毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-24 急いで待て

「来なかったじゃねえか」

「虚を突くのも兵法ですわ・・・まあやられると腹立たしいことこの上ないですけど」

 

 夕食の席、憮然とした顔でモリィとリアスが会話を交わす。

 

「後先考えず派手にやるなら間違いなく初日だとは思ったんですけどね。まあ来ないで助かったと言えば助かりましたが」

 

 結局初日は何事も無く無事に終わった。

 関係者一同がほっと胸をなで下ろし、すぐに気を引き締め直している。

 本命が明日来るかも知れないし、なんなら今夜来るかも知れないのだ。

 

 王族たちは王宮やそれぞれの離宮に戻り、各国の代表たちはアイズナー離宮に滞在している。

 "狩人"を始めとした警備責任者たちは眠れない夜を過ごすだろう。

 

 会議の日程は現状決まっているだけでも一ヶ月。

 遠隔通信の手段が極めて限られているこの世界では、外交交渉を行うにもその下準備をするにも、当事者同士が直接顔を付き合わせるしかない。それゆえの長さだ。

 これほど大がかりな貿易交渉であれば一ヶ月でも短いかもしれない。

 延長される可能性も十分にあり、当事者の緊張は当分続くことになりそうだった。

 

「勘弁してほしいぜ。正直一月も二月もこれが続くと言われたら逃げ出したくなるわ」

「ほんとにねえ」

 

 テーブルに突っ伏したモリィに、サフィアがしみじみと頷く。

 親友のぼやきにサナが笑みを浮かべた。

 

「相変わらずじっとしているのが苦手ですね、サフィ。せっかちというか元気過多というか」

「性に合わないんだよ。悪党を追いかけてるほうが気楽だ」

 

 モリィと同様にだれるサフィアをたしなめるでもなく、QBが淡々と言葉を紡ぐ。

 

「待つのも戦いのうちだ。待ちながら、だが心身を弛緩させるな。適度な緊張状態を保ったまま『急いで』待て――それもまた戦士の仕事だと教えたはずだがな」

「言うは易く行うは難しですよ、マネージャー」

「そーだそーだ」

 

 溜息をつくサフィアに、テーブルにあごを載せて同意するモリィ。

 

「君は腕のいい狩人だと聞いたが、モリィくん」

「待つ狩りは苦手なんだよ・・・師匠にも言われたけどさあ」

 

 くわえたスプーンを仏頂面でぴこぴこと上下させるモリィに、この鉄面皮の男は僅かに苦笑を浮かべた。

 

 

 

 二日目も、三日目も敵は来なかった。

 十日目、指揮所で青い鎧とカレン、"狩人"が顔を付き合わせている。

 

「今日も何も無し・・・か」

 

 青い鎧が腕を組んで"狩人"を見た。

 

「言いにくいのだが、情報分析が間違っていた可能性は?」

「ないとは申しませんが、私も連中の目標は離宮(ここ)だと思いますわ。

 他に狙うべき目標がないんです。

 もちろん軍の駐屯地なり市街なりを攻撃目標にする可能性はありますが、それなら遠距離から砲撃すれば済みます。具現化強化術式(パワードスーツ)を複数用意していたなら、攻撃目標は王宮かアイズナー離宮・・・王宮は今はもぬけの空ですから、離宮で間違いないはずなのです」

「なるほど」

 

 自分の見た事のない、「仕事をする姉」の姿にいささか感心したのも含めて青い鎧(ヒョウエ)が頷く。

 続いて"狩人"もカレンの言葉に頷いた。

 

「うちの分析官たちも同じ結論だ、青い鎧。加えて言うなら私もな。

 具現化強化術式の数を揃えるなら、狙いはここで間違いないはずなんだが」

「一応言うだけは言ってみるが、王族以外の王宮の価値・・・宝物庫に何か古代の遺産でもあるとか、そう言った事はござろうか」

「そいつも考えはしたが、王宮の方からは心当たりがないという答えだった。とぼけているのか、気付いてないのか、本当にないのかはわからないがな」

「お父様に聞いてみましたが、あの反応は嘘はついていませんでしたわね。少なくとも気付いていて隠していると言うことはないでしょう」

 

 "狩人"が再び頷く。

 

「カレン様の表情を読み取る技能は折り紙付きですからな、間違いないでしょう。王族でなければ尋問官として雇いたいところで」

「お父様も国王の割には読みやすいのよね。まあ流石にヒョウエほどではないけど」

 

 肩をすくめるカレンに青い鎧が視線を向ける。

 

「なるほど、怖いお方だ。であればこの兜は御身の前では外せんな」

 

