毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
『今度こそメットーを焼き尽くしてくれる・・・戦闘準備! ウジ虫どもを撃滅する! 全艦・・・』
司令室で髑髏の仮面をかぶった巨漢が手を上げた。
「全部隊に伝えろ! 安全装置解除! 全ての装備の使用を許可する! 総員・・・」
離宮の指揮所。カレンが椅子に座り、彼方の空中要塞を睨む。
そのかたわらで"狩人"が手を同様に振り上げる。
『「攻撃開始っ!」』
両者の手が同時に振り下ろされ、一瞬遅れて空中要塞と離宮周辺から魔力光が閃いた。
空中要塞の魔導砲と、離宮の魔導砲が魔力の光芒を吐き出し、叩き付け合う。
空中要塞はその装甲で、離宮の魔導砲は防御力場で守られ、互いに有効打は出せていない。
巻き添えを食らい、市街地にも被害が出ている。
離宮の防御力場に頼れない外部の部隊はあるいは自前で力場を展開し、あるいはあらかじめ構築しておいた遮蔽物や大盾によって凌ぐ。
空中要塞の後方の装甲が一部展開した。
そこからパラパラと花びらのようにばらまかれたものがある。
「敵強化具現化術式確認!」
パラシュートを開いてタンポポの綿毛のように降りてくるそれらは、しかし一騎当千の能力を持つ兵器。
五十、百、二百・・・要塞は際限なく魔導兵士を吐き出す。
「撃て撃て撃て! 地上に降りてくる前に少しでも数を減らせ!」
「空中騎士団、動かせないか! 連中が空中で身動きが取れない間に数を減らすんだ!」
「馬鹿言え! こんな状況で上がれるか!」
悲鳴と怒号、爆音が交差する。
降ってくる魔力光と、逆に空に向けて駆け上がる魔力光。
その交差する空間は破壊の光芒の豪雨。
まともな神経で突入できる場所ではない。
具現化強化術式が接地する。足のアブソーバーが展開し、膝を大きく折って着地の衝撃を和らげた。
多少撃ち減らされながらも大半の魔導化歩兵は着陸に成功し、突撃を開始する。
「
「いにしえの理想社会の復興を!」
叫びながら実弾式魔導銃を発射し、高速で突撃してくる。
離宮の正面陸橋を守る部隊から、お返しとばかりに同様の魔導銃や魔力強化を施された矢が放たれ、この世界ではまず見る事のできない壮絶な銃撃戦が展開される。
防御力場の範囲外ではあるものの掩体壕や陣地によってある程度被害を防げる王国側と違い、突撃してくる復古軍側には適当な遮蔽物がない。
家屋に侵入して攻撃を行おうとしたものもいたが、"狩人"が言ったように魔導砲部隊の一部が動き、家屋ごと吹き飛ばされた。
それでも狂ったように突撃してくるレスタラ兵に押され、王国側にもかなりの被害が出つつある。
それらを少し離れた家屋の中に潜んで見ている者達がいる。
三人娘やサフィアたちを含む召集された上位冒険者たちだ。
「うわ、派手だねえ・・・」
「俺らあそこに突入させられるの?」
「安心しろ、今はまだだ。冒険者は攻撃力は高いが防御力が心許ない。投入は互いに消耗してからだ」
小型の望遠鏡で戦況を確認しながら説明するのはQB。背中には
紆余曲折を経て、彼はこの場の冒険者たちの臨時指揮官に任命されていた。
「もっとも、俺のやることは突入と撤退のタイミングを指示することだけだ。
細かい戦術はそれぞれの
「わかってるじゃないか、兄さん」
ニヤリと笑ってQBの肩を叩いたのはこの中でも二箱しかいない、黒箱のリーダー。
大剣を背負った快活そうな角刈りの大男だ。
「寄せ集めの集団に戦術だの何だの言ったところで対応できるわけでもあるまい。
それが出来るなら軍隊の訓練など必要ない――ただ、突入と撤退の指示にだけは従ってくれ。
