毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
歓声が上がった。
拳を振り抜いた青い鎧。胸を撃ち抜かれ、四散した"インフェ・ビブリオ"。
明白な勝者と敗者の図だった。
「・・・いや待て! まだ終わっておらぬ!」
幻像のシャンドラの声が鋭く響いた。
それとほぼ同時に青い鎧が急速離脱。
一瞬遅れて本のページと黒い瘴気が渦巻いた。
数分前の再生であるかのようにそれは急速に収束し、再び黒い人型を生み出す。
"インフェ・ビブリオ"。
青と黒が、またしても対峙する。
(・・・ならば!)
青い鎧が天高く右手を掲げた。それをくるりと一回転させ、円を描く。
太陽光を収束して焦点温度六千度の高熱を生み出す、必殺の"
「GY・・・!?」
それに戸惑っていたインフェ・ビブリオが奇妙な声を上げた瞬間、まばゆい光に包まれた。
「GYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!」
悲鳴を上げるインフェ・ビブリオ。
到底目を開けていられないほどの光の中で、そのシルエットが宙に溶けた。
「おお!」
「今度こそやった・・・何?!」
「・・・!」
光が収まった後に舞い上がったのは、渦巻く古文書のページ。
そこに黒い瘴気が巻き込まれ、またもや先ほどの光景が再現される。
何事も無かったかのように再生される黒い人型。
その再生直後に、青い鎧がタックルをかけた。
爆散するのではなく追いやられる黒い影。
一瞬でその姿は王宮広場の端を越えて、周囲の森の上空に強制移動させられる。
「なんじゃ、何をするつもりじゃ!?」
「恐らくは、巻き添えを避けたのですわ!」
リアスが言ったときには、既に青い鎧の両手は頭上に掲げられていた。
膨大な量の空気が渦を巻いてその両手の間に吸い込まれ、圧縮されてプラズマとなり、熱を強制放出して輝きを失う。
「受けよ――"
白い爆発が起こった。
黒い影から射出された槍の触手が一瞬に凍りつき、周囲の木々もそれに巻き込まれて樹氷と化す。
空気中の水分もまた凍結してダイヤモンドダストとなり、あるいは凍りついた木々にまとわりつく白いドレスとなる。
「なんちゅう荒っぽい真似を!」
森を傷つける暴挙にエルフの衛士達が呆然とし、シャンドラがわめく。
「しょうがねえだろ、それともあんたがどうにかしてくれるのかよ!」
「ぐぐ・・・なぬ!?」
「えっ!?」
白く凍りついた樹氷の森の中央。
またしても黒い瘴気が渦を巻いた。
「・・・埒があかん!」
再生したインフェ・ビブリオと対峙する青い鎧を見上げてシャンドラが歯ぎしりする。
「おいジジイ! 大丈夫なのかよこれ!?」
「だーってろ! わしだって今考えとんのじゃ!」
「ミトリカ、シャンドラの邪魔をするな。大人しくしていよう、な?」
焦るミトリカとシャンドラが言い合い、セーナがそれをなだめる。
「くそ・・・大丈夫なのかよ、お前?」
微動だにしない青い鎧を見上げ、モリィが漏らした。
(・・・・・・・・・)
油断無くインフェ・ビブリオの様子を伺いつつも、青い鎧は攻めあぐねていた。
(コアになっているのがあの書物なのは間違いない。恐らくそれに瘴気がまとわりついて生まれているのがあれ・・・書物を破壊し、瘴気を断つ。両方が出来なければ・・・しかし・・・そうか!)
「え、ヒョウエ様が?」
「・・・お、おう、わかった!」
突然、モリィ達が耳を押さえて何事か頷いた。
セーナと何事か言葉を交わすと、セーナとミトリカが王宮の中に駆け込んでいく。
シャンドラが眉を寄せた。
「? どういう事じゃ?」
「ああ、それはな・・・って、じいさん薄くなってないか?」
「何を縁起の悪いことを・・・お、おおっ?!」
「じいさん? おい、じいさん!?」
驚きの声と共にシャンドラの姿が消えた。
青い鎧、甲冑の内部。
シャンドラは、唐突に自身が青い鎧の一部となっている事に気付いた。
(確かにわしの魂はヒョウエ殿の袖に付いた血痕を媒介にして安定化しているが・・・無理矢理呼び寄せるか普通!?)
(どうぞ抗議は後で。あなたの術が必要だったもので)
青い鎧の視線の先には実体を持ちながらもゆらりと揺らめく黒い影。
シャンドラもさすがのもので、それを見た瞬間にヒョウエの意図を理解する。
(じゃがあの術だけでは奴を倒せぬぞ。奴を倒すには・・・そうか、姫とミトリカを行かせたのはそう言うことか!)