 笑みを含んだ声。もっとも内心は割と忸怩たるものがある。

 

「あら残念。その面頬の下にどんな顔があるのか見てみたかったのですけれど」

「ご寛恕願いたい。あれこれ恨みを買っているのでな」

「名誉の代償ね」

 

 くすくすと笑ってから表情をまじめなものに戻すカレン。

 

「ともかく、このままここを守りきるしかありませんわ。未だに攻めてこない理由は不分明ですが・・・」

「ですな。取りあえずはこのままで行きましょう。おまえさんも頼むぞ、青い鎧」

「無論のこと」

 

 頷いて、青い鎧は姿を消した。

 

 

 

 翌日のアイズナー離宮。

 街区を丸ごと一つ使ったそれは周囲に広く深い堀があり、正面以外ではたとえ魔導甲冑でも攻め入る事は出来ない。

 リアスの「白の甲冑」でも跳び越えるには難しい所だ。

 

 それでもその周囲は住人以外通行止めにされ、壁術師たちを動員した臨時の陣地や掩体壕が造られて王国軍の精鋭がずらりと固めている。

 通常の槍兵や弓兵に加えて、離宮の中庭には魔導兵器部隊、正面には数百の魔導化歩兵・・・具現化術式を装着した精鋭兵士達が配備されていた。

 

 小国ならこの戦力だけで蹂躙どころか消滅させられる圧倒的な戦力。

 大陸の二大国家の面目躍如たる陣容だった。

 

「空を飛ばれたり水面を歩ける場合はどうするんだよ? 確か『翼の戦い』でも空飛ぶ敵がいくらか出て来てたろ?」

「アイズナー離宮には極めて強固な魔導防衛機構があります。魔導甲冑程度では到底破れないはずですよ」

 

 ヒョウエたちとサフィアは、他の上位冒険者たちと一緒に離宮の一角にしつらえられた大天幕で待機していた。

 天幕の中には長椅子や卓、仮眠用のスペースもあり、冒険者ギルドの職員たちが香草茶などを給仕している。

 現在のディテクには金等級の冒険者はいない。

 上から二番目の階梯である黒等級の(パーティ)が二組、緑等級が数十人ほど。

 時折ヒョウエたちにぶしつけな視線を送るものもいるが、さすがに上位冒険者だけあって絡んでくるようなガラの悪い連中はいなかった。

 

「まあ緑等級黒等級ともなれば、実力と同じくらい人品も評価の対象になりますからね。いくら強くても信用がなければギルドとしては重要な仕事を任せるわけにはいきません」

「周囲からこう、じろじろ見られるのは落ち着きませんわね・・・」

「僕たちは実力の割にギルドに優遇されていると見られてますからね。まあやっかみの対象になるのは避けられないでしょう」

 

 やれやれ、と溜息をつくリアスとヒョウエ。

 

(・・・単に目立ってるだけじゃねえか?)

(まあそれは・・・)

 

 ひそひそと会話するモリィとカスミ。

 派手な大魔術師の格好をした美少女のような術師と、明らかに古代遺物である魔導甲冑を身にまとった女サムライ。上位冒険者には派手な格好、あるいは高価な装備を身につけているものも多いが、この二人はその中でも際だっていた。

 メイド姿のカスミもかなり目立っているのだが、こちらは自覚があるようで身を縮こまらせている。

 

「まあ目立つのは悪い事じゃないさ。有名は無名に勝るし、時には悪名ですら有名に勝る」

 

 うんうんと頷くサフィア。

 そう言う彼女も羽根飾りの付いた帽子に派手な胴着、鮮やかなマントと非常に目を引く格好で、十分「カブキモノ」に分類されるレベルだ。

 

「"犯罪と戦うもの(クライムファイター)"でその格好は目立ちすぎませんの?」

「そう言う欠点もあるけどね。やっぱりまずは覚えてもらう事と、後は抑止力としての意味もある――まあマネージャーの受け売りだけど」

「なるほど・・・」

 

 リアスが頷こうとしたところで、震動が空気を震わせた。

 

「!」

 

 その場にいた全員が一瞬にして戦闘態勢に入り、天幕の外に飛び出す。

 

「・・・・・・・・・!」

 

 全員が空を見上げる。

 メットーの空に浮かぶ銀の円盤と、その上空に浮かぶ巨大な人の幻像。

 鋼鉄のトサカのついた鉄兜を被り、髑髏を模した仮面を着け、甲冑と軍隊の礼装をまとった男の上半身。

 五十年前の再現。甦った悪夢。

 "復古軍(レスタウラツィオン)"首領「髑髏王(トーテンコプフ)」がそこにいた。

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