毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-25 ちょっとした余興

髑髏王(トーテンコプフ)!?」

「本物か?」

「ありえん! "白の翼(ヴァイスフリューゲル)"と一緒に死んだはずだ!」

 

 ざわめく人々を見下ろし、髑髏面の怪人が言葉を発する。錆び付いた扉の軋みのようなそれは、王都全ての人々の耳に届いた。

 

『あえて久しぶりと言わせて貰おう、メットーの諸君。五十年ぶりだが相も変わらず下等な生物がうじゃうじゃと群れていて、実に気色が悪いな。まるで河原の石をひっくり返したようだ』

「ほざけ!」

「何様のつもりだ!」

「●●の××野郎が!」

 

 冒険者たちの罵り声。

 中には聞くに耐えない罵声もある。

 それらをあざ笑うかのように髑髏王の言葉は続く。

 

『五十年前、我々は敗北した。それは素直に認めよう。だがお前達は我々を倒すことは出来なかった。一時的に撤退させたに過ぎない』

「よくもまあ大口を叩くものですな。鼻たれ小僧がしわくちゃの老人になるほどの時間が経ったというのに」

 

 離宮の中庭では、王国宰相ワイリー侯が静かに、しかし強い意志を秘めた目で幻像を見上げた。

 その隣ではヒョウエの父親、王弟ジョエリー大公が力強く頷く。

 

『五十年前の戦いではあの金等級冒険者の小僧、"白の翼(ヴァイスフリューゲル)"にしてやられた。だが奴も結局は無駄死にだったと言うことだ』

「・・・・・・・・・・・・」

 

 "狩人"の表情は変わらない。

 仮面に隠れたその表情は、カレンですら読み解けない。

 ただその背中から、隠し切れない怒りの気配がにじみ出ていた。

 

『ともあれ昔は昔だ。今のディテクに金等級冒険者はおらぬ』

「馬鹿め!」

「青い鎧を忘れてるぞ!」

「青い鎧なら空中要塞も一発だぜ!」

 

 あざけりの笑いが響く。

 中庭に集まっていた国王を始めとする各国要人たち、特使の一人がマイアに視線を向ける。

 

「マイア陛下、『青い鎧』というのは?」

「そうですな・・・ディテク最強の『ヒーロー』とでも言っておきましょうか」

 

 ディテク国王の口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

 このときはまだ。

 

『とはいえ今は"青い鎧"なる羽虫がこの国を飛び回っていると聞く。

 羽虫ながら厄介な奴だともな。そこでちょっとした余興を用意した』

 

 幻像が切り替わった。

 

「???」

「石・・・か?」

 

 星空を背景とした巨大な岩の映像。

 極めて巨大で精細な映像だ。

 

『この映像は先ほどこの惑星の静止軌道上から捉えたものだ。この石・・・おまえたちにわかるように言えば流れ星の直径はおおよそ1kmほど。このまま行けばコースト市の近辺に落着する』

「?」

「何を言っているんだ・・・?」

「――――!」

 

 ざわめく人々。

 そのほとんどは髑髏王が何を言っているのか、わかっていない。

 その中でただ一人、ヒョウエだけが顔色を変えた。

 

『愚昧で無知な貴様らにわかりやすく言ってやろう。このままではコースト市とその周辺は消滅する。

 壊滅ではない。天より降り注ぐ鉄槌によって跡形もなく消滅するのだ。

 さあ、青い鎧よ。この天の怒りを止めることが出来るかな、フ、フハハハハハ・・・!』

 

 幻像が消えた。銀の円盤――空中要塞もまた。

 周囲がざわめく中、ヒョウエが杖にまたがる。

 三人娘が無言で視線を向け、振り向いたサフィアがいぶかしげに首をかしげた。

 

「ヒョウエくん?」

「リーザから声が届きました。郊外の森にゴブリンの大群が集結してるようです」

「! 今の流れ星云々は陽動か!」

「わかりません。取りあえずそちらに行って対処します。ゴブリンなら、時間はかかりますが僕一人でどうにかなるでしょう」

「・・・大丈夫かい?」

 

 ゴブリン云々はもちろん嘘であるが、眉を寄せるサフィアにヒョウエが軽くウィンクをしてみせる。

 "探偵"の仮面をかぶっていないとは言え、この勘の鋭いクライムファイターを誤魔化すには、これくらいの芝居は必要だ。

 

「巻き添えが怖いので、今回に限ってはむしろ僕一人のほうが適してますよ。

 モリィ、リアス、カスミ、後をお願いします。サフィアさんもお気をつけて」

「おう」

「お任せ下さいまし」

「わかりました」

「無事に戻ってきたまえよ、ヒョウエくん。サナに嫌な報告をしたくない」

「そちらこそ。サナ姉にサフィアさんの訃報を伝えるのはまっぴら御免です」

 

 笑みを交わす。

 

「では失礼」

「武運を祈るよ」

 

 次の瞬間杖にまたがったヒョウエが北の方に飛び去り、あっという間に見えなくなった。

 

 

 

 離宮の臨時指揮所。バルコニーに青い鎧が舞い降りた。

 

「青い鎧!」

「今の話は本当なんですの?」

 

 こちらを認めて歩み寄ってくるカレンと"狩人"に頷いてみせる。

 

「残念ながら本当にござる。こちらでも確認し申した」

 

 ヒョウエは青い鎧をまとった後、一旦地上数百キロまで上昇して、"隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"の超魔力を目に集中させて得た超視覚で隕石を探した。

 ハッタリであればいいと思っていたが、隕石は実在した。

 さすがに正確なコースまでは計算できないが、このままでは間違いなくディテク周辺に落下する。どうにかしなければならなかった。

 

「天から巨石が降ってくることなど有り得るのか、青い鎧」

「古い文献でそうした事があった、というのは読んだことがあるわ、"狩人"。青い鎧も肯定している以上、疑う余地は無いわね」

「しかり。真なる魔法文明の時代であれば、そうした天の彼方からの飛来物を監視する魔道具もあったやもしれぬ。古代の魔道具を多数保有するレスタラであれば、そうした魔道具を手元に置いていても不思議ではない・・・といったところか。

 恐らくはこの大地の遥か天空にそうした"生きた"魔道具が浮いていて、それに接触する手段を確保していると言ったところであろうが」

 

 カレンが唇を噛む。

 

「でもこれで合点がいったわ。恐らくこのタイミングで仕掛けてきたのはあの流れ星が落ちてくるのに合わせて。ひょっとしたらこの外交会談すら関係なかったかも知れない」

「! なるほど」

 

 青い鎧が頷く。

 "狩人"が青い鎧に視線。その目からは既に怒りも動揺も読み取れない。

 

「それで青い鎧。あれを何とかできるのか?」

「恐らくは。ただ、どれだけ早く戻ってこれるかは保証いたしかねる」

 

 カレンが扇を開き、ぱちんと閉じた。

 

「構いませんわ。50年前はあなた抜きでも勝てましてよ。

 あのような亡霊ごときにディテクは負けませんわ。どうぞ義務を果たしていらして下さいな」

 

 艶やかな笑みと男前な啖呵。

 青い鎧の兜の下で微笑む気配がした。

 

「それではお言葉に甘えさせて頂こう。しからば御免」

 

 青い鎧が身を翻す。

 次の瞬間、その姿は空の彼方に消えた。

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