毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-29 SKY-HIGH

「当てなくてもいい! 上に向かって撃ちまくれ! あの馬鹿を死なせるな!」

『サー、イエッサー!』

 

 "狩人"が通信用の魔道具に叫んでいる。

 カレンはただじっと地上から天空に駆け上がる銀の流星を凝視している。

 地上の戦闘はいよいよ激しい。

 

 

 

 一瞬だったようにも思えるし、一生ほどの長さだったようにも思える。

 高速化した視界の中で光芒が交錯する。

 地上の魔導砲から撃ち上げられた魔力光がすーっと、低空飛行するツバメくらいの速度で脇を通り抜けていくのがわかった。

 

 正直なところ魔力砲火の密度自体はそこまで大した事はない。

 あくまで要塞や戦艦同士の大口径砲の撃ち合いであり、人間や高速飛行物体相手の対空砲火ではないからだ。

 それでも大砲同士の撃ち合いであることに変わりはない。

 直撃どころか、かすっただけでも死ぬ。

 「銀の翼」の制御と空中要塞の砲塔だけに全神経を割り振り、サフィアは飛ぶ。

 

(来たっ)

 

 砲塔が動いた。

 翼をごく僅かにひねり、スピードを落とさないまま軌道を変える。

 次の瞬間、魔力砲撃の光芒がたった今までいた場所を通り過ぎていく。

 空中要塞の全ての砲門を常時観察し、自分の方に向いたと思った瞬間に回避機動を取る。

 地上と空中要塞の中間点に達するまで、それで三回の砲撃をかわした。

 

 そこで空中要塞の砲手たちはサフィアの存在に気付いたようだった。

 複数の砲台がサフィアの方を向き、砲口が魔力光を帯び始める。

 中には砲撃ではなく対空砲火用の小型砲台もあった。

 

「ひえっ!」

 

 軽く悲鳴を上げてランダム軌道を取る。

 複数の魔力光がサフィアを狙って放たれる。

 いくつかは至近弾になり、「銀の翼」の力場障壁を点滅させる。

 対空砲火の小規模な魔力弾がいくつか直撃し、力場の上からサフィアを揺らした。

 

 再現したとは言え所詮はデッドコピー、あらゆる面で"白の翼(ヴァイスフリューゲル)"の使っていたオリジナルには及ばない。

 魔力砲撃の余波だけでも連続して受ければ機能停止に陥りかねなかった。

 

「南無三!」

 

 全力で回避機動を取りつつ、それでも可能な限りの速度で接近を試みる。

 長いようで短い、無限の一瞬。

 十数本の火線をかわしきり、空中要塞の表面に肉薄する。

 接近してしまえば、もう砲台はサフィアを撃てない。

 

「こう・・・」

 

 かつての"白の翼"のように自分を覆うように翼を閉じ、力場障壁の密度を上げる。

 銃弾のような尖った形の先端に障壁を集中させつつ、サフィアは凄まじい破砕音と共にメンテナンス用ハッチに突入した。

 

 

 

「あいててて・・・」

 

 警報が鳴っている。

 周囲には破片。

 ゴウゴウと空気が耳元で叫んでいる。

 

 体中の痛みをこらえつつ、サフィアは体を起こした。

 メンテナンス用の狭い通路。

 狂ったように赤いランプが点滅している。

 

 自分の体と「銀の翼」に目立った損傷がないことを確認して、魔道具の翼を畳む。

 翼は玉すだれのようにするするとパーツを重ね合わせ、動きに支障のないサイズまで折りたたまれた。

 

「結構重いけど・・・仕事の後で飛び降りるわけにもいかないしね」

 

 腰に吊したいくつかの魔道具を確認して額を指でなぞる。

 

「"学者(スカラー)"」

 

 拡大された知性と記憶力が、脳の奥底に沈んだ知識を引っ張り出して有機的に結合させる作業を開始する。

 

「"白の翼"の落としたそれとは少し違うみたいだけど、基本的には同じ構造・・・だとしたら動力室はここ、司令室も恐らくここ・・・」

 

 50年前に王室付きの学者たちが推測した内部構造図を思い出しつつ、自分が今いる場所と重要なポイントを重ねていく。

 通路の向こうから多数の人間の靴音が聞こえて来た。

 

「よし! それじゃあ命令を果たすとしようかな」

 

 素早く指で額をなぞると、サフィアは猛然と走り始めた。

 

 

 

 

 空中要塞"黒伯爵(シュバルツ・グラーフ)"の司令室。

 魔法の世界にそぐわないSF的な、宇宙船の艦橋のような場所。

 一段高い司令席にしつらえられた玉座に、鋼鉄の甲冑をまとった巨漢――髑髏王(トーテンコプフ)が座していた。

 

「入り込んだネズミはどうした。まだ始末は付けられんのか」

「そ、それが未だに発見できず・・・センサーにも反応が」

「馬鹿者!」

 

 雷のような声が響いた。

 報告したレスタラ構成員が直立不動で震え上がる。

 

「何故すぐに報告せん! 全艦の障壁を下げろ! 閉じ込めるのだ!

 単身飛び込んできたのだ、姿を隠す手の一つや二つは用意していてもおかしくはなかろうが!

 見つけられずとも、物理的に移動を阻害すれば・・・」

 

 司令室に鈍い震動が走った。

 コンソールのパネルが一斉に赤く点灯し、緊急事態を告げる。

 

「遅かったか。無能どもめ」

 

 苦々しげな口調で髑髏王が吐き捨てる。

 

「と、髑髏王(トーテンコプフ)陛下! エンジンがやられました!

 砲撃を継続すれば数分でエネルギーを使い切って墜落、砲撃を中止しても20分はもちません!」

「むう・・・」

 

 髑髏王がわずかに考え込む。

 命令を下そうとしたところで、司令室の扉が音もなく左右に開いた。

 

「伝令か・・・うん?」

 

 扉の左右に立っていた兵士がいぶかしげな顔になる。

 扉の外には誰もいなかった。

 その場に立っていた兵士より早く、髑髏王が叫ぶ。

 

「馬鹿者! 敵だ!」

 

 きょとんとした顔で振り返る兵士達の間に、突然サフィアの姿が現れた。

 その手には既に剣。

 

「ぎゃっ!」

「ぐわっ!?」

 

 肩と太ももを刺され、信じられないと言った顔で兵士達が倒れた。

 司令室にいたオペレーターたちが騒然と立ち上がる中、悠然と玉座から彼女を見下ろす髑髏王。

 一振りして血のしずくを払い、レイピアの切っ先を髑髏王に向ける。

 

「我が名はサフィア・ヴァーサイル! ディテク王国緑等級冒険者にして"犯罪と戦うもの(クライムファイター)"! 人呼んで『白百合の騎士』! 髑髏王、お前の野望もここまでだ!」

 

 凜とした声。

 オペレーターたちが気圧されて身をこわばらせる。

 その声にまるで動じることもなく。

 鋼鉄の甲冑をまとった巨漢が玉座から身を起こした。

 

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