毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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05-29 鬼子母神

「一体どういう事だよこれは・・・?」

「少なくともただの彫刻じゃありませんね。中にアディーシャさんが入ってます」

「!」

 

 "魔力解析(アナライズ・マジック)"を発動したヒョウエが人型を観察して断言する。

 振り向いて今度は周囲を見渡す。

 

「この周囲の結界――この木を隠すように張られてますね。しかもエルフの術です」

「わ、私にはよくわかりませんけど・・・そうなんですか?」

「ほら」

 

 と、ヒョウエが杖で指したのは、結界に沿って生えるキノコの列。

 良く見ればそれはこの木の周りをぐるりと取り囲んでいた。

 

妖精の環(フェアリーリング)――!」

「エルフの妖精魔法は自然を媒介にして発動します。例えば森と平地の境とか、川とか・・・あるいは妖精の環とか。

 木に封印する魔法もそうですが、ほぼ間違いなくエルフのものでしょう」

「あ――そう言えばお爺様も実際に見たことはないと言っていたが、昔は重罪人を木の中に永遠に封じ込める罰があったらしい」

「トゥラーナ様が見た事ないって言うなら相当だね」

 

 800年を生きる老エルフが知らないというならどれくらい昔の事なのか、ちょっと考えかけてその思考を頭から追い出す。

 

「決まりですね。何者かがアディーシャさんをこの木に封じ、見つけられないように結界で隠したんです」

「オレを操ったアディーシャは偽物ってことか?」

「恐らく」

 

 難しい顔でヒョウエが木を見上げる。

 

「なあ、出してやれねえのか?」

「難しいですね。これは単純に木の中にアディーシャさんを突っ込んでいるんじゃなくて、概念レベルで融合してます。僕なら力づくで引っ張り出せなくもないでしょうが、やはりエルフの術者に慎重に解除して貰うのが安全かと」

「そうか・・・で、これからどうする?」

「やはり急いで王宮に戻りましょう。何をやるにしろ、これを報告してからです」

 

 ヒョウエの言葉に頷くように、その右袖がぴくりと揺れた。

 

 

 

「お帰りなさいませ、アディーシャ様。連れていたピクシーはどうしたんです?」

「いつも私といても何でしょうし、少し遊んでもらっていますよ」

「ですか」

 

 王宮の門番と会話を交わし、アディーシャが悠々と大樹の中を歩いていく。

 謁見の間に入り、一礼。

 玉座に近づこうとしたとき、後ろから声がかかった。

 

「ちょっと待ったぁ!」

「ヒョウエ殿?」

 

 ナタラ達は困惑顔だが、振り向いた「アディーシャ」の顔が僅かに歪んだのをモリィは見逃さなかった。

 

「どうしたのです、皆様方。そんなに血相を変えられまして」

「実は皆さんに見て貰いたい物がありましてね・・・これです!」

 

 ヒョウエが取り出したものを見て、今度こそはっきり「アディーシャ」の顔色が変わる。

 腰の「隠しポケット」のかばんから念動で飛び出したのは、木に封じられたアディーシャその人。

 アディーシャの入った部分だけを切り出して、かばんに無理矢理詰めて持って来たのだ。

 

「!?」

「返せよ! アディーシャを返せよ、このクソ化け物!」

 

 叫ぶミトリカ。

 玉座の方ではナタラを始め数人がやはり顔色を変えている。

 術に長けたエルフにはわかるのだ、これがただの彫刻などではないと言うことが。

 

「アディーシャ・・・お前は?!」

「くっ・・・」

 

 アディーシャの姿がぐにゃりと歪んだ。

 肌や髪、服が黒く染まりブラゴールと同じ油脂の質感を帯びる。

 

(魔力を借りるぞ、ヒョウエ殿)

 

「!?」

「え? ヒョウエ?!」

 

 ヒョウエの手が自然に上がり、ヒョウエでも見極めきれない複雑な術式を放つ。

 術式はキラキラしたチリを生みだし、それがアディーシャだったものに降り注ぐと、それは悲鳴を上げて倒れ、苦しみだした。

 

「GAGAGAGAA・・・!」

「これは・・・!?」

 

(ほい、ご苦労様)

 

 ゆらり、と幽霊のような幻像がヒョウエの右斜め前に現れる。

 

「シャンドラ!?」

「ご心配をおかけしておりますの、若様」

 

 かかか、と笑う小柄なエルフの幻像は、紛れもなく昏睡状態になっているはずのシャンドラだった。

 

