毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-03 倉庫街

 それからしばらくは、サフィアもヒョウエも、そして"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"も情報収集に奔走した。

 そして。

 

「魔導兵器密輸?」

「ああ。これを見ろ」

 

 "白百合の騎士"のアジト。

 テーブルの上に置かれた瓦版には、王都郊外の街道で馬車から王国軍で使っているのと同タイプのパワードスーツ――肉体強化系具現化術式が数着と大量の魔力結晶、剣や弓矢と言った通常の武器が見つかったと報じられていた。

 発見したのは街道警邏隊。事故を起こした馬車を調べようとしたら攻撃を受け、居合わせた冒険者パーティの協力によって全員を拘束したとされていた。

 

「ここには書いていないが、実際に馬車を発見して通報したのも、テロリストどもを拘束したのもこの冒険者達らしいな」

「何者ですか?」

「それがな――どうやら"毎日戦隊エブリンガー"というらしい。最近名を上げている冒険者だそうだが・・・」

「え、サナの王子様が?」

「なに?」

 

 QBが眉を寄せた。

 

 

 

「・・・なるほど、大公家に奉公したあの娘が、出奔した大公家の嫡子についていっていたと」

「はい」

「大公家の王子の話は聞いていたが、冒険者もやっていたとはな」

「オリジナル冒険者族で、強力無比な《魔力の加護》を持っているとか」

「優れた術師というのは聞いていたが・・・そうだな、確かにオリジナル冒険者族であればそれくらいはやるか。

 だがそれなら好都合だ。彼女と話をつけて、詳しいことを聞き出せないか?」

 

 サフィアが頷く。

 

「本人と何度か直接会ったこともありますし、問題はないと思います。

 ただ冒険者稼業が忙しいそうですので、すぐには無理かもしれません」

「そうか。だがなるべく早く話を聞いておきたいところだな。

 まあ、ひょっとしたら諜報機関の方から既に依頼を受けている可能性もあるがな。何せあそこのトップはヒョウエ王子の従姉だ」

「ですね」

 

 頷き合う二人。

 そこで言葉が途切れ、しばらく無言になる。

 

「・・・ところで、だ」

「はい」

「この『毎日戦隊エブリンガー』というのは何だ? 若い連中にはこういうセンスが受けているのか?」

「それはありません。決して。決して」

 

 真顔できっぱり否定するサフィア。

 

「そうか・・・まあオリジナル冒険者族だからな」

「ええ。オリジナル冒険者族ですから」

 

 またしばらく沈黙が落ちる。

 

「・・・そろそろ行くか」

「はい、マネージャー」

 

 ヒョウエが聞いたら憤慨するような会話を交わして二人は席を立った。

 

 

 

 一時間ほど後。

 サフィアの姿は河沿いの倉庫街にあった。

 あれからマネージャーと二人で稼いできた情報を突き合わせ、"探偵(ショルメス)"によって精査し、分析と推理を重ねた結果である。

 

「馬車の荷物の送り先、交通網、流通、物の流れ・・・それを分析していけば自然と怪しい場所は絞られる。さて、この分析が正しいかどうか運試しと行こうじゃないか」

 

 超巨大都市であるメットーには、当然膨大な量の物資が毎日運び込まれてくる。

 とはいえそれはほとんどの場合定まったルートを通り、定まった品目を運び込んでくるものだ。

 商家の取引関係、どこそこから注文が入った、ここ数ヶ月で新しい倉庫を借りるものがいた、あれこれの商会が王都に進出してきた――そうした情報をつき合わせれば、通常の取引、流通に含まれない異物が浮かび上がってくる。

 

 QBの姿はない。

 片足の彼ではどうしても足手まといになるからだ。

 それでも近辺に潜んでいざというときのバックアップを担当してくれている。

 

(本来なら、官憲と協力して踏み込むべきなんだろうけどね)

 

 QBを介して、怪しい箇所の情報は既にその筋に伝えられているはずだ。

 "探偵(ショルメス)"の分析能力は"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"をして舌を巻くレベルのもので、過去にスカウトを受けたこともある。

 

 かなりの高給を提示されたが、丁重にお断りした。

 理由は今回単独行動しているそれと同じだ。

 

「ボクは、クライムファイターだからね」

 

 誇り、意地、使命感、そうしたものがない交ぜになった感覚。

 こればかりは理屈ではない。

 とはいえ今回は別の理由もある。

 

("探偵"の勘が、今踏み込まなければ逃げられると囁いている・・・!)