(そう言う事です。では行きますよ)
(おう)
(("
タイミングを完璧に合わせて思念を放ち、二人の精神は一瞬にして完全に協調した。
「むん!」
青い鎧が両手を組み合わせる。
(~~~~~~~!)
同時に放たれる思念は、シャンドラの詠唱。
次の瞬間、組んだ拳から放たれたのは謁見の間でブラゴールの分体を消滅させた術式だった。
ただし、あの時とは量も、輝きの強さもまるで違う。
謁見の間のそれが輝くチリなら、これはまばゆき銀河の奔流。
無数の星のきらめきが、回避する暇も与えずにインフェ・ビブリオに襲いかかる。
「GA、GOOOOOOOOOOOOOOO!?」
悲鳴が上がる。
濁流ならぬ星の奔流に飲み込まれたインフェ・ビブリオ。
瘴気と言うがその本質はよどんだ魔力。
そして肉体という容れ物に魔力を内包するのではなく、異界の書物という核の周囲に魔力を纏うこの黒い影は、魔力を奪う術式に対して抵抗する術を持たない。
魔力の塊なればこそ高熱も冷気も打撃も受け流せるが、魔力を吸い取る攻撃に魔力で対抗しても、吸収速度が上がるだけ。
更に言えば、この奔流に包まれている限り新たな瘴気を呼び寄せて吸収することも出来ない――!
「GYYYYYYYYYY・・・・!」
やがて現れたのは、身にまとう瘴気を全て剥がし尽くされた核・・・おぼろげな人の形をとる、渦巻く本のページだった。
「GA・・GO・・・DA、DAが・・・わREは不滅・・・お前には・・・我を殺すことは」
瘴気、言い換えればブラゴールの要素が剥ぎ取られたせいか、不明瞭な発音ながらもインフェ・ビブリオが言葉を放つ。
だが次の青い鎧の言葉によって、驚愕と共にその言葉は途切れた。
「そう、確かに殺すことは出来ない。何故なら貴様は概念だからだ」
「!?」
その様子を心地よさそうに見下ろしながら、今度は青い鎧からシャンドラの声が響く。
「お前さんは本であって本ではない。異界存在の一部に『本』という概念をかぶせてその形にしたものだ。物理的な力で滅ぼすことは、そりゃあ難しかろうな。
このまま魔力を込めた攻撃で殴り続けてもいいが、それは流石に時間がかかりすぎる」
「NAらばわREを滅ぼすことはYAはり・・・」
「なので」
「本という概念を滅ぼす」
「!?」
1kmほど彼方。
王宮の入り口に、ナパティの姿があった。
「つまり、青い鎧に向けて炎を放てばよいのだな?」
「そうだ! 急げ!」
「任せておくがよい、愛しき妹よ! 俺がナパティだ!」
「知っとるわ!」
張り倒したい気持ちをこらえてセーナは拳を震わせる。
だが助平でいい加減ででたらめで不真面目で訳のわからない、ぶっちゃけ変人以外の何者でもない兄だが、それでも一つだけ確かなことがある。
いざという時は頼りになるのだ――この兄は。
「受けよ! 世界を浄化する火神の炎を!」
ナパティが目を限界まで見開くと、紅蓮の炎が二筋ほとばしる。
それは1kmの距離を一瞬にして越え、青い鎧に命中した。
「おおおおおおおおおおおおおおお!」
青い鎧の全身が炎に包まれる。
だがその体は焼けない。炎を自らのまとう魔力と術式のうちに取り込んで、鎧自体から炎が吹き上がる。
組んでいた両手を離し、星の奔流を右手に集中。
左手に念動の力を発動させる。
炎が渦を巻いた。
回転し、円盤状になったそれはまるで左手に掲げられた丸盾のよう。
いや、回転を続けるそれは炎のエッジを持つ巨大丸ノコか。
「GAA、こんな、こんなところで・・・このような事なら、あの小僧を追放ではなく殺しておくのだったわ・・・!」
何故ナパティが追放されたか。何故サーワに化けたインフェ・ビブリオがナパティの即時再追放を要求したか。
それはナパティもまた神の加護を持つがゆえ。
《
仙道で言う「
そして概念の炎ゆえに、書物の概念であるインフェ・ビブリオを焼き尽くすことが出来る。
「外に出たのが間違いだったな。サーワさんの姿を盗んだんだ、書庫の中にいれば負けなかっただろうに」
「GY・・・GYYYYYYYYYYYYYYYY!」
星の奔流、巨大な輝く剣を右手に、炎の丸ノコギリを左手に、全身を炎で包んだ青い鎧が今度こそ怪異を滅するべく突貫する。
「受けろ! 捨て身のファイヤークラッシャー!」
武器でありエネルギー源であった瘴気の鎧を剥ぎ取られ、内包する魔力すら大幅に削り取られていた怪異にそれをかわす術はなく、焼き尽くされた人型が異様な色のきらめく光となって四散する。
大樹の根元から歓声が上がった。