毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-03 もう一人の転生者

「俺はこいつ(ヒョウエ)と4つ差でな。つまりあっちだと40年くらいの差があるってこった」

 

 「おいこいつまさかこのツラで20才かよ」というモリィの視線が突き刺さる。

 慣れているのか目元をぴくりとさせるだけのイサミ。

 ヒョウエが礼儀正しく気付かないふり。

 同じく礼儀正しく気付かないふりをするカスミ。

 

「僕たちにも理由はわかりませんけど、向こうでの年の差の十分の一くらいがこちらでの年の差になるらしいんですよ。なので、年代的には丁度これが使われてた時期に重なるんですよね」

「まー時期だけならな。見た事はあっても手に取ったことはないぞ」

「そうなんですか? カセットテープみたいなものでしょう?」

 

 ヒョウエが首をかしげると、イサミが肩をすくめた。

 

「馬鹿言え、8ミリカメラとかオープンリールデッキとか、金持ちのおもちゃ以外の何ものでもねえよ。あれ給料の三ヶ月分くらいしたんだぞ?」

「愛と同じ値段ですね」

「あれも不条理だよなあ。誰が決