「どういう事だよ、じいさん! あんた死にかけなんじゃ!?」

「まあ確かに死にかけたわな。なので『こりゃやばい』と思って、魂を自分の血痕に宿らせておいたのよ。魂の術は得意じゃからな」

「それで・・・ですが、どうしてそんな回りくどいことを?」

「それはな・・・」

 

 じろり、と玉座をにらむシャンドラの幻影。

 いや、正確にはその左横に立つ一人の人物をだ。

 

「そろそろ正体をあらわさんかい、サーワ。いや、禁書庫の怪!」

「!」

 

 「サーワ」の体が崩れた。体の端からペラペラと本のページをめくるようにばらける。

 腕が重ねたトランプ、あるいは本のページのような無数の薄い薄片となり、それが玉すだれのように伸びて玉座のナタラに襲いかかる。

 

「カアッ!」

「させません!」

 

 シャンドラとヒョウエの気合が響き、ナタラを緑の盾と念動障壁が守った。

 

「ガアッ!?」

 

 続けて金属球を飛ばそうとした瞬間、黄金の流星がサーワの体に突き刺さり、その体を吹き飛ばした。

 

「!? あ、あれは・・・わしの黄金の三叉戟!?」

 

 叫ぶのは玉座のナタラ。

 慌てて振り向いた玉座の右側、サーワと反対の方角に、にっこりと笑う彼の妻、セーナとナパティの母サティがいた。

 右腕の手首には直径1mはありそうな巨大な斬撃輪(チャクラム)が回転している。

 

「何を持ち出しているんだ! あれは次期族長の証だぞ!」

「いいじゃないですか、使ってないんですし」

 

 夫の抗議を一言でねじ伏せると、その笑みが鬼女のものに変わる。

 

「さて、人の旦那様を害そうなどと言う不届きものには、相応の罰が必要ですね」

「!」

 

 黄金の三叉戟で縫い止められた「サーワ」に、巨大な斬撃輪が飛ぶ。

 盛大な破砕音が起こり、木片が爆発四散した。

 

「ヒエッ!?」

「落ち着け、味方だから・・・今はな」

 

 身をすくめるミトリカを、セーナがなだめる。

 

「手加減しろ! 謁見の間だぞ!?」

「あら、ごめんあそばせ」

 

 悲鳴のような夫の言葉にちろりと舌を見せたサティだが、次の瞬間真顔に戻る。

 

「あなた! 気を付けて!」

 

 破砕された穴から「サーワ」が飛び出した。

 だが次の瞬間、ヒョウエの金属球とモリィの雷光、セーナの矢が次々にその体に突き刺さり、今度は玉座脇の壁に叩き付けられる。

 

「あら、やるじゃない」

 

 どこからか槍と山刀を取り出しながらサティが微笑み、夫を守るように玉座と「サーワ」の間に立ちはだかった。

 対する「サーワ」は一歩後ろに下がり、サティとヒョウエたち双方を警戒している。

 その体には全く傷が付いていない。

 

「やれやれ。どうなっているんでしょうね、あの司書・・・いえ、"インフェ・ビブリオ"さんは」

「インフェ・・・なんだって?」

「インフェルヌス・ビブリオティカ。『地獄の図書館員』という意味ですよ」

 

 既に剣と盾を構えたリアス、忍者刀と手裏剣を構えたカスミ、槍と盾を携えたエルフの衛士達がジリジリと包囲網を狭めている。

 その後ろには弓を構えたセーナ、雷光銃を構えたモリィ、金属球を周回させるヒョウエ。ミトリカも体に魔力を集中させて光り始めている。

 サーワ・・・"インフェ・ビブリオ"は舌打ちのような音を立てると今度は全身が薄片になり、一筋の蛇のようになってサティの開けた穴から逃げ出した。

 

「あらまあ」

「ええい、だから乱暴にするなと言ったのだ!」

「言ってる場合か! セーナ、ヒョウエ、お前達急いで追うんじゃ! 森の瘴気を吸われたら厄介だぞ!」

 

 言いながら幻影のシャンドラが指を動かすと、アディーシャに化けていたブラゴールが煙を上げて蒸発した。

 頷いてヒョウエたちが走り始める。

 

「今の術、どうやってブラゴールを倒したんです? 僕は結構苦労したんですけど」

「あれは魔力で膨らんだ風船みたいなもんでな。魔力を吸い取ってやりゃあイチコロよ。言ってみればなめくじに塩をぶっかけるのとそう変わらん――ま、あのくらいのサイズでないと通用せん手だがな」

「なるほど」

 

 話しながら、一行は王宮の正門から飛び出した。

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