毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
06-22 世界経済会議
「白の翼―― (一)ディテクの金等級冒険者。レスタラ戦役の「翼の戦い」において空中要塞を落とし、行方不明になる。(二)(一)の使用していた
――ディテク王国百科事典――
光が収まると、冒険者ギルド支部の一室だった。
記憶にある、精神世界に引き込まれる寸前の様子と全く変わったところはない。
ヒョウエの手の中にはトパーズのような黄色い正二十面体のダンジョン・コア。
「なんだ!?」
「ヒョウエ殿下! "
口々に叫ぶ諜報員たち。
閃光でくらんだか、目元を押さえて唸っている者達もいるのを見るに、ほとんど時間は経ってないのだろう。
「動揺するな。殿下たちも私も無事だ。恐らくはダンジョン・コアの魔力が漏れ出したのだろう。心配する事はない」
「・・・はっ!」
"狩人"が半分振り向いて制すると、ざわめいていた部下たちも冷静さを取り戻した。
「殿下達も体調に異常は・・・」
ヒョウエたちの方に振り向こうとして、彼らの視線が自分に集中しているのに気付く。
モリィがためらいながら口を開いた。
「その、さ。あんた・・・」
言葉が途中で途切れる。ヒョウエが手で制した。
どういう表情をしていいかわからない、そんな顔で"狩人"を見ている。
「・・・」
"狩人"は薄く笑い、懐から取り出した葉巻に火をつけた。
それからしばらくは、再び手掛かりを求めて東奔西走する日々が続いた。
しつこく催促されていたカーラへの訪問ついでにカレンにそれとなく聞いてみたところ、しばらく後に貿易協定に関する大規模な外交会談が行われるのでぴりぴりしているのだと教えられた。
「フォセット、アールア、オルスター、モアフらディテクの周辺諸国と、ライタイム、アグナムから特使が。ダルクからは族長会議の一人、どうもゲマイからも来るようね」
「・・・ほとんど大陸の縮図じゃないですか」
ヒョウエが目を見開く。
「星の騎士」がいる西方のライタイムはディテクと並ぶ大陸の二大国家。
アグナムは極東の謎めいた島国。
ダルクは北方の騎馬民族の国。
ゲマイ魔導共和国は術師によって統治される南方の国。
ディテク、ライタイムにこの三国を加えた五カ国がマルガム大陸の列強諸国として認識されていた。これらの国を含んだ貿易協定が成立するなら、それは大陸の歴史に残る大きな動きになるだろう。
「そうなのよ。当然下交渉やらも随分前から動いてたらしくてね。
逆に考えればレスタラが今になって復活してきたのもこれに合わせてのことかもしれないって、お父様が言ってたわ」
「なるほど」
二人揃って溜息をつく。
膝の上のカーラの頭を無意識に撫でるヒョウエ。
頭を撫でられたカーラが、姉と兄の顔をキョロキョロと見くらべた。
「ワフッ?」
つられてカーラの膝の上の子犬も三人の顔を見比べるが、こちらもよくわかっていないようではある。
「中止にするわけには・・・いかないんでしょうねえ」
「お父様と国の面子は丸つぶれね。ディテク王国衰退の引き金を引きたいなら止めないわよ」
肩をすくめるカレン。
大げさなように聞こえるが、決してそうではない。
面子というのはイコールで能力に対する信頼、信義に対する信用だ。
それが潰れるということは外交力の低下であり抑止力の低下であり、広い意味での軍事力の低下でもある。
また一般国民や諸侯からの侮りを受けることによって、内政面でも大きな禍根を残す事になる。
このような大舞台でのしくじりとなれば尚更だ。
何故王や領主に権威が必要なのか。
それは極論すれば家臣や民に言うことを聞かせるためだ。
この場合言うことを聞かせるというのは、法律を守らせる事を含む。
教育レベルの低い社会で法律を守ることの重要性を理屈で教えるのはほぼ不可能だから、権威付けや軍事力をもって従わせるしかない。
それによって社会をスムーズに動かし、内政コストを下げることによって更に社会を良くすることにリソースを割くことができる。
法律に従わない人間が多ければそれを取り締まるのにコストを必要とするし、社会を回すにも無駄が多くなる。
経済力が低下し、国力が低下する。
無論悪徳貴族の跋扈など様々な弊害は発生するが、この文明レベルにおいてはそれが最適化された手法なのだ。
「会談はどこで行うんです?」
「アイズナー離宮よ。メットーのど真ん中」
「まああそこならまだましですね・・・色々魔導防衛機構もありますし、レスタラが空中要塞を持ってこない限り大丈夫でしょう」
「・・・まだ他にあるの、あんなのが?」
「複数建造されたのは確からしいですよ」
再びため息。妹と子犬がきょろきょろ。
「お兄様、お姉様。空中要塞って、"
「ええ。まあ大丈夫ですよ。もし本当に出てきても青い鎧がやっつけてくれます」
「・・・うん、そうだね!」
カーラがにっこり笑う。
カレンが笑み崩れていた表情を戻して、考え込む顔になる。
「姉上、何か?」
「いえ、何でもないわ」
(
何となく察しはするが口には出さない。
「まあこの話はここまでにしておきましょう」
「そうね。三人集まってるところでする話でもない・・・大体あなたが振ってきたんでしょうが」
「姉上ほど地獄耳じゃないんですよ、僕は。かわいい弟を助けると思って見逃して下さい」
肩をすくめるヒョウエ。一方でカレンは猫のように眼を細める。
「へえ、かわいいって自分で認めるんだ?」
「言葉の綾です」
「でも助けたからにはお礼があってしかるべきよね? さーて、どうしようかしら・・・」
何かろくでもないことを言いかけて、ふと下からの視線に気付く。
妹の睨む視線。
「お姉様、お兄様をいじめちゃだめ!」
「あら、いじめてるわけじゃないのよ。これは・・・」
「だめ!」
かたくなな妹の視線に、カレンが手を上げて降参する。
「はいはい、姉様の負けよ。愛されてるわね、ヒョウエ?」
「カーラはいい子ですからね。いい子でかわいくて愛らしい。完璧じゃないですか」
「えへへ・・・」
頭を撫でられたカーラの表情がほにゃっと崩れる。
「まあそれについては私も100%賛成だけれども」
「けれども?」
言葉の端に含まれた微妙なトーンに、ヒョウエが片眉を上げた。
カレンが立ち上がり、ヒョウエの隣に腰を下ろす。
「カーラにはかわいいと言って上げるのに、私にはかわいいと言ってくれないのかしら?」
満面の笑顔でしなだれかかる姉。
弟が半目でそれを見上げた。
「何よ」
「そろそろかわいこぶりっこが痛々しい年齢では?」
真顔で言うと頬を全力でつねられた。
普段のからかい混じりのそれではなく、明らかに力一杯ひねっている。
「それで? 年齢がなんですって? ね・ん・れ・い・が・な・ん・で・す・っ・て・?」
「痛い痛い痛い」
「今のはお兄様が悪いと思う・・・」
首をすくめてカーラが呟いた。
小国の名前として上げられているのは、DCコミックス(スーパーマン、バットマン他の出版社)が過去に買収した出版社のもじりです。
映画になっているだけでもワンダーウーマン、フラッシュ、シャザム、グリーンランタン、アクアマン、ドクターフェイト(ドウェイン・ジョンソンの「ブラックアダム」に出て来た金ぴか兜の魔術師ヒーロー)、それ以外でもグリーンアローやスペクターがこのへんの出身です。
え、グリーンランタンは主演の人が射殺されたから映画化流れたろって? そうだったかな・・・そうだったかも。