毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
結局東側の調査はヒョウエのうんちくを聞いただけで終わった。
二人は杖にまたがり、地上すれすれを飛行しながら足跡を追う。
「どうです?」
「五日前の足跡なんざ、黄色いレンガの道みたいなもんさ」
「幸せに続いてそうにないですねえ」
「報酬には続いてるさ。ただ、ちっと気になるな・・・お前の懸念、正しかったかもしんねーぜ」
モリィが眉をひそめる。
「と、言うと?」
「ゴブリンの足跡と、何かを引きずった後、血の跡もあるから多分羊だな。
それはいいんだが、その中に人間大の足跡がある。狩人とか後をつけた村人のならいいんだけどよ」
「間違いないんですか?」
「間違ってたらメナディのビスケット、残り全部くれてやるよ」
「なるほど、それは間違いなさそうですね」
「自分で言ってて何だがむかつく反応だな・・・」
そんなやり取りを交えつつ、二十分ほどで二人は巣穴らしき洞窟を発見した。
「・・・ゴブリンってな、見張りを立てて寝るのか?」
「余りやらないみたいですね。やっぱり知恵の回る何者かがいると考えた方がいいでしょう。ホブゴブリン・・・はそれほど知恵が回りそうでもないですし、シャーマンかな?」
小声で会話を交わすヒョウエとモリィ。
二人は巣穴の近くの茂みに隠れていた。
会話の通り、洞窟の入り口の脇にはゴブリンと子馬ほどもある狼が二匹ずつ立っていた。狼の頭はモリィの肩ほどの高さがある。
「
「んじゃやるか」
「やりましょう」
ヒョウエが念動で四匹の動きを止める。
声も出せないようにされたゴブリンと魔狼をすかさずモリィが雷光銃で始末した。
さらにヒョウエが念響探知で洞窟の構造と内部の敵の位置を把握する。
「・・・やはりいますね。確かに一人、ゴブリンより大きい人間大の何かが」
「見つけ次第撃っちまって、後から考えればいいじゃねえか。敵にゃ違いねえだろ」
雷光銃の動作を確かめるモリィの言葉に、ヒョウエが顔をしかめた。
「一応さらわれたり脅されたりしてる村人の可能性もあります。確認してから撃って下さいね?」
「へぇへぇ、わかりましたよ」
モリィが肩をすくめた。
ヒョウエが人殺しを嫌っているのはこれまでの短い付き合いでも良くわかっている。
甘っちょろいとは思うが、半面その甘さも嫌いではなかった。
「じゃ、行きましょうか」
「おう」
杖の先に魔法の光を灯し、九つの金属球がヒョウエの回りを周回し始める。
モリィを先にして二人は洞窟に入っていった。
掃討はあっさりと終わった。
洞窟の構造と大まかな敵の位置がわかっているのだから、後は正面から潰せばいい。
「・・・いなかったな」
「ええ」
洞窟の最奥、ゴブリンたちの死体が転がる中で二人が頷き合った。
親玉らしきゴブリンの
「ホブゴブリンか、さもなくば人間の術師かとも思ったんですけどねえ。もう一度念響探知をやってみます」
「ああ、そうだな・・・」
「危ないッ!」
頷いた途端、モリィは横にはね飛ばされた。
激しい金属音が響き、転がって素早く膝立ちで跳ね起きる。
「!?」
一瞬目を見張った。
ヒョウエに襲いかかってるのは身長2mほどの大柄な人型生物。
だがその下半身は煙のように薄れて細くなり、その下端はへその緒のようにゴブリンの一匹の死骸に繋がっている。
対照的に上半身はたくましく、腕は
指先からはナイフのような太く長い爪が生え、それで獲物を切り刻もうとするが意外にもヒョウエはよく反応している。
明らかに武術を修めた動きで呪鍛鋼の杖を華麗にとは言わないまでも堅実に操り、攻撃を防ぎ続けていた。
「ちっ!」
動きを止めていた自分に舌打ちし、怪物に三連射。
だが光線は肉を焼いて貫くことはなく、体の表面に僅かな波紋を残して消える。
それでも多少のダメージは与えたようで、その隙にヒョウエは後退できた。
銃口を怪物に向けつつ、モリィが横走りにヒョウエと合流する。
「助かりました、モリィ」
「こっちこそだ。けど何だありゃ?」
「
この時、スプリガンはその生物の欲望や嗜好に影響されるようになります。で、戦う時は生物が生きていればそのまま巨大化しますし、死んでたり無機物だったりするとこうなるわけです」
あの瞬間、スプリガンがゴブリンの死骸から出現し、モリィを襲おうとしていた。
念動でモリィを突き飛ばしたヒョウエだったが、すかさず攻撃対象を変えて襲ってきたスプリガン相手に魔法を使う余裕はなく、杖で攻撃を防いでいたのである。
「死んだシャーマンが契約していたのか、あるいはシャーマンも操られていたのか。まあその辺はちょっとわかりませんが・・・」
「GY!」
ヒョウエの言葉を遮り、再びスプリガンが爪を振りかざして襲ってくる。
が、今度はヒョウエも十分余裕があった。爪が見えない壁に弾かれて空中を滑る。
すかさずモリィが雷光銃を撃つが、今度も邪妖精の体に波紋を残すだけに終わる。
「ちっ、何だよこいつは!?」
「スプリガンは半霊体半実体の存在なんですよ。この状態では雷光銃含めて通常の攻撃では相性が悪い。霊体を攻撃できる何かが必要なんです」
「・・・お前念動と修理以外は初歩しか習得してないんだよな? やべえじゃねえか」
顔をしかめるモリィ。
「修理じゃなくて物質変性ですよ・・・まあ大丈夫です。そんな時のために兄弟子に術を刻んでもらったこの杖がありますから」
言うとヒョウエは杖を左手で掲げ、先端からすすっと指を滑らせた。
石突きから左手で握った中程、更には小さな黄色い宝珠のはまった杖頭に至るまでびっしりと刻まれたルーン文字が、指のなぞった部分からぼうっと光を放つ。
全てのルーン文字と宝珠が光を放つと共に杖全体が発光する。
そのまま両手で杖を握り直し、ヒョウエは無造作に光る杖を突き出した。
攻撃を止める見えない壁など存在しないかのように、杖頭が邪妖精の腹に触れる。
「gi!?」
途端、腹に焼きごてを当てられたかのようにスプリガンの動きが止まった。
腹から薄い白い煙のようなものが吹き出し、それと共に全身が色を失っていく。
数秒後、スプリガンは実体を失って空気に溶けて消えた。