毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
07-01 託されたもの
「UFO撃退の準備はできた!」
――謎の円盤UFO OPナレーション――
メットーに到着する寸前に日が沈み、城門は閉じられた。
ピクピク痙攣する野盗達を城壁の上の守備兵たちに預けると、青い鎧は最寄りの
次の瞬間、屋敷の食堂にヒョウエの姿が現れる。
「ヒョウエくんおつかれ・・・どうしたの、それ?」
「実はかくかくしかじか」
「ふぅん?」
ヒョウエの手の中の、血まみれの文箱に一同が目を落とす。
我々の世界で言えばタブレットほどの大きさの金属製の箱だ。
精緻な彫刻と象嵌が施されており、箱自体かなり高価なものとわかる。
調べてみなければわからないが、何らかの魔力も付与されているようだ。
当然、それを使うのもかなり身分の高い人間だろう。
川の流れと川端に咲く花をかたどった装飾と、箱を閉じる紐に施された封蝋の紋章を見ながら、ヒョウエが首をかしげた。
「この装飾はゲマイっぽいですね。でも封蝋を使うと言うことはディテクかライタイムかな・・・?」
「ゲマイのリムジー家だと思いますわ」
「!?」
視線がリアスに集中した。
「この
リムジー家はゲマイを建国した八つの名家――『創世八家』の一角ですが、八家の中では比較的外との交流が多いせいか、封蝋を使うこともあるそうです」
「なるほど・・・よく知ってましたね。凄いですよリアス」
「ええまあ」
ヒョウエの驚きと尊敬の視線にリアスがはにかむ。
もっとも、それも次のモリィの言葉を聞くまでだったが。
「マジすげえな。リアスのくせに」
「何ですって?!」
「ちょ、落ち着け! 褒めたんじゃねえかよ!?」
「ほめ言葉ではありませんわ!」
「お嬢様、落ち着いて下さい!」
そのまま取っ組み合いというか、一方的な蹂躙が始まるのをカスミが必死に止めようとする。
(まあ家紋は言ってみれば敵味方識別コードですからね・・・本当に戦いに関する事だけは凄いなあ)
恐らくは戦場で必須の知識として叩き込まれたのだろう。
とは言え普通は専門の紋章官という役職が置かれるほど煩雑なのが貴族の紋章というものである。
それを外国のものまで一目で見分ける知識の広さと深さは十分尊敬されてしかるべきことだが・・・
「まあ日頃の行いですねえ」
「ヒョウエ様! それは余りにひどうございますわ!」
ショックを受けた顔でリアスが振り向く。
戦場の知識は砂が水を吸うように我がものとするのに、なぜ貴族として必須の教養は石畳のように表面を流れ落ちていくのだろう、という感想は流石に口には出さなかった。
顔をわしづかみにされたモリィがイソギンチャクのように痙攣している。
サナは礼儀正しく何も言わない。
リアスを止めようとしていたリーザとカスミが、目を見合わせて同時に溜息をついた。
しばし後、何とか事態を落ち着かせて全員が再び席に着く。
頭蓋骨を握りつぶされかけたモリィはテーブルの上に突っ伏して動かない。
真剣な表情で手元の文箱を凝視するヒョウエ。
「・・・」
しばしの沈黙の後、リーザが問いかけた。
「どうしたの、ヒョウエくん?」
「リアスの言う通り、この箱がリムジー家のものだとしたら腑に落ちないことが一つ――今ディテクに来ているゲマイの代表はファーレン家の当主です。
リムジー家の人間ではない」
「!」
沈黙が落ちた。
今明かされた事実がなにを意味するか、それぞれに考えている。
「ファーレン家・・・『創世八家』の一つで、筆頭格でしたわね」
「はい。当然、現在の魔導君主の一人でもあります」
ゲマイは大陸全土を見渡しても唯一と言われる魔導共和制国家だ。
術師が支配階級であり、その頂点に君臨するのが八人の魔導君主だ。
概ね創世八家の当主がその地位につくが、術師としての実力や政治的判断によってはそれ以外の人間がその座につくこともある。
術師と平民の区分けは絶対的なものであるが、面白いのは支配階級である術師たちの特権が「政治に携われること」と「敬意を払われること」のみであり、少なくとも法律の上では術師と平民の扱いに差がないことだ。
術力を持っていれば親が平民でも支配階級の一員になれるし、逆もまた然り。
術師が犯罪を犯したときと平民が犯罪を犯したときも扱いに差はないし、犯人が平民で被害者が術師であるからと言って、犯人の罪が重くなったりはしない。
民事訴訟で術師と平民が争うときでも、少なくとも裁判官の扱いには全く差がない――まあ、腕のいい弁護士を雇えるかどうかで財力の違いが出る事はあるが。
