毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-04 猫

 目当ての倉庫の最初の一つ。

 その裏口に回ると、そこには真新しい、特注と思われる錠前がかかっていた。

 

「これはいきなりビンゴかな?」

「まあ、普通の倉庫にこんなお高い錠前は付けねえわな・・・しかしこりゃ正面から攻略するにゃちょっと難物だぜ」

 

 このパーティの技能担当であるモリィがちらりとヒョウエの方を見る。

 (ヒョウエとカスミも一応技能は身につけている)

 

「壊しますか?」

「いや、それは最後の手段にしておこう。潜入はスマートにやるに越したことはない」

 

 腰のポーチから先端を鋭く尖らせたマイナスドライバーのようなものを取り出して、サフィアがしゃがみ込む。

 ピックと呼ばれる錠前破りの道具だ(「ピッキング」のピック)。

 

「・・・お?」

「へえ」

 

 一分とかからず、カチリと気持ちいい音を立てて錠前が外れた。

 

「見事な業前でいらっしゃいますわね」

「必要だったからね」

 

 リアスの称賛に笑って応えると、サフィアはピックをしまい込んだ。

 素早く中に入ると一行は扉を閉める。

 

念響探知(サイコキネティックロケーション)

 

 軽く念波を放って外の様子を透視し、念動で錠前をかけ直す。

 カチリという音がカスミとサフィアの耳に届いた。

 

「さてと」

 

 周囲を見回す。

 倉庫の中はだだっ広い空間になっており、多くの木箱が積まれている。

 どうやら隣の倉庫と続きになっているらしく、中程に大きな両開きの扉。壁の二階から三階ほどの高さにキャットウォーク、そして泊まり込みや事務仕事に使うのか、奥の壁に沿って小屋があった。

 

「あの高いところに歩廊(コリダー)?があるのはなんですの?」

 

 貴族らしい言葉でキャットウォークを表現するリアス。

 

「あれは高いところで作業をするための通路ですよ。猫の通り道になぞらえてキャットウォークと言います」

 

 キャットウォークの先には扉があり、これも隣の倉庫に通じているのが見て取れる。

 それを見上げながら、ヒョウエが仲間を見渡した。

 

「どうします? 念響探知(サイコキネティックロケーション)をかけてもいいですが、あれは鋭い相手がいる場合察知される可能性もありますし」

「多分この中で一番隠密行動に長けているのがボクだろう。まずはキャットウォークを伝って僕一人で偵察に行ってみるのがいいんじゃないかと思うんだが」

「で、ございますね」

 

 エブリンガーの中では一番隠密に長けたカスミが頷く。

 

(技能自体は恐らく互角と見ますが、身体能力が一回り上ですね、この方は)

 

 冒険者は基本的に等級が高いほどに身体能力も高い。

 倒した敵の生命力、魔力を取り込んで自分を強化することが出来るからだ。

 緑等級であるサフィアと、青等級であるカスミの地力の差である。

 

「では行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 おどけた会話を交わしてサフィアがキャットウォークに続くハシゴに飛びつく。

 影のようにするするとハシゴを登り、キャットウォークを伝って隣のスペースに繋がる扉にぴたりと耳を付けた。

 

 その間に、ヒョウエたちが隣の倉庫に繋がる一階フロアの扉に移動。

 ヒョウエたちとアイコンタクトを交わすと、サフィアは扉のちょうつがいに油を差す。

 ちょうつがいに確実に油が回ったのを確認して、男装の麗人はそっと扉を開けた。

 

 

 

(・・・・・・・・・・・・!)

 

 さすがのサフィアが一瞬絶句した。

 扉の先、眼下に見えたのは二十機を超える軍用の強化具現化術式(パワードスーツ)

 それに応じた魔導兵器一式。その周囲をせわしなく動き回る男女。

 魔導兵器や具現化術式にはそこまで詳しくないサフィアでもわかる。

 

(冗談じゃない・・・城塞都市だって落とせる戦力だぞ!)

 

 警邏はもちろん、軍も通常部隊では甚大な被害を覚悟せねばなるまい。

 最低でも同数の同じ強化具現化術式を装着した魔導化歩兵か、サフィアと同じ緑あるいはそれ以上の等級の冒険者が必要だ。

 

 整備台の上に乗せられた具現化術式をいじる魔導技師らしい女。

 手巻きの紙巻きタバコをふかしていた男たちが下品な冗談を交わしている。

 それらを見ながら、もう少し近くで聞き耳を立てようと下から見えないようにキャットウォークを這って進む。

 ガタッ、と音がした。

 

「!」

「誰だっ!」

 

 整備していた者を含めて、ほとんど全ての「レスタラ」構成員が即座に戦闘態勢を取った。何人かは素早く強化具現化術式を装着している。

 その視線はキャットウォークに向かっている――ただし、サフィアが潜んでいる場所ではない。

 

「ナ"ーオ"」

 

 安堵の息をついて構成員たちが武器を下ろす。

 サフィアも同時に安堵の息をついた。

 

「ニャア?」

 

 音の主は太り気味の野良猫であった。尻尾に茶色のブチがある。

 どこからか忍び込んだものが、キャットウォーク上に放置してあった荷物を崩してしまったものと思われた。

 

(やれやれ)

 

 苦笑したサフィアの表情が、次の瞬間こわばった。

 

「おい、何をしてる? 馬鹿な事はやめろ」

「ここに籠もりっきりで退屈なんですよ、中尉。これくらいのお楽しみはいいでしょう」

 

 まだ若いレスタラの構成員が、クロスボウを構えていた。

 箱状の弾倉が上部に取り付けてあり、レバーを引くと連射できるタイプだ。

 

「・・・外に音を漏らすなよ。矢もだ」

「そう来なくっちゃ」

 

 にまっと下卑た笑みを浮かべるクロスボウの男。

 

「ナ"ー?」

「へっへっへ・・・脅かしやがって、この毛玉が」

 

 何をされるのかわからず首をかしげる猫。

 狙いを定めて引き金に指をかけるクロスボウの男。

 

「死ねっ!」

 

 男が引き金を引いた。

 狙い違わず、一直線に猫に飛ぶクロスボウ・ボルト。

 中尉と呼ばれた男含めて何人が顔をしかめ、クロスボウの男が会心の笑みを漏らす。

 

「「「「!?」」」」

 

 だが次の瞬間、その全ての表情が驚愕に彩られた。

 内壁に当たり、レンガの破片をまき散らしてキャットウォークに落ちる矢。

 その横に立つのは魔法のように現れた銀髪の麗人。

 硬質の美貌が溜息をつく。

 

「ああもう、キミのせいだぞ」

「ナ"ーウ?」

 

 サフィアの腕の中で、太ったブチ猫がきょとんとして首をかしげた。

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