毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「もう諦めて降伏しろ! 艦内の手下はほとんど無力化した! 今頃は隔壁に閉じ込められて右往左往しているだろうさ!」
降伏勧告をするサフィアに一瞥をくれた後、
「砲撃は使用エネルギーを半分にして継続。その後脱出準備をせよ。脱出後自動操縦で離宮にぶつけるようにセット。
ヒーローを名乗る小娘はこのわしが自ら誅戮してくれよう」
「は・・・ハッ!」
「・・・!」
ゆっくりと階段を下りる髑髏王。
怒りの色を強めるサフィアの視線を、正面から見返す。
「降伏しろと言ったのが聞こえなかったか? 随分耳が遠いんだな。まあ本物ならよぼよぼの老人だし、しょうがないか」
「そう言うセリフは私を倒してから言う事だ。このまま行けば地上のお前の仲間が全滅するのも遠い事ではあるまい?」
ちらりとモニターに視線を動かす。
映像の中では、王国軍とレスタラの兵が互いに火力を叩き付け合い、壮絶な殲滅戦を演じていた。
簡易ながら遮蔽に籠もり、さらに並の板金鎧を越える防御力を持つ
レスタラの兵達にもかなりの損害が出ていたが、装備の質と狂信的な士気の高さが攻撃側である不利を補っている。
だがそれでも、白百合の騎士は胸を張る。
「そうはさせない! ボクがここでお前を倒し、捕縛する! 地上部隊も救う!」
「くっ・・・はは、ははははは!」
髑髏王が失笑し、それが哄笑に変わる。
「捕縛! はは、捕縛か! 甘い事だ。それが下等な人間の限界だな。
感情などと言う物に振り回されるから、甘さを露呈する!」
「たわごとを!」
「事実だ! 青い鎧は間に合わない! お前達はここで全滅する! それが全てだ!」
「そんな事はない! ボク達は生き残るし、青い鎧はきっと間に合う! 何故なら・・・あの人は本物のヒーローだからだ!」
「ははは! ははははははは!」
再びの髑髏王の哄笑。階段を下りきってフロアに立つ。
「よかろう! ならばその幻想にすがりながら死んでゆけ!」
「幻想かどうかはすぐに分かるっ!」
腰に差した剣を抜くこともなく、髑髏王が拳を構える。
同時にサフィアが駆け出した。
火花が散る。
短く軽い金属音が連続する。
「ふははははは、軽い、軽いなあ。貴様の意地はその程度のものか、小娘!」
「くっ」
サフィアが飛びすさる。
両者はひとしきり、最初の攻防を終えていた。
素手の髑髏王とレイピアを構えたサフィア。
2mに届こうかという巨体ではあるが、それでもリーチはサフィアの方が長い。先手は彼女が取った。
髑髏王は古風な、古代王国風の全身甲冑。
ウィナー伯爵の装着していた『
それでも関節部分は金属板ではなく、自由に変形する樹脂状のもので覆われている。
(そこをっ!)
閃光のような
髑髏王も鈍くはないが、緑等級、しかも"剣士"の
「!?」
しかし一瞬後、サフィアの表情が驚愕に彩られる。
ほとんど同時に振るわれた丸太のような腕をかわして、別の箇所を連続攻撃。
火花が散る。
短く軽い金属音が連続する。
攻撃はいずれも弾かれていた。
軽い細剣とは言え、魔法強化の施された業物であるのにだ。
「ふははははは!」
暴風のように腕を振り回す髑髏王。当たれば一撃でKO、下手をすれば頭が吹っ飛ぶだろうことを確信させる、轟々という風切り音。
連続攻撃を何とかかわしてサフィアが飛びすさる。
間合いを外して、仕切り直しだ。
「隔壁開け!」
「総員脱出準備!」
「予備エンジン回せ! 焼き付いても構わん! 十分もてばいい!」
コンソールを操作する機械音と命令を伝達する声が響く。
半身でレイピアを構えるサフィアと、
「・・・」
「・・・」
「!」
「っ!」
今度動いたのは髑髏王の方だった。
重い全身甲冑を身につけているとは思えない速さ。
単純に速度だけなら恐らくはサフィアを上回る。
(やはり具現化強化術式の類か・・・っ!?)
空気を引き裂く嵐のようなコンビネーションブロウ。
それを紙一重でかわし、時にはカウンターの
反撃は――仮面の目を狙ってさえ――やはり火花を散らすだけだったが、それでもわかったことがある。
(こいつ、技量はそこまでじゃない!)
敏捷性・速度自体は間違いなくサフィアより上だ。
だがサフィアに比べれば動きに無駄が多い。その速度を最大限に生かし切れていない。
回避し続けるのはたやすいとは言わないでも出来ないことではなかった。
だが。
「この、ちょこまかと!」
「鬼さんこちら、ここまでおいで!」
冷や汗を一筋垂らしながらも、ひらりひらりとかわし続けるサフィア。
「遅い、遅いね! 拳にハエが・・・」
「死ねっ!」
「っ!」
怒りが速度を倍加させたか、今までで一番鋭い一撃が来た。
それでもかすっただけでかわす・・・が、凄まじい破砕音が響いた。
「・・・化け物かい、キミは。いや、その拳か腕輪かな?」
髑髏王から少し意外そうな気配が放たれた。
「ほう。存外鋭い目をしている。まあ一人で乗り込んできただけはあると褒めておこうか。
その通り、これは真なる魔法文明の遺産よ。それを受け継いだ我らが貴様ら如き下等人種に負けるわけがないのだ」
壁から拳を引き抜いて、髑髏王が振り向く。
拳の打撃痕を中心として崩れ落ちた壁には、2m近いクレーターが出来ていた。
嵐のような髑髏王の連続攻撃。
サフィアの剣では自分の防御を貫けないと理解した髑髏王は防御を度外視して、捨て身の攻撃を打ち込んでくる。
その嵐のような攻撃をひたすらかわす。
(ここは耐える・・・耐えて、好機を待つ!)
高速の、絶え間ない連続攻撃。
動きは鈍らず、疲労も感じさせない。
それでも待つ。
何度かまぐれ当たりが体をかすめる。
そのたびに体に走る電流。
冷や汗を滝のように流しつつ、それでも待つ。
「ふはははは! 気の利いた反撃もできんか、小娘!」
「(・・・まだだ!)」
更に数合の攻防。
苛立ったのか、僅かに大振りになる拳。
髪の毛一本ほどのチャンス。
「ぬっ?!」
剣を捨て、懐に飛び込んだ。
こめかみを髑髏王のガントレットがかすり、僅かに血が飛び散る。
腕を取る。
腰で相手を背負う。
足を払う。
その三動作を同時に、完璧にタイミングを同期させて力の流れを操作する。
「ぬおおおおおおおおっ!?」
髑髏王の巨体が反転した。
山嵐。
小兵が巨漢を投げる技。
伝説的な柔道の達人・西郷四郎が得意とし「西郷の前に山嵐なく、西郷の後に山嵐なし」とまで言わしめた必殺技。
サフィアの山嵐も西郷のつま先程度には届いたであろうか。
真っ逆さまに落ちた髑髏王の頭部が樹脂状の床に突き刺さり、先ほどの壁に勝るとも劣らない破砕音が司令室に響いた。