 

 これまで外れたことのない勘を、今回もサフィアは信じる事にした。

 

「さて、まずは最初の・・・お?」

「え」

「あっ」

 

 倉庫街に踏み込み、最初の角を曲がったところでばったりと出会ったのはヒョウエ、モリィ、リアス、カスミの毎日戦隊エブリンガーの面々だった。

 

 

 

「サフィアさん、お久しぶりです」

「ああ、久しぶりだねヒョウエくん。元気そうで何よりだ。冒険者になったんだって? 随分と活躍しているそうじゃないか」

「なに、貧乏暇なしと言うところですよ」

「全く物好きなことだね、王子という地位を捨ててまで」

「そこのところはお互い様でしょう。緑等級ならいくらでも稼げるでしょうに、わざわざ"犯罪と戦うもの(クライムファイター)"になるんですから」

「おっと、これはヤブヘビだったかな」

 

 二人で声を合わせて笑う。

 ちょいちょい、とモリィがヒョウエの方をつついた。

 

「なあヒョウエ、この姐さん誰だ?」

「ああ、そうですね。サフィアさん、こちら僕の箱仲間(パーティメンバー)でモリィ。白甲冑がリアス、ちっちゃいのがカスミ。

 それでこちらはサフィアさん。サナ姉の親友で緑等級の冒険者、"犯罪と戦うもの(クライムファイター)"です。僕が来るまではこの人がスラムの平和を守ってたんですよ」

「あー、あんたが"白百合の騎士"か!」

 

 感嘆の声が上がる。

 尊敬の眼差しにまぶしそうに眼を細めてサフィアが苦笑した。

 

「なに、ヒョウエくんのしたことに比べれば大した事はないさ。あの頃のボクはまだまだ未熟で非力だったしね」

「まあそれはおいておきましょう。こんな時刻にこんな場所に何の御用で?」

 

 わかってて言っているだろうその表情に、サフィアも薄く笑みを浮かべる。

 

「多分キミと同じじゃないかな。むしろボクとしては君たちがどうやってここを突き止めたのかが気になる所だが」

「優秀な情報源がありましてね。そのおかげですよ」

「ふむ」

 

 ちらりとモリィの方を見る。

 

「察するところ・・・盗賊ギルドあたりかな?」

「ノーコメントで」

 

 ヒョウエが肩をすくめる。

 

「そうだね、情報源を聞き出そうなどと失礼だった。許して欲しい」

「いえ、お気になさらず」

 

 なお実際のところはリーザの奮戦の成果である。

 ここ数日はヒョウエの"疲労回復(レスト)"をひっきりなしに受けながら、一日中街の声を拾っては休息してを繰り返していた。

 

「あの頑張りを見せられるとな・・・あたしたちもたるんだ真似は出来ねえよな」

「その通りですわ。リーザさんの意気に報いねば、何をもってサムライを名乗れましょう」

 

 カスミも含めて三人娘が頷き合う。

 微笑ましそうにサフィアが笑みを浮かべた。

 

「では共同戦線と言うことでいいかな? 賞金は山分けで」

「いいでしょう。みんなも構いませんね?」

 

 三人が頷くのを確認し、ヒョウエが手を差し出す。

 サフィアがその手を固く握り返した。

 

 

 

「ところでヒョウエくん。(パーティ)の名前で毎日戦隊エブリンガーというのは――」

「それ以上言ったら戦争ですよ、サフィアさん」

「アッハイ」

 

 真顔のヒョウエを見て、サフィアは口に出そうとしていた言葉を飲み込む。

 ため息、困り顔、苦笑。

 三人娘が三者三様の表情を浮かべた。

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