毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「――お話はわかりました。ですが何故俺達に? 今回の件、そこまで手が足りないのですか?」
「まあ、そうとも言える」
QBの疑問に"狩人"が苦笑を浮かべた。
「やつら、ダンジョンに隠れ潜んでいるらしいのだ。ダンジョンを踏破できる人材がいないわけではないが、餅は餅屋ということでな」
「ああ、なるほど・・・しかしダンジョンの中に拠点ですか?」
「公式には未攻略のダンジョンだが、ひょっとしたらやつら、既に攻略してしまっているのかもしれん」
「とすれば、それは確かにまたとない秘密基地になりますね」
ヒョウエの言葉に"狩人"と三人娘が頷いた。
ヒョウエが「
「試したことはありませんが、確かに安全地帯を作ることはできそうですね」
「殿下、ダンジョンマスターならダンジョンの地形を操作することはできるのですか?」
「出来る場合もあると文献には記されていますね。僕も試したことは無いのではっきりしたことは言えません」
「ですか。ともかくそのダンジョンに"レスタラ"の構成員らしき人間が頻繁に出入りしているのは確認済みだ。冒険者ギルドにも協力を要請して見張らせて貰っている」
ダンジョンの前に必ずある、冒険者ギルドの施設のことだ。
冒険者の出入りをチェックし、ダンジョンの利用料を徴収し、モンスター暴走などの非常時には結界を発生させて入り口を封鎖する。
そこに諜報員を常駐させて監視しているのである。
「副長、そいつらは正式に冒険者ギルドに登録してるんですか?」
「入場の時の記帳によればフォセットの冒険者でな。裏は取れてない」
「お隣の国ですか。ひょっとして連中のアジトがあるんでしょうか」
「調査はさせているが間に合わないだろうな」
「ですな」
淡々と会話を交わすQBと"狩人"。
ふんす、とリアスが鼻息荒く立ち上がった。
「聞くべき情報はそれだけでしょうか? ならば今すぐ準備を整えてそのダンジョンを攻略しに行きましょう。善は急げ、戦の支度はもっと急げと申しますわ」
「・・・リアスさんのご先祖はひょっとして薩摩の人だったりします?」
「え? 何の話でしょうか?」
「いえなんでも」
リアスにしろ従兄のローレンスにしろ、八双からの斬り下ろしを得意にしてたよなと思いつつヒョウエが肩をすくめた。
「まあ実際その通りです。他になければ今すぐ準備にかかろうと思いますが」
「ええ、現状ではそれだけです、殿下。QB、そちらもいいか?」
「問題ありません。サフィア、いけるな?」
「まあマネージャーが行けと言うなら」
はあ、とサフィアが気が重そうに溜息をつく。
「サフィアさん? 何か気になる事でも?」
「ああいやいや、そうじゃないんだ――ただね、その、なんだ。
ボク、ダンジョン・アドベンチャーって苦手なんだよねえ」
サフィアが苦笑した。
そこから素早く準備を整えて、昼頃ヒョウエたちは王都を発った。
行き先は王都の東北、歩きで一日ほどのダンジョン村である。
「"
「まあ観光地というか山奥の温泉旅館というか。旅館から装備から魔力結晶の買い取りから、治療を始めとした呪文サービスまで何でも揃ってるそうですよ」
「ぶっそうな観光資源だねえ」
「鉱山街でもいいですよ」
「ははは、そっちの方が近いかな。しかしすごいなこれは! それに気持ちいい!」
「気に入って頂けて幸いですよ」
現在、五人はヒョウエの杖で北東に向かって飛行していた。マネージャーは早馬で後から追ってくる。
目を輝かせて眼下を見下ろすサフィアに、ヒョウエの口元もほころんだ。
「しかし、姐さん飛ぶのは初めてだろ? 良く怖くねえな」
「ですわね。私どもは慣れてしまいましたから平気ですが」
「いやあ、全然? これくらいの高さから落ちたこともあるし、今更怖くはないよ」
「むしろこの高さから落ちてどうやって生き残ったのか伺いたいところですね・・・」
そんな事を話しつつ、杖は風を切り裂いて飛んでいく。
