毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「英雄灰燼」
06-14 髑髏の仮面王


「今日は死ぬにはいい日だ」

 

     ――ベトナム戦争のアメリカ兵――

 

 

 

 

 気がつくと、そこは王都メットーの一角だった。

 東の大通りから少し北に入ったあたり、そこそこ裕福な人々が住む区画だ。

 

「!? モリィ、リアス、カスミ、サフィアさん!」

「お、おう!」

「あなたのリアス、ここにおりますわ!」

「お嬢様! ・・・わたくしもおります」

「ボクもいるよ・・・なんだいこれは? 

 ダンジョン・コアを持っていると瞬間転移できると聞いたけど、まさか王都まで転移できるとは」

「あー、それはですね」

 

 かくかくしかじかと説明する。

 

「なるほど、ボクたちはダンジョン・コアに取り込まれたと・・・肉体はそのままなのかい?」

「の、はずですが確認したことはないので・・・ただ、精神が死ぬと肉体が死んでしまう可能性はそれなりにあると聞きます」

「ダンジョンの中でなかったことが幸いだね。マネージャーや"狩人"さんが少なくともボクたちの肉体の安全は確保してくれる」

 

 ため息。

 

「で、どうすればここから出られるんだい?」

「普通ならコアを安定化させれば出られるはずなんですが、既に安定化してますしね・・・所有権の更新自体そうある事ではないので、こう言う事もあるかもしれないと言えばそれまでですが」

「それじゃ取りあえずは安定化と同じ手段でどうにかしてみる方向か」

「ええ。場合によっては戦闘や捜索、情報収集が必要になる可能性もあります。サフィアさんのことは頼りにさせて貰いますよ」

「任せたまえ」

 

 微笑んでサフィアが額を指でなぞる。

 

「ふむ」

 

 自分の手を見下ろして、握ったり開いたり。

 

「どうです?」

「うん。この精神世界とでもいうのかな、ここでもボクの《加護》は問題なく使えるみたいだね。街中だし、しばらくは"探偵(ショルメス)"の仮面(ペルソナ)を着けることにするよ」

「はい、それでお願いします。・・・にしても。気付きました?」

「ああ。"探偵"の仮面のおかげでね」

 

 頷き合うヒョウエとサフィア。

 他の三人が首をかしげた。

 

「ヒョウエ様、サフィアさん。何か不審なところでもありますの?」

「それがですね。『王国(キングダム)』通りと『驚異(マーベルズ)』通りの交差するあたりだというのはわかるんですけど・・・」

「町並みが微妙に違うんだよね。ほら、あちらの屋敷なんかボクの知る限りでは集団住宅だったはずだし、その隣のお屋敷は、建ててから数十年は経っていて、かなり古びていたはずなんだ」

「なるほど、ここは過去の情景と言うことですね?」

 

 頭の回転の速いカスミが最初に答えにたどり着いた。

 

「恐らくはね」

「多分誰かの過去の記憶から再構成されてるんでしょう」

「でもこの中にそんな年寄りはいねえだろ。それともあれか、おまえ(ヒョウエ)の生まれる前の記憶とか?」

 

 モリィの推測にヒョウエが肩をすくめる。

 

「僕の前世ならニホンの情景になってますよ。多分他に取り込まれた人がいて、その人の記憶なんでしょう」

「めんどくせえな。そいつも助けなきゃならないのか?」

「安定化させたら勝手に助かると思いますよ」

「そう願いたいものですね・・・」

 

 カスミが溜息をつき、一行は歩き始めた。

 

 

 

 数時間ほど歩き回り、一行は情報を集めた。

 疲れもし、空腹を覚えもしたので、どこかで見たような店主の引く中華料理の屋台で昼食?をとる。

 

「ハイヨー。エビチリにチンジャオロースー、チマキに小籠包お待ちー。海鮮炒麺はもうちょっと待ってネー」

「ありがとうございます。相変わらずおいしそうですね」

「アレ、お客さん前に来たっケ?」

「そのうち来る予定なんですよ」

「???」

 

 首をかしげつつ主人が屋台の方に戻っていく。

 サフィアが料理の皿を眺めつつ、懐かしそうな顔になった。

 

「チンジャオロースーか。マネージャーの得意料理でね。駆け出しの頃はよく肉抜きの奴を二人でもさもさ食べてたものさ」

「肉の入っていない青椒肉絲(チンジャオロースー)ってチンジャオロースーって言っていいんでしょうか」

「金のない時には言うのさ」

「アッハイ」

 

 

 

 しばらくは五人とも無言でひたすら料理をむさぼった。

 料理が美味だったこともあるが、意外に空腹だったことに気付いたせいでもある。

 

「しかし何かおかしくねえか? ここにいるあたし達は心だけのあたし達なんだろ?

 だったら腹が減ったり疲れたりしねえんじゃねえのか?」

「そのへんはまあ色々議論のあるところですね。

 心を完全に体から切り離せるのか、切り離せるとしても心と体は連動しているのではないか、そもそもここにいる僕たちは本当に心だけの存在なのか。

 魂の術の達人がこう言うところに入った記録が今のところないので、そのへんははっきりわからないと言うのが正直なところです。狙って入れるところでもないし、高レベルの魂の術を操る人が冒険者やったりは余りしないので」

「ふーん」

 

 一通り料理を腹に収め、人心地がついたところでまじめな話を再開する。

 

「それで・・・やっぱり50年ほど前のメットーみたいですね、ここは」

「今から二代前・・・先々代陛下の御代ですわね」

「僕たちのお爺さんお婆さんの世代ですね。知っている人だとフィル爺とウォー・シスターズ商会のハリエット、リアスのおじいさんのシンゲンさんくらいかなあ。後はエルフやドワーフの人たちと『星の騎士』」

「フィル爺?」

「あ、僕たちの時代だと王国宰相やってる人です」

「フィリップ・ワイリー侯爵か!」

 

 うむむ、と唸ったサフィアの視線がふと上を向く。

 ヒョウエたちの視線も。店の親父、道行く人々、家々の窓からも揃って人々が上を見上げた。

 ざわつく街路。悲鳴を上げて座り込んでしまう女性もいた。

 一瞬前の青とは全く違う、毒々しい赤に染まった空。

 そこに浮かぶのは鋼鉄のトサカのついた鉄兜を被り、髑髏を模した仮面を着け、甲冑と軍隊の礼装をまとった男の上半身。恐らくは超巨大な幻影。

 

「これは――! 読んだことがあります!」

「奇遇だな。あたしも話に聞いたことがあるぜ」

 

 ざわめく王都を見下ろして、巨大な男の影が声を発した。

 

『ごきげんよう、愚民諸君。我らは"復古軍(レスタウラツィオン)"。偉大なる古代魔法王国の系譜を継ぐ者である。これより我ら"復古軍(レスタウラツィオン)"は本来あるべき姿に世界を戻すため、偽りの統治者たちに宣戦を布告する!』

 

 "復古軍(レスタウラツィオン)"首領「髑髏王(トーテンコプフ)」の宣戦布告。

 歴史書に幾度も描かれ、吟遊詩人の歌に謳われることになる情景。

 "復古軍(レスタウラツィオン)"との長い戦いの開始を告げるそれがヒョウエたちの眼前に展開していた。

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