毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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06-32 ヒーローの素質

 王国兵から歓声が沸く。

 元よりサフィアの、「白百合の騎士」の名前は広く市民に知られている。

 それが今、伝説の英雄の如くそこに立っていた。

 

 歓声の中、倒れた『番人(ワーデン)』の向かって左隣にいた同型機が動いた。

 剣を振り上げ、鋭く振り下ろす。

 サフィアの――緑等級冒険者の基準で見ても素早く、鋭い振り。

 だがその剣が石畳を深く切り裂いたとき、既に男装の麗人の姿はそこにはなかった。

 

「――おお!」

「見ろ!」

「あれは・・・!」

 

 銀の翼を広げ、空に舞う美貌の剣士。

 それはまるで、五十年前の戦役の英雄のようで。

 

「白の翼――」

「白の翼!」

 

 翼を広げたサフィアが急降下する。

 巨人は剣を切り上げようとするが間に合わない。

 右肩のあたりをかすめるように、サフィアが飛んだ。

 一瞬の閃き。

 

「・・・!」

 

 遅れて巨人の右腕が、肩からすっぱりと切断されてゆっくりと地上に落ちていく。

 あり得ない光景に王国軍からは歓声が、レスタラの兵達からは驚愕の声が上がる。

 等級が上がるほど身体能力も上昇するとは言え、サフィアは緑等級止まり。

 金等級や「青い鎧」ならいざしらず、細身の女性、それも刺突用のレイピアで巨大魔導甲冑の肩を落とせるわけがない。

 

(本当に凄いなこれは)

 

 その手品の種は、脱出のついでに髑髏王(トーテンコプフ)の身代わり人形から奪ってきた左右一対の腕輪だ。

 拳、ないし武器の表面に力場障壁(フォースフィールド)を形成し、破壊力を大幅に上昇させる古代遺物(アーティファクト)

 力場の刃をまとった細剣は、古代の技術で作られた魔導甲冑であろうとも、関節部であれば一刀両断出来るだけの威力があった。斬撃に向いていなくとも、魔法強化されたレイピアが力場の剣の芯鉄(しんがね)として優秀だったのもある。

 

 一瞬だけ振り向いてそんなことを考えていたために、反応が遅れた。

 

(しまった!)

 

 動いていたのは向かって左側の一体だけではなかった。その更に左にいた一体が、急降下して隣の一体の肩をかすめたサフィアにすくい上げるような一刀。

 オリジナルの「白の翼」ならまだしも、レプリカでは既にかわせないタイミング。

 

(この連携、こいつら髑髏王より技量は高いな)

 

 そんなのんきな考えが脳の片隅をよぎるが、スルーしてそれでも何とか直撃は避けようとする。

 

(片翼は持って行かれるか)

 

 覚悟して衝撃に備えたとき、巨人がぐらりと揺れた。

 片膝を折り、体勢が崩れる。

 それでぶれた剣の軌道をかろうじて回避し、サフィアが舞い上がる。

 その目に映ったのは巨人の左膝の裏、突き刺さる一本の巨大な太矢(クォレル)

 喉元の通信魔道具から、無愛想な、しかし安堵を感じさせる声が聞こえてくる。

 

『良く戻ってきた。だが乱戦では周囲に気を払えと、しつこく言ったはずだがな』

「マネージャー!」

 

 300m程離れた建物の窓にQBの姿があった。手にしているのは2m近い巨大弩(アーバレスト)

 その巨大弩で正確に関節の裏を射貫き、サフィアを救ったのだ。

 またしても歓声が上がる。

 

「白百合の騎士!」

「白の翼!」

「サフィア・ヴァーサイル! 我らがヒーロー!」

 

 先ほどまでひたすら耐えていた王国兵達が、天をつくばかりに気を吐く。

 逆に熱狂的な士気を維持していたレスタラ兵達が、僅かながらうろたえている。

 

「俺達も忘れるなよっ!」

 

 そして新たに戦場に飛び込んできたのは角刈りの大男。身長と同じくらいの大剣を振り下ろし、向かって左端にいた『番人(ワーデン)』の二の腕を半ばまで断ち割る。

 モリィ達と会話していた黒等級パーティのリーダー。恐らくはディテク最強の冒険者の一人。

 その後にパーティメンバーたちも続く。

 

「うおおおおおおおおおおお!」

「おあああああああああああああああああ!」

 

 もちろん彼らだけではない。

 もう一つの黒箱(トップパーティ)、そして緑等級冒険者たち。

 その誰もが吼えている。叫んでいる。武器を掲げ、高らかに雄叫び(ウォークライ)を上げている。

 剣が唸り、斧が猛り、魔法と矢が飛来する。

 支援魔法が(パーティ)の枠を越えてばらまかれ、壁術師たちが新たな障壁を生み出す。

 ナパティの火神の炎が巨人の装甲を融解させ、宝玉から放たれる魔の炎をハッシャの猛烈な風が吹き飛ばす。

 

「・・・馬鹿な!たかが一人が生還しただけでここまで・・・!」

 

 レスタラの前線指揮官が呆然と呟く。

 

「ここまで・・・変わるものなのね。士気というのは」

 

 同じようにどこか呆然としながらカレンが呟いた。

 "狩人"は無言で通信用魔道具を取り出す。繋げる先はかつての部下。

 

「QB」

『はい、閣下』

「あの小娘には・・・サフィア・ヴァーサイルには何かあるのか? 人を奮い立たせるような《加護》か何かが」

『そんなものあるわけないじゃないですか』

 

 即答。一瞬、さすがの"狩人"が鼻白むほどのきっぱりとした断言。

 

『ですが・・・』

「ですが?」

『あいつにはあるんですよ。魔法や《加護》ではないにしろ、それに匹敵するような何かが』

 

 また沈黙。

 "狩人"の視線は戦場に据え付けられたまま。

 空を自在に駆け回る白百合の騎士、そしてそれに率いられるように猛然と反撃する王国軍と冒険者たち。

 

「どうやらそのようだな・・・《加護》とはまた別の、英雄(ヒーロー)の素質ってわけか」

『わかりません。ですが俺はそう言う何かがあいつにはあると思っています』

「・・・」

 

 一瞬"狩人"が目を閉じた。まぶたの裏によぎるのは、昔日の友の面影か。

 その顔に浮かぶのは獰猛な笑み。

 

「まあいい、そのへんは後でゆっくり考えればいいさ」

 

 スイッチを切り替え、通信先を戦場全体に響く広域放送に設定する。

 

「総員に告ぐ! 白百合の騎士は使命を果たして生還した!

 今度は『俺』たちが仕事をこなす番だ! もう一度踏ん張れ、野郎ども!」

 

 口調の変化に目を丸くするカレンを無視して、今だけジェットに戻った"狩人"が通信を終えた。

 

 

 

「YEEEHAAAAAAAAAA!」

「王国万歳! 白百合の騎士万歳! 奴らのケツに真っ赤に焼けた鉄の棒をブチ込んでやれ!」

「ファックしてやるぜ、ベイヴィィィィィ!!」

「ヒャッハー! 射精しそうだぜ!」

「まだイキ足りねぇだろう!? ぶっといイチモツをブチ込んでやるぜぇぇぇぇ!」

 

 先ほどまでのレスタラ兵達にも負けず劣らず、熱狂的に高揚する兵士と冒険者たち。

 サフィアやリアスを始めとして、まともな羞恥心を持つ女性陣が顔を赤らめている。

 

「げ、下品だなぁ、もう!」

『諦めろ。軍隊なんてあんなもんだ』

 

 通信魔道具から、QBの素っ気ない声が響いた。

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