巡航速度ではあるものの、それでも30分ほどで村が見えてきた。
「カスミ、お願いします」
「わかりました。~~~~~~~~~~」
ヒョウエの指示でカスミが術をかける。
「これは・・・透明化かい? 全体にかけるとは大したものだね」
「光の術は得意ですので。そう言えばサフィア様は剣と盗賊の技能の他には何がお得意なのですか?」
「そうだね、レイピア以外にも大概の武器はそれなりに扱える。後は知識と運動能力の強化、それに術だ。水と氷の術、音と光、探知の術を少しかじっている。
後は着火と血止めくらいかな。ほんとに血止め程度だから治療は当てにしないでくれよ? それに術師の仮面をかぶるときは戦闘力が大幅に落ちるから、前衛としての働きも当てにしないで欲しい」
「それだけお出来になるなら大した物ですわ」
「お褒めにあずかり恐悦至極。とは言え攻撃的な術は"
「? "
「?」とリアスが首をかしげる。
それに答えたのはサフィアではなくヒョウエだった。
「人間、体温を五度くらい下げるとあっさり意識を失うんですよ。特に脳はね。
そういう意味でも戦闘と言うよりは不意を突いて相手を無力化するためのもの、隠密調査向けの術編成という感じですね。"
「ご明察。出来れば精神系の術も習得したかったんだけど適性がなくてね。
一番適性があったのは水の術だったのさ――ああそうそう、言い忘れていたけど他に歌以外にも商人と大道芸と職人仕事のいくつかは身につけている。
今回の仕事には多分関係ないだろうけどね」
「変装と情報収集のために、ですね?」
「おチビちゃん正解。そう言えば忍者なんだったね、君は」
「はい。その手の技能は私もいくらか仕込まれました」
商人と職人、芸人は実のところこの世界の旅人のトップ4のうち3つを占める職種である(残り一つは巡礼者)。
商人は物を運ぶのが仕事だし、職人と芸人は同じ場所にいつも仕事があるとは限らない。必然移動する必要が出てくる。
つまり、見知らぬ顔がその辺をうろついていても怪しまれないと言うことだ。
実際忍者の「七放下(七つの変装)」には虚無僧や僧侶に加えて商人と大道芸人が含まれる。それだけ汎用性の高い変装なわけだ。
「しかし、それならいっそ芸人一座に扮して潜入するのもありでしたね。
僕は語りと笛、モリィは歌、リアスも楽器は出来ましたよね? カスミとサフィアさんはそれこそ芸達者もいいところですし」
「ええ、ギターと歌を少し・・・そうですわね、ヒョウエ様と一座を組んで諸国を回るというのもそれはそれで・・・」
くねくねし始めた主に、カスミが溜息をつく。
モリィがヒョウエの頭をぺしっと叩いた。
「馬鹿、それじゃダンジョンに入れねえだろ」
「おっと、そうでしたね。それじゃまあ、まともに冒険者として入りますか・・・こっそりとね」
そのまま一行はダンジョン入り口に建つギルドの事務所に降りていった。
「それじゃ、いいですね?」
ギルド事務所の"
入り口から少し入ったところ、ヒョウエの確認に全員が頷いた。
「例によって前衛はモリィとリアス、中衛に僕とカスミ。サフィアさんは後ろを固めて下さい。
戦闘になった場合は状況に応じて判断はお任せします。その場で最善と思われるようにしてください。正直貴女の能力はまだ把握し切れてませんので」
「了解。信頼には応えないとね」
ウインクするサフィアの背中には弓、腰には矢筒。
手に持っているのはレイピアに似ているが、柄頭から先端まで長さ150cmはある細身の両手剣。
剣とは言うが刃はついていない。
この武器の名前はエストック、またはタック。端的に言えば巨大な針だ。
チェインメイルやプレートの隙間を狙って攻撃するための刺突専用剣。
対人に特化した武器であるレイピアの代わりに持って来たものと思われた。
「普通の剣も使えなくはないけどね。レイピアに使い勝手が似ているこっちのほうが多少は扱いやすいんだ」
「なるほど」
頷くとヒョウエが前を向く。
「それでは行きましょうか。ダンジョン探索です」