毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
外交会談までの日々は不気味なほど静かに過ぎていった。
各国の特使(中には近隣国の国王もいる)のメットー入りに際してはカレンの依頼を受けて青い鎧として上空から警護に当たったが、"
いずれをもってしても何も怪しいものは引っかからなかった。
「まあ取りあえずここまでは平穏無事ですね。取りあえずは」
ヒョウエ邸での、みんな集まっての夕食会。
ヒョウエの言葉にサフィアとマネージャーを含めたその場の全員が頷く。
ここしばらくはこの二人も含めた面子で朝昼晩の食事をとっていた。
「えーと、警備が厳重だからレスタラの人たちも諦めたって事は・・・」
「ないでしょうねえ」
「それはないとボクは思うよ」
「ないな」
「ねえだろうなあ」
「有り得ませんわね」
「わたくしもまずないかと存じます」
「だよねー・・・」
言うだけ言ってはみたものの口々に否定されて、あははと空笑いするリーザ。
ヒョウエがQBに視線を向ける。
「何かをやってくるのは間違いないんですよね?」
「それは間違いない。"
「具体的な内容は伝えられてない、と?」
「心を読む魔法があるんだ、そりゃ知ってる奴は少ねえほうがいいだろうよ」
視線を向けるリアスに答えたのはモリィだった。
「ああ、なるほど・・・」
「正解だ。流石元盗賊ギルドメンバーだな」
「そう言う褒められ方されてもあんま嬉しかねえけどな」
「それは失敬」
QBの称賛に苦笑するモリィ。リアスやリーザは素直に感心している。
「でもそのへんちょっとわからないことがあるんだけど」
「なんです、リーザ?」
シチューにつけたパンをかじりながらヒョウエ。
その様子に眉を寄せながらリーザがまじめな顔になる。
「ヒョウエくんお行儀悪い。――外交会談のタイミングで攻撃してくるなら、目的はメットーに集まってるえらい人たちとか、王族の方々だよね?」
「まあおそらくは」
「レスタラの人たちの目的がえらい人の皆殺しだとして、そのあとどうするの? メットーに攻め込んでディテク王国を征服するだけなら、他の国の人を殺す必要ないと思うんだけど」
「・・・」
「・・・」
テーブルに着いていた他の人間が顔を見合わせる。少しの間を置いて口を開いたのはサフィアだった。
「いい疑問だ、リーザくん。ボクの中の"
「それじゃ、やっぱり何かあるんですね?」
「ああ。間違いなくね。これに関しては結構時間をかけて情報を精査してみた。その結果は――」
サフィアが一旦言葉を切る。
ごくり、と誰かが喉を鳴らした。
「――情報不足、だ」
「役に立たねえな探偵!」
食卓に漂っていた緊張が一気に弛緩した。
思わずと言った感じでモリィがつっこむ。
「ま、まあまあモリィさん。専門の人がそう言うんだから本当にそうなんじゃないかと・・・」
「まあそれはわかってるけどよ・・・ここまで引っ張っといてそれはねえだろ」
サフィアの口元に苦笑が浮かんだ。
「まあ言われてもしょうがないけどね。でも柱が足りなかったら家は建てられないんだ。今のところわかっている情報だと、このタイミングで攻めてくる合理的な理由が思いつかないんだよ」
「"狩人"閣下も似たような事を言っていた。もちろん奴らの目的は大陸制覇だから、ライタイムもアグナムもその他の国も全て最終的には敵なわけだが、この時点ではっきりと敵に回す理由がない。
特使を殺されれば、他の列強も面子上レスタラに宣戦布告せざるをえん」
サフィアの言葉をQBが補足する。リアスが頷いた。
「強いて理由を考えるなら派手に宣戦布告をして敵の士気をくじくとかですが・・・今のレスタラのトップは馬鹿でも無能でもなさそうです。その程度の理由でわざわざ不利になるような真似をするとは思えませんわ。
私なら『我々
こう言っては何ですがディテク一国に負けた程度の戦力で、ライタイムや、まして他の列強全てを相手に出来るとは思えませんし・・・なんです?」
自分に集中する視線に気付き、リアスが眉を寄せる。
「お前、ケンカのことになると頭が回るのな。普段は脳筋のくせに」
「とことん失礼ですわねモリィさんは!?」
始まりそうな口げんかに、素早くヒョウエが割って入る。
「ハイストップ。今はケンカしてる時じゃありませんからね」
「・・・わかりましたわ」
リアスが不承不承矛を収める。
モリィも何か言いたそうではあったが追撃はしなかった。
空気を変えようと、サナが口を開く。
「ですがサフィア、だとしてもやれることは変わらないのでしょう?」
「まあそうなんだよね。何かありそうだとは思うんだけど、今は警備を徹底的に固めて、情報に目を光らせて、何かあったときに即応できるようにすること。結局はそれしかない。歯がゆいね、まったく」
サフィアを含み、いくつかのため息が同時に洩れた。
「失礼する」
「ああ、すまないな。わざわざご足労願って」
「気に召されるな。どこにでも現れるのがそれがしの取り柄ゆえにな」
笑みを含んだ声。
軽いジョークに"狩人"が僅かに頬を歪める。
数日後、アイズナー離宮の庭にある離れ。離れとは言ってもちょっとした邸宅並みの大きさはある。
そこに青い鎧の姿があった。
それを迎えるのは"狩人"と部下たち。
ここが現在離宮警備の指揮所になっていた。
「カレン殿下は・・・離宮本殿か」
「ああ。初日の今日は、出奔しているヒョウエ殿下を除いて、メットーにいる全ての王族が集まっているからな」
「・・・カーラ殿下もか? まだ8才だろうに」
「王族の義務という奴だ。慣例でもあるからな。こればかりは特に理由もなくやめるわけにはいかん――ヒョウエ殿下が混じっていてくれれば、これ以上ない護衛だったのだがな」
「・・・」
「何か?」
「いや、なんでもござらぬ」
まさかここにいますとも言えず沈黙するヒョウエ。
"狩人"も僅かにいぶかしんだが、さすがに千里眼か読心術でも持っていなければ、目の前の巨漢が少女のように小柄なヒョウエであるなどとは見抜けもしないだろう。
もっとも、青い鎧状態のヒョウエは圧倒的に高密度の魔力の塊なので、魔力は魔力を弾くという基本原則により、生半な千里眼や読心術、あるいは予知能力ですら弾いてしまうのだが。
青い鎧に確実に効力を発揮する探知系の能力があるとすれば、セーナなどが持つ神そのものの《加護》や神託の類くらいだろう。
「取りあえず拙者は上空で待機する。何かあったらここで声を上げて呼ばわれよ。大嵐でもない限り聞こえる」
「聞こえるんですか!? ・・・あ、すいません」
「聞こえ申す」
思わず声を上げてしまった"狩人"の部下その1に、まじめくさって頷く青い鎧。
「聞こえんのかよ」
「便利な人だなあ・・・」
おほん、と"狩人"が咳払いをして部下たちのざわめきが静まる。
ふう、と流石に呆れたように溜息をついた後、机の上にあった木箱を開けて中のものを青い鎧に差し出した。
「これは・・・遠話の魔道具か」
「ああ、一応付けておいてくれ。最悪壊しても構わん」
「心得た――必ず守るぞ」
「ああ。レスタラのクソ野郎どもに我々の国を好きにされてたまるか。
奴らが初日に仕掛けてくる可能性は高い。頼むぞ、青い鎧」
メットーの守護者二人が真剣な顔で頷き合った。