毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-06 全ては救えない

 最後の一人が倒れた瞬間、サフィアが身を翻す。

 

「すまない、ここは任せる!」

「お待ちください、どこへ?」

「決まっているだろう、ヒョウエくんだよ! むしろ君たちはヒョウエくんの仲間だろう! 良く心配にならないものだな!」

「・・・」

 

 激昂するサフィア。

 対してモリィ達は、揃って微妙な表情を浮かべた。

 

「・・・なんだい、その反応は?」

「えーそのそれは・・・」

「あーいや、なんだ。あいつだったら大丈夫だと思うぜ。あの程度でどうにかなるようなやつじゃねえ――なあ、青い鎧さんよ?」

「う、うむ」

 

 モリィの言葉に青い鎧が頷く。

 カスミもコクコクと必死に頷いた。

 

「彼ならそれがしが治療しておいた。すぐに目を覚ますことだろう」

「そ、そうか・・・よかった、本当に・・・」

 

 サフィアが安堵の息をつく。

 青い鎧とモリィはサフィアの目に涙が浮かんでいるのに気づいた。

 その視線に気付いたサフィアが顔を上げる。

 どのような手管を使ったか、その目に浮かんでいたはずの涙は影も形も無い。

 

「なんだい、ボクが泣いているとでも?」

「いや、そうではないが・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 しばらく沈黙が落ちた。

 その沈黙をサフィアが破る。

 

「なあ、ヒーロー」

「なにかな」

 

 2m近い長身をサフィアが見上げる。この上なく真摯な眼差し。

 

「キミは、その・・・失敗したことはあるかい?

 誰かを助けられなかったり、手を届かせられなかったり・・・」

「ああ、ある」

 

 ゆっくりと青い鎧が頷いた。

 

「・・・そうか」

「・・・」

 

 言葉が途切れる。

 二人のヒーローが見つめ合う。

 ふう、と息をついたのはやはりサフィアだった。

 

「ありがとう。こんな事を言うのは何だが・・・少し気が楽になったよ。キミでも失敗することはあるんだな」

「ああ。恐らく『星の騎士』でもな」

 

 頷きつつヒョウエは思う。

 最強の力と全知全能はイコールではない。これだけの力を持っていても人を助けられないことはある。

 忘れてはいけない。漫画の中のヒーローでさえ、全てを救うことは出来ないのだと。

 それを知ってなお挑み続けるサフィアが、ヒョウエには余りにまぶしく思えた。

 多彩な技能を身につけているとは言え、サフィアはけっして超人ではない。

 空も飛べず、鉄を砕く腕力もなく、風のように走る事もできない。

 そんなただの人間であるからこそ尊く思えたのだ。

 

 青い鎧を見上げつつ、サフィアは思う。やはり彼は真のヒーローだと。

 圧倒的な存在感、まばゆい輝き、巨大な熱量。

 そのどれもこれもが中途半端な自警団(ヴィジランテ)もどきである自分のメッキの輝きを打ち消す輝く太陽。

 だがだからこそ、矮小な半端者であっても、彼の前では胸を張っていたい。

 彼は自分の事を僅かなりとも認めてくれたのだから。

 であれば、メッキであろうとも彼を失望させるわけにはいかないのだから。

 

 

 

「さて、それでは失礼する。他にまだ用もあるのでな。ではまたいずれ」

「あ、ちょっと待ちたまえよ・・・って、こんなやりとり前もあったね」

 

 ややせわしなく、青い鎧が壁の穴から飛び去る。僅かにほっとした雰囲気を漂わせるモリィたち。

 今の仮面(ペルソナ)が"剣士(フェンサー)"であったから良かったものの、サフィアが"探偵(ショルメス)"の仮面(ペルソナ)をかぶっていれば、間違いなく何事か見抜かれていたに違いない。

 入れ替わりのようにヒョウエが壁の穴から現れ、ふわりと着地する。

 

「やれやれ、ひどい目に会いました」

「ヒョウエくん!」

「ご無事でしたか、サフィアさん」

「ほらな、大丈夫だったろう?」

「ですわね!」

 

 エブリンガーの面々によるいささかわざとらしいフォローであったが、それでも感激と安堵にひたっているサフィアには十分だったようだ。

 とはいえサフィアが"探偵(ショルメス)"の仮面を以下略。

 