これは戦争だ。通常の冒険者稼業とは違う。勝手な行動が全体の敗北に繋がることもあるんだ。命令に反したら最悪反逆罪に問われることも覚悟しておいて欲しい」
淡々と、しかし厳しい目で周囲を見渡すQB。
なにせ自由人である冒険者のこと、反発するような目もあったが、口に出してそれを言うものはいない。
先ほどの大男が表情をまじめなものに変えて頷いた。
「QBさんよ、俺たちもその程度はわかってるさ。これが本当にヤバい状況だってことがな。だったら、多少の我慢はしようって気になるもんだ」
「我慢か。まあそれでいいさ」
QBが僅かに苦笑の色を浮かべる。
大男も表情を穏やかなものに戻して、ちらりとモリィ達のほうを見た。
「しかし・・・おたくら"毎日戦隊エブリンガー"だよな?」
尋ねられたモリィがげんなりした顔になる。
「好き好んで名乗ってるわけじゃねえけどな・・・なんだよ?」
「いや、"六虎亭の
「? ヒョウエを知ってんのか?」
「まあ前にちょっと戦ってるのを見たことがあってな。あいつがいたら随分と頼もしいんだが・・・」
「あー。なんだっけ、郊外にゴブリンの大群が出て来たんでそっちの対応に飛んでったよ」
先ほどのヒョウエの言い訳を思い出しつつモリィが説明すると、大男は溜息をついた。
「なんてこった。タイミングの悪い・・・いや、これもレスタラ野郎どもの仕組んだことなのか?」
「50年前のレスタラ戦役では古代の魔道具でゴブリンの群れを操ったこともあったそうですから、恐らくは」
ジェット・・・"狩人"の記憶の中で読み取った事を思いだし、リアスが答える。
「かーっ! いやらしい真似しやがって! 高貴な血筋が聞いて呆れらあ!」
頭をかき回しながら大男がぼやく。
それには応えず、モリィが空を見上げようとして、ふと気付いた。
「あれ? サフィア姐さんどうしたんだ?」
「あら?」
「いらっしゃいません・・・ね?」
三人娘がきょろきょろと周囲を見渡す。
派手な格好のクライムファイターは、いつの間にか姿を消していた。
壮絶な戦いは続く。
戦力自体はほぼ拮抗しているが、王国軍にはあらかじめ構築しておいた陣地がある。
しかし空中要塞の砲撃も離宮の魔導砲から陣地のほうに集中し、その利点も相殺されつつあった。動員された壁術師部隊が即座に修復を図るが、それでも押されつつある。
指揮所でその様子を見てとって、カレンが"狩人"を見上げた。
「"狩人"。そろそろではなくて?」
「はい。ですがあの砲撃が飛び交う中では・・・」
同様に空を見上げる"狩人"。
その表情は厳しい。
「あそこまでとは思わなかったわね。折角金を注ぎ込んで空中戦力を揃えて来たと言うのに」
「それについては反省しきりです。50年前の空中要塞はあれほどではなかった。とは言えこのままでは・・・っ!?」
"狩人"が素早く振り向いた。
どこから取り出したのか、50センチほどの短剣を抜いている。
視線の先には何の変哲もない伝令兵。
だが、その顔に"狩人"は見覚えがない。
素早く立ち上がり、"狩人"の後ろに下がったカレンが温度の下がった視線で闖入者を貫く。
「あなたは? レスタラの刺客かしら?」
「いえ、違います殿下・・・何をしに来た? QBの差し金か?」
伝令兵が口元に笑みを浮かべ、兜を脱ぐ。
右手の人差し指で額をなぞり、顔をもみほぐす。
「・・・!」
「お初にお目に掛かります、カレン殿下。ボクは緑等級冒険者、サフィア・ヴァーサイル。『白百合の騎士』とご記憶下さい」
ふぁさり、と広がる肩マント。
いつの間にか姿形を変えた元伝令兵、銀髪のクライムファイターが帽子を胸に当て、完璧な作法で一礼した。