毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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01-18 花の冠

「「ふうっ」」

 

 スプリガンがどうやら再生しないのを確かめ、二人が同時に息をついた。

 光の消えた杖と雷光銃をこつん、と軽く触れあわせる。

 

「しっかし危ないところだったな。お前が気付いてくれなきゃ、良くて大怪我だったぜ。

 お前も・・・そういや、お前意外に強かったんだな。術師なんて大概モヤシだと思ってたけど」

「子供の頃から色々仕込まれてましてね。かじる程度ですが格闘術、野歩きや罠外し、目利きや値切り、忍び足に縄抜けとまあ色々・・・」

 

 ヒョウエの言葉が途切れる。モリィが彼が今まで見たことのない表情をしていた。

 

「冒険者族はいいよな。才能に恵まれてて、苦労なんかしたことねえだろ」

「・・・モリィ?」

「いや、悪い。忘れてくれ」

 

 自己嫌悪の表情。銃を持った右手で目元を隠していたが、後悔の念だけはありありとわかった。見ないふりをして、ヒョウエが軽く肩をすくめる。

 

「否定はしませんよ。実際才能という奴には随分助けられてます」

「・・・」

「とは言えモリィも恵まれてるほうだとは思いますけどね。強力な《目の加護》にそれを十分活かせる雷光銃という遺失兵器(アーティファクト)

 どっちか片方でも冒険者としては手が出るほど欲しいと思いますよ?」

 

 モリィは無言のまま。

 

「まあ大金が必要らしいですしそういう意味では大変でしょうけど、そういう意味では僕も同じですし、事情の近い相棒がいるというのはありがたいんですよこれが」

「・・・あたしは自分の為、お前はスラムに住む連中のためだろ。比較にならねえよ」

 

 モリィををちらりと見てヒョウエが言葉を続けた。

 

「まあ確かにモリィは自己中心的で意地汚いですよね。

 移動してる間にもばれてないと思ってこっそりビスケット一人で食べるし、朝は起こされないと起きないし、魔力結晶が落ちてたら絶対に見逃さないし、小銭が落ちててもわざわざ小走りで拾うし、一緒にご飯食べたら大皿の最後のおかずは必ず取ってくし・・・」

 

 目を押さえるモリィの手がプルプルと震え始めた。ヒョウエは楽しそうに声のトーンを1オクターブ上げてとうとうとしゃべり続ける。

 

「後照れ屋なところもかわいいんですよねえ。

 銃の練習してても着替えで時間を取ったって見え見えの嘘をつくし、子供達にたかられててうるさそうにしてても結構面倒見よく付き合って上げてるし、屋台でお菓子買うときも一本買うか二本買うか迷って・・・痛い痛い、グリップでグリグリやめて」

「うるせえ! それ以上喋ったら殺すぞ!」

 

 モリィが後ろからヒョウエの首を絞め上げていた。顔を真っ赤にしているのが怒りか羞恥かはよくわからない。

 

「だって全部本当の事じゃないですか」

「やかましい! そのペラペラ回る口を閉じねぇと、ドタマにもう一つ口を開けるぞ!」

「きゃー、モリィさんが怒ったー!」

「だからそう言うのやめろっつってんだよ!」

 

 痛い痛いと言いつつ笑顔のヒョウエと、顔を真っ赤にしたモリィ。誰がどう見ても楽しそうにじゃれ合っているようにしか見えないその光景は、それからかっきり十分続いた。

 

 

 

「ぜーはーぜーはー・・・」

「大丈夫ですか?」

「てめーのせいだよ! げほっげほっ・・・」

 

 喉がかれていたところに大声を出して、咳き込むモリィ。

 腰の水袋を取って、がぶがぶと水を飲む。

 ようやく一息ついて、スプリガンが出てきたゴブリンの死骸に目をやる。

 スプリガンを構成していた半霊体物質(エクトプラズム)は分解拡散し、今はただのゴブリンの死骸だ。

 

「しかしスプリガンか。これでゴブリン分の依頼料じゃ割に合わねえぜ」

「モリィ、それ村の人たちの前では言わない方がいいですよ」

「なんでだよ?」

「追加料金が払えないからですよ。それにそう言うモンスターがいたと言っても、証拠が出せません」

「あー・・・」

 

 村の様子を思い出す。間違っても豊かそうには見えない開拓村で、貨幣すらろくに見たことのない住人も多いだろう。

 

「知っててだました風でもありませんでしたしね・・・そもそもわからないでしょう。

 言ったところで疑われるか、あるいは余計な気苦労をかけるだけですよ」

「まあ、そりゃなあ」

 

 たちの悪い冒険者がいるようにたちの悪い依頼人というのもいて、ホブゴブリンや歪んだ妖精(ツイステッド・エルフ)人食い鬼(オーガ)などがいるとわかっていて「ゴブリンの群れのみ」で依頼を出すことがある。依頼料をケチるためだ。

 もちろんばれればその後ギルドに依頼を出すことができなくなるのだが、後先考えない愚か者は常に一定数存在する。しかし、モリィから見てもファール村の村長や村人たちが悪意でそうした依頼を出したとは思えなかった。

 

「あーあ、じゃあその分はただ働きかよ」

「まあこう言う場合はギルドで申告すれば差額を補填して貰えたりしますし・・・そっちには一応言うだけ言ってみましょう」

「証拠がねえんじゃ望み薄だなあ・・・まあいいや、報告してさっさと帰ろうぜ」

 

 モリィが深く溜息をついた。

 

 

 

「ああ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 村長たちへの報告はつつがなく済んだ。

 涙ながらに感謝の言葉を述べられれば、ヒョウエにしろモリィにしろ悪い気はしない。

 村の入り口まで村の主立った者総出で見送りについてくる村長たちを見て、ちらりと視線を交わす。

 

「・・・ま、こんなもんか?」

「いいんじゃないですか、これで?」

 

 ついてくる村長たちに聞こえないように言葉を交わし、二人は同時に肩をすくめた。

 

「ん?」

 

 さして広くもない村である。一行はすぐに入り口に着いた。

 何故か門の脇に子供達――先ほど村を調べたときについてきた――が集まっていた。

 なんだろうと思う間に、代表らしい数人の少女が走り寄ってくる。

 手には彼女たちが作ったのだろう、つたない出来の花輪があった。

 ちょっと迷ったがモリィの前でリーダー格らしい少女が立ち止まる。

 

「ねえ、お姉ちゃんたち悪いゴブリンをやっつけてくれた冒険者さんなんでしょ?」

「ああ、まあな」

 

 子供達の間から歓声が上がった。

 とりわけ女の子たちは一丁前にきゃーきゃーと黄色い声を上げている。

 

「これ、私たちからのお礼! つけて上げるからしゃがんで!」

 

 言われるままにしゃがんだヒョウエの帽子とモリィの頭に、子供達の作った花輪が競技会の月桂冠のように飾られる。

 少女たちが誇らしげに胸を張り、村長たちも顔をほころばせていた。

 

「どうですかモリィ。これ以上ない報酬ですよ。ねえ?」

「まあ、そうだな」

 

 笑顔でウィンクするヒョウエに苦笑する。

 実際、先ほど礼を言われた時以上に良い気分だった。

 それを知って知らずか、リーダー格の少女が手を組んで感極まったように叫ぶ。

 

「素敵! どっちのお姉ちゃんにも(・・・・・・・・・・・)とてもよく似合ってるわ!」

「え」

 

 ヒョウエの口からまぬけな声が洩れる。

 たまらずモリィが爆笑した。

 




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