「そういう意味で一度行ってみたい国ではあるんですが、割と閉鎖的なところですからねえ」
「ヒョウエ様があの国に生まれていたら、魔導君主の座は間違いないところでしょうね。何でしたら"
笑みを浮かべたサナが珍しく冗談を飛ばす。魔導上王はゲマイで稀に置かれる、八人の魔導君主をも従える絶対的支配者のことだ。よほどの魔力がなければ任じられる地位ではない。
果たしてヒョウエが渋い顔になった。
「嫌ですよ、王様なんて。面倒くさいだけで何もいいことありゃしません」
「まあヒョウエくんならそう言うよね」
くすくすとリーザが笑う。つられてリアスとカスミも笑み。
更にヒョウエが渋い顔になった。
「まあそれはさておき」
表情を真剣なものに戻す。
「ファーレンは創世八家の筆頭格ですが、リムジーもそれに次ぐ勢力を誇る家です。まあ特殊な家もありますが・・・概ねゲマイのナンバー1とナンバー2と言っていいでしょう。
となると色々想像してしまいますよねえ。実は内部は一枚板ではなくて、協定賛成派と反対派がいるとか、交渉代表の座を巡って暗闘があったとか、単に権力争いの一貫であるとか」
「えぇ・・・。国の代表なんだから、みんな納得してるんじゃないの・・・?」
「人間が三人集まれば派閥が出来る、なんて言葉もありますからね。ディテクだって伯父上やフィル爺、父上が比較的うまくやってますから目立たないだけで、やっぱりあれこれの派閥はありますよ。
それをまとめなきゃならないのが国王というものです」
「なるほどなあ。そりゃお前じゃなくてもなりたくねえわな、そんなもん」
ようやく体力を回復したモリィがこめかみをさすりながら上体を起こす。
「あら、復活されたんですのね」
「あたしの頭をトマトみてーに握りつぶそうとした奴のセリフかっ!
このゴリラ女がっ!」
「一万歩譲って気心知れたと言って差し上げてもいい程度の仲ではありますが、それでも言っていいことと悪いことがありましてよ!」
またつかみ合いになりそうな二人の頭を、ヒョウエが杖で軽く叩く。
「あいてっ!」
「痛い!」
「はいそこまで。人の家で騒がないよーに。
まあこうしていてもしょうがないですね。それでも素直に考えれば国元を任されたナンバー2が、国外のナンバー1に何か急ぎ手紙を送った・・・というところで不自然ではないんですが。
それにしてはあの急使の人の様子が不自然だった気もするんですよねえ」
必死に文箱を取り返そうとしていた様子や、青い鎧と知って文箱を託そうとしていた様子を思い出す。
「単に代表団に届けて欲しいならそう言うと思うんですよね」
「それは・・・確かにそうなりますね」
カスミが考え込む。
サナが言葉を継いだ。
「そうなると中を見なくてはなりませんが・・・ヒョウエ様なら封蝋を割っても修復できるのでは?」
「あ、なるほど」
それは気付かなかった、とモリィが感心顔になる。
「やっぱ便利だな修理の魔法。手紙でも何でも中を覗きほうだいじゃねえか」
「まあそうですけど今回は使いませんよ」
「どうしてだよ?」
「・・・」
ヒョウエが少し呆れ顔になるが、考えてみれば術師でない人間にはあの時何をやっていたかわからないか、と考え直す。
「前回の事件で、迷宮の中のレスタラのアジトを探してたでしょう」
「ああ、大工のトンカチ使ってたな」
「
透視と言っても初歩の術であるから、目の前の壁を抜けてその先の光景が見えるわけではない。
あくまで自身から2mの範囲内のものを壁を抜けて知覚できるだけだ。
(なので壁の近くにいなかった蝙蝠獣人を知覚できなかった)
「ですが、箱の中を見るだけなら十分というわけですわね」
「です」
リアスの言葉にパチン、と指を鳴らす。
「じゃあちょっと覗いてみます。集中しますので皆さんお静かに」
無言で少女たちが頷き、ヒョウエが文箱の上に手をかざす。
まず発動したのは"
(やっぱり探知阻害系の術・・・それに物質強化と魔法の鍵の呪文も付与されているか。透視系を使って反応する呪文罠は・・・ないかな?)
しばらく魔法的なあれこれを調べてから今度こそ
「ん・・・んんん? これは・・・これは!?」
「ヒョウエくん!?」
「ヒョウエ様!」
「ヒョウエ! おいどうした?!」
口々に名を呼び、彼を案じる少女たち。
それらの言葉も聞こえないかのように、ヒョウエは手をかざしたまま呆然としていた。
ゲマイ→イメージ(コミック)
リムジー→ジム・リー
ファーレン→トッド・マクファーレン
イメージ・コミックはアメコミの準大手出版社、有名どころはスポーンとか。
ジム・リーとトッド・マクファーレンは創立に関わった有名アーティスト(漫画家)です。