毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
数十分後、"アクション・ミックス"の面々は戦闘態勢で軍司令部に集合していた。
部屋には他にも"
王国諜報機関"
現代地球と違い飛び抜けた戦力を保有する個人が存在することもあって、隠密行動を得意とする人材の集まる彼らは自然と諜報機関と特殊部隊を兼ねるような形に発展してきていた。
上位冒険者を束ねて即応部隊として組織したとき、それを使いこなせるのはここしかいなかった。
「で、どういう事だ。アラタズから何か大きいものが飛んできたとしか聞いてないが」
ヴィジルの言葉に"狩人"が頷いた。
「コースト市が壊滅した」
「!」
部屋の中に動揺が走った。
メットーから北西に位置する、王国有数の大都市だ。
「やったのはレスタラの紋章をつけた巨大な空飛ぶ船。現地にいたうちのエージェントが魔道具で送ってきた画がこれだ」
"狩人"の操作で、宙に映像が浮かび上がる。
暗雲の立ちこめる空を悠々と進むのは銀色の光沢を放つ金属製の、船あるいは蓋をしたお椀のような丸い物体。
船底?から魔力光を放ち、市街を破壊している。
矢や魔法が地上から飛ぶが、ほとんどのものは届きすらしない。
「真魔法文明時代の遺跡でこんな感じのフワフワ飛ぶ奴がいたな・・・いや、あっちは30cmくらいだったが」
「空飛ぶ船と言うよりは空飛ぶ砦だな」
「空中要塞か」
「どっちでもいいさ。それで、こいつがコースト市を焼いたのか」
"狩人"が更に手元の魔道具を操作すると映像が切り替わる。
そこに映ったのは、空中要塞から小さい粒のようなものが降ってくる映像。
「これは?」
「小さくてわかりづらいが、この小さいのが具現化術式を装備したレスタラの兵士たちだ――報告によれば魔導甲冑レベルのやつで、それが一気に200以上降ってきたらしい」
「ぐえっ」
「魔導甲冑が、しかも200かよ・・・」
うめき声が多数洩れた。
特に決まった基準があるわけではないが、
ヒョウエ邸地下の『孤独の要塞』に残されていた黒い巨人――ヒョウエ命名、"
さすがにあれらは真魔法文明時代の遺物としても最上級のものだが、それでも洒落にならない戦力であることは間違いない。
平均的なそれであれば、冒険者と比べて緑等級以上黒等級未満というところだろうか。
"白の翼"ら「アクション・ミックス」の戦闘力を考慮しても、軍の具現化術式部隊とこの場にいるディテクの冒険者の上澄みを併せてどうにか対抗できるか、というレベルだ。
「それで、今こいつはどこにいるんだ?」
「一直線にメットーへ向かってきている。明日か、遅くても明後日には」
「作戦は決まってるのか?」
「避難はもう始まってる。援軍の要請もな。だが恐らくは間に合わん。メットー郊外で迎え撃つことになるだろう」
視線が"
「・・・おいおいおいおい。まさかうちのウォルに一切合切全部押しつける気かよ!? こいつは・・・」
激昂するジェットを、そっと"白の翼"が制し、静かに頷く。
「僕が行くよ。それが必要であるなら」
「感謝する」
"狩人"が深々と頭を下げた。
金等級とは言え一介の冒険者に対する最大限の礼。
「・・・」
「・・・」
沈黙が部屋を覆う。
ややあって、30半ばのベテラン中のベテランである黒等級の冒険者が"白の翼"の肩を叩いた。
「すまねえな、頼りない先輩どもでよ。頼むぜウィング・ボーイ。空の上となったらおまえさんが頼りだ」
「微力を尽くしますよ」
"白の翼"はまだ19才だった。
この部屋にいる誰よりも若い。
だが、空を自在に舞える人間は他にいない。
しばらくたって"狩人"が口を開くまで、誰も、何も言わなかった。
「――王都にも魔導兵器部隊はいる。あそこまで届く武器がないわけじゃない。"
そいつらに援護させるから、"白の翼"は突入して内部の兵器を破壊してくれ。王宮の宝物庫を総ざらいにしてでも使えそうな武器を持ってきてやる。
アラタズは霊体化してナビゲートとこちらとの連絡役を頼む。
その他のお前達は地上で魔導甲冑どもの相手だ。王都騎士団と近衛の精鋭も全力でブチ込む。
何としてでも奴らを追い返してやる。私達の後ろにはメットー四十万の市民がいる。絶対に抜かれるわけにはいかん」
鋭い眼光で部屋の中の冒険者たちを見回す"狩人"。
「ディテク王国はお前達が義務を果たす事を期待する」
「冒険者としての義務かい」
やや皮肉げなジェットの声。
「人としての義務だ」
きっぱりと言い切る"狩人"。
その眼差しには、社会の裏と汚れを見てきた皮肉屋の盗賊さえ黙らせる何かがあった。
「お前もこの二年でレスタラのやってきたことを見たろう。
街を焼き、人を焼き、人が生きてきた全ての痕跡を消す。
つまるところはただ『汚いから』と言うそれだけの理由でだ。
奴らこそが真の人間で、俺達はただの掃除すべきゴミでしかないと、あいつらは本気で信じている。
冗談じゃない。俺達は人間だ。たとえクソであっても人間だ。意地もあれば誇りもある。それに・・・」
「それに?」
にやり、と"狩人"が笑みを浮かべる。
「そんな連中の澄ましたツラに一発ブチ込んでみたいとは思わないか?」
「・・・」
しばらくの沈黙。
にやり、と。ジェットもまた笑みを浮かべた。
「いいぜ。てめえはクソ野郎で死ぬほど嫌いだし、俺はウォルみてぇなお人好しじゃねえ。
だが乗った。あいつらの澄ましたツラを一発張り飛ばしてやる。
なあてめえら、やってやろうじゃねえか!」
おおっ!と歓声が上がった。
拳を突き上げ、意気を上げる。
「レスタラ野郎をブッ飛ばせ!」
「髑髏仮面を鋳つぶして蹄鉄にしてやらあ!」
「魔導甲冑を一つ頂くぜ! 前から欲しかったんだよな!」
やにわに賑やかになる部屋の中。
"白き翼"は兜の下でそっと微笑んだ。