「ああ、良かったよ! キミを犠牲にしていたら、サナに顔向けできなくなるところだった!」

「わぷっ!?」

 

 今度こそ涙をにじませてヒョウエを抱きしめるサフィア。

 頭一つ高い相手の胸元に顔を埋め、ヒョウエが窒息する。

 

「「「・・・!」」」

 

 モリィ達が何とも言えない顔になるが、彼女の立場からすれば当然のことではあるので何も言えない。

 しばらくそのまま固まって、慌てたようにサフィアが抱擁を解く。

 

「すまない、つい」

「いえいえ。こちらこそ心配をおかけして申し訳ありません」

 

 笑顔でそれに頷くと、サフィアが一転していたずらっぽい表情になった。

 

「そちらのお嬢さん方にも申し訳ない。ああ、ヒョウエくんはボクからしたら弟のようなものだから、そちらの方は心配しないでいいよ」

 

 一つウィンク。

 女性歌劇団の男役のような美貌と雰囲気は、そうした仕草もキザと感じさせない。

 

「っ!」

「い、いえその、そのようなことは・・・」

「・・・」

 

 図星を突かれてあたふたするモリィ達にくすりと笑い、表情をまじめな物に戻す。

 周囲には倒れたレスタラ構成員たち。そして強化具現化術式を始めとする魔導兵器。

 リアスが斬り伏せたものたちもまだ一応生きてはいる。

 

「取りあえずふんじばってから死なない程度に応急処置でしょうかね」

「ヒョウエ様は治療に当たるとして、この中で一番足が速いのは恐らくわたくしでしょうから、警邏の詰め所に行って参ります」

「よろしくカスミ。サフィアさんたちは、取りあえず具現化術式を着ていない連中から拘束してください」

「わかった」

「おう」

「わかりましたわ」

 

 ヒョウエの言葉に三者が三様に頷いた。

 

 

 

 現場検証は警邏本部から人員が派遣される大がかりなものになった。

 事もあろうに王都のど真ん中でフル装備つきの強化具現化術式が二十体だ。

 現代日本でいえば、東京のど真ん中でテロリストが最新式の戦車を数十台用意していたというのに等しい。

 

 下手をしなくても警邏のお偉いさんの首がいくつかまとめてすっ飛ぶ事態。

 現場検証と捜査の大がかりさ、必死さはその辺の事情の一端を伺わせるものだった。

 

 参考人として倉庫の一角に留め置かれ、彼らの現場検証を見るともなしに見ているヒョウエたち。

 その様な事をサフィアから説明され、モリィが吐き捨てる。

 

「ちっ、王都が火の海になるかもしれねえってのに自分の首のほうが大事ですってかよ」

「嘆かわしいことですわね・・・」

 

 憤懣やるかたないリアスも同調するのに、ヒョウエが肩をすくめた。

 

「まあ理由はともあれ必死なのはいいことですよ。それに初動の速さから見るにいつでも出動できるように準備はしてあったんでしょう。

 これでもたもたしてるようなら、こちらも何か考えなくちゃなりませんでしたけど」

「へぇ、具体的にはどうするつもりだったのか、お姉さんに教えてくれないかなヒョウエくん」

「残念ですがそればかりは秘密ということで」

 

 口の前に人差し指を当て、いたずらっぽく目をつぶる。

 サフィアも同じようないたずらっぽい顔。

 

「意地が悪いなあ、ヒョウエくん。どうだ、教えてくれたらおねえさんがいいことをしてやるぞ?」

「魅力的なお誘いですがお断りしておきます。サナ姉に生皮を剥がされたくはありませんから」

「いやいや、ボクがサナの弟みたいな子にいかがわしいことをするわけがないじゃないか・・・もっとも? サナに秘密にするなら考えないでもないよ?」

「それこそまさかですよ。サナ姉とリーザに隠し事が出来た試しがありませんのでね」

「まあそれはねえ。キミが顔に出過ぎるんじゃないかなぁ」

「従姉にもよく言われますけどねえ。まあ否定はしません」

 

 うんうんと頷く三人娘を横目で見つつ、ヒョウエが肩をすくめた。

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