毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-02 グルグル回ーる

「おい、大丈夫かよ。どうしたんだ?」

 

 モリィがヒョウエを揺する。

 それでようやく我に返ったようだった。

 

「あ、ええ、すいません。ちょっと自失してました」

「そりゃわかるけどよ、いったい何が? よっぽどヤバいもんでも入ってたのか?」

「やばいというか呆れるというか・・・」

 

 ヒョウエが指を小さく動かすと、文箱の上に平べったい絹の包みが出現した。

 半透明なので幻影とわかる。

 

「これが中身です」

 

 もう一度指を動かすと、包んでいた絹がほどけて広がる。無駄に芸が細かい。

 現れた中身を見て、少女たちが一斉に表情を動かした。

 

「これは・・・! なんだ?」

「えーと・・・?」

「???」

「・・・」

「ヒョウエくん・・・なにこれ?」

 

 困惑するリーザたち。ヒョウエも頭痛をこらえるような表情で、こめかみを揉んでいる。

 

「まあわかりませんよね」

 

 宙に浮いているのは厚さ1センチ、直径10センチ弱ほどのつるっとした円盤。

 よく見れば薄い透明な二枚の円盤の間に、濃い茶色の何かが挟み込まれている。

 

「磁気テープ・・・多分オープンリールテープと呼ばれる、僕の元の世界に存在した記録メディア――まあ本みたいなものです」

 

 宙に浮かぶ円盤を見ながら、ヒョウエが溜息をついた。

 

 

 

「はあ・・・」

 

 ヒョウエがもう一度溜息をついた。

 彼の目の前では謎の円盤・・・オープンリールテープの幻影がゆっくりと回転している。

 

「このサイズだと音声用かな・・・? いや、昔のコンピューターの記録機器もこんな感じだったような・・・」

 

 ヒョウエが頭をひねる。メーカーのロゴでも書いてあれば見当がついたのだろうが、残念ながらテープの円盤(リール)部分には何も書いておらず、手掛かりにできるようなものはなかった。

 

「よくわかりませんが、つまりこれは、転生者の方々が向こうの世界から持ち込んだ品と言うことでしょうか?」

 

 王族かつ転生者であるヒョウエのそばにはべり、その辺の事情に多少は通じているサナが疑問を呈する。

 

「姐さん、そんなことあるのかよ? ヒョウエみたいなのって赤ん坊で生まれてくるんだろ?」

「転生者とひとくくりにはしていますが、ニホンから来る方々はヒョウエ様のように子供として生まれてくる場合と、向こうでの姿そのままにこちらに移ってくる場合があるそうです。

 転生者と転移者、と呼び分けるのが正確なのでしょう。後者の場合は持ち物もそのままこちらに移動してこられるそうで」

「向こうの世界の魔法で作られたものということですか」

「それで、どう使うのでしょう、これは?」

「いやその・・・」

「?」

 

 いつも大抵の事はわかりやすく解説してくれるヒョウエが口ごもる。

 珍しい事態に少女たちが首をひねった。

 

「ヒョウエくんでも知らないくらい珍しいの?」

「珍しいというか何と言うか」

 

 ヒョウエが苦笑する。

 

「向こうの世界の魔法にも色々種類がありまして、僕の生まれた頃にはとっくにすたれてた魔法なんですよねえ、これ」

 

 このタイプの磁気テープが市販されていたのはおおよそ1950年から60年代。

 それ以降はカセットテープに駆逐されて業務用ですらほとんど使われていない。

 コンピューター関連ならなおさらで、業務用のメインフレームならまだしも一般人の目に触れるところで使われる規格ではなかった(一応パソコン用も存在はする。本当に一応)。

 平成生まれの人間には伝説のアーティファクトと大差ない代物である。

 

「それではヒョウエ様でもわからないと言うことですか・・・困りましたね」

「その通りです。ですので、わかる人の所に聞きに行きましょう。明日の仕事はお休みですね、これは」

「ああ、あのひとたち?」

「ええ」

 

 リーザとサナが頷く。

 残り三人の頭の上にはハテナマーク。

 

「明日一緒に行きましょう。そのうち紹介するつもりでしたし、ちょうどいい」

 

 そう言うと、ヒョウエは食べ残していたデザートのカスタードクリーム乗せビスケットを口にした。

 

 

 

 翌日。

 朝食を終えて朝一番で向かったのは、スラムの中心である「道化(ハーレクイン)」広場からニコルソン通りを北に向かい、メットーを南北に分ける東西の大通りを越えて少し行った場所。

 王都の中央をそれぞれ東西と南北に貫く大通りはメットーのメインストリート。それを更に四等分する井桁状の四本の通りはそれに次ぐ賑わいを見せる準メインストリートである。

 そこに面した場所、しかも中流以上が住む地域に店を持っているあたりはかなり繁盛しているのだと見えた。

 

「なんだ? アキリーズ&パーシューズ魔法道具店?」

「ええ。僕の兄弟子と姉弟子の店ですよ。おはようございまーす」

「おーう」

 

 ヒョウエが挨拶しながら店の扉を開けて入っていくと、太い声が答えた。

 続いて中に入った三人が、ぎょっとして身をすくめる。

 のっそりと、巣穴から出てくる虎のように店の奥から現れたのは巨漢の男であった。

 

 熊と言うには細く、狼と言うには大きい。

 身長は2mほど、たくましい体つきだがそれなりに均整が取れている。

 野性的な太い眉にがっしりとした顔つき、そこそこ程度のハンサムだがどこか涼しげで愛嬌がある。

 にっ、と。

 ヒョウエを認めて、その唇が笑みを作る。

 

「おはようございます、兄さん。姉さんは?」

「外回りだよ。借金返す算段は付いたか?」

「うっ。毎月少しずつ払ってるじゃないですか」

 

 縮こまるヒョウエ。巨漢は溜息をついて肩をすくめる。

 

「借金のカタに生皮剥がされたくなかったら急いだ方がいいんじゃないか? うちの嫁さんは怖いぞ」

「そりゃわかってますけど・・・」

「なんだお前、あちこち借金あるな」

 

 モリィが呆れたように言う。

 

「兄さんたちへのは必要経費ですよ。ほら、怪人ムラマサとやりあったときの敏捷性強化の腕輪。あれを壊しちゃった代金ですよ」

「あー」

 

 あの時一緒に戦ったカスミが納得の声を上げた。

 

「で、借金返しに来たんじゃなかったらなんだ? また魔道具かっぱらいに来たのか」

「魔道具と言えば魔道具の話ですね。ただ、この世界の魔法で作ったものではないですけど」

「ほう?」

 

 巨漢の片眉が興味深そうに持ち上がった。

 視線がモリィ達三人の上を流れる。

 

「そう言う事なら茶ぐらい出してやる。お前の仲間も紹介してもらいたいしな」

「ええ、そのつもりですよ」

 

 ついてこい、とジェスチャーで示して巨漢が奥に入っていく。

 にっこり笑ってヒョウエがそれに続いた。

 

「ところでそっちがニシカワ家の白甲冑か・・・後でちょっと見せてくれないもんかね? もちろん変な事はしない。調整して調べて構造を記録するだけだ」

「も、申し訳ありませんが・・・」

 

 目に異常な光を宿し、両手をワキワキと動かすイサミ。やや顔を引きつらせてリアスが断ると、イサミはがっくりと頭を垂れた。

 

「そうか・・・残念だな・・・ヒョウエは隅から隅まで見たのにな・・・」

「いかがわしい言い方をしないで貰えますかね、兄さん」

 

 半目で兄弟子に突っ込むヒョウエ。

 

(((確かに兄弟弟子だな/ですわね/でございますね・・・)))

 

 そんな二人を見て、三人娘の心の声が綺麗に一致していた。

 

 

 

 卓に付き、茶を淹れて自己紹介を終える。

 

「で、ものはなんだ?」

「これです」

 

 ヒョウエが手を前に出すと、手のひらの上に先ほどと同じオープンリールテープの幻影が浮かび上がった。

 

「へえ」

 

 巨漢が興味深げに身を乗り出した。

 

「兄さんならわかりません?」

「俺も詳しくはないぞ。こんなもん、どこの家にもあるもんじゃなかったからな」

「そうなんですか? 昔は一家に一台オープンリールデッキがあったみたいな事を聞きましたが」

「レコードプレイヤーの間違いだと思うぞそれ」

「ちょ、ちょっとお待ちになってください!」

「ん?」

「何だい、伯爵閣下」

「あ、リアスでけっこうです・・・そうではなくて! そう言う話が通じるというのはまさか・・・」

「・・・」

 

 ヒョウエと巨漢が視線を合わせる。

 

「なんだお前言ってなかったのか?」

「言ってませんでしたっけ?」

 

 と、これは三人娘に向けてヒョウエ。

 

「聞いてねえよ!」

「聞いておりません!」

 

 珍しくモリィとリアスが声を揃えてつっこんだ。カスミも口には出さないが同様の表情をしている。

 

「じゃあ改めて紹介しますか。こちらはイサミ・ハーキュリーズ。僕の兄弟子であり・・・僕と同じ転生者です」

「・・・!」

 

 無言の驚きが部屋に満ちた。

 




アキリーズ→アキレウス
パーシューズ→ペルセウス
ハーキュリーズ→ヘラクレス

なお某ダンジョンで何かする小説の主人公の名前はヘラクレスをもじった物であるという説があります。
特に関係ありませんが。ありませんが。(強調)
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