシャさんは昔からこの計画を考えていた。目的はわかりませんが、そのために手駒や色々な道具、知識を集めていた。
人間の世界を旅していたのも、ミトリカを仲間に引き入れたのもそのため。
準備が整って今回の事件を起こしましたが、僕たちが邪魔になって始末しようとしている。
それとこれは邪推に近いんですが・・・千里眼や予見の術が得意なんですよね?」
「ああ。その方面ではシャンドラをも上回るともっぱらの評判だ」
「それで心や魂の術は全く習得してない?」
「会議でそう言ってたらしいな。それが何か?」
「あ・・・」
僅かに顔色を変えたのはティカーリだった。
「どうした、ティカーリ? 何か知ってるのか?」
「探知の術ってね、心の術とは親和性が高いの。全く同じではないけど、探知の術に長けているとそうした術を習得しやすくなるし、探知に適性のある人は、心の術にもそれなりに適性があるみたいなんだよ。
だから、探知の術を習得している人は心の術も習得していることが多いって聞いたことがある」
「それがどうした?」
よくわかっていないセーナ。一方でモリィとカスミが眉を寄せた。
「不自然だってことですよ。もちろん本人が興味を示さなかったという可能性はありますけど、例えば組み討ちが得意なのに首を絞める技だけ習得していない、というのはおかしいと思いませんか?」
「む・・・」
セーナが唇を噛んだ。リアスもこの時点で理解したようである。
「習得していながら習得していない振りをしていた可能性がある、ということですわね」
「まあ、あくまで仮説です。今のところは全部推測ですし、勘違いや偶然ということは十分有り得ます。有り得ますが・・・放っておくわけにもいかないでしょう」
「悪い方には見えませんでしたけど・・・」
「外ヅラだけじゃわかんねえよ。どう考えてもいい奴だと思ってたのが、ある日正体を現してごっそり財産盗んでいく事だってあらぁな」
「・・・で、ございますね」
それでも信じられないリアスに、実体験なのか、さめた表情で肩をすくめるモリィ。
カスミが固い表情で頷いた。
「それで、どうです、ミトリカ。雰囲気だけでも何とはなしに似てたりはしませんか?」
「うーん・・・言われてみれば結構似てたかなあ。少なくとも雰囲気はそっくりだったぜ」
「・・・」
再び沈黙が落ちた。
ヒョウエを含めて、全員の顔に「信じたくはないが疑わざるを得ない」と書いてある。
「っと」
ヒョウエが杖を突いた。
こぉん、と念動波が地面を伝っていく。
「やっぱり反応はありませんか。近くにまだいるかもと思いましたが」
「長話してたのがまずかったかな」
「まあミトリカの治療もありましたし・・・いたとしても失敗した時点で逃げてるでしょう。もう一つ・・・"
しばらく集中していたヒョウエだが、目を開けて首を振った。
「こっちもアディーシャさんの反応はなしです。まずは王宮に戻りましょう。報告を・・・?」
「え?」
ヒョウエのローブの袖がぴくりと動いた・・・ような気がした。
凝視していると、もう一度ぴくりと、今度ははっきりと動く。
「動いた? ヒョウエ、これお前じゃねえよな?」
「違いますよ」
真剣な表情で視線を向けるヒョウエの前で、またぴくりと動く。
「ただの血痕ではないと思いましたけど、どこかに誘っているみたいですね・・・行ってみましょう」
森の中を十数分程飛んだろうか。
「これは・・・結界?」
何らかの結界とおぼしき魔力の境界を通り抜けてすぐ。
一行は樹齢数百年を数えようかという大きなブナの木の前で杖を降りた。
「おいおい・・・なんだこりゃあ・・・」
「馬鹿な・・・」
「その、まさかこれって・・・!」
巨大な樹の幹に、エルフの女性の形がくっきりと浮き上がっている。
その人型は、紛れもなくアディーシャの顔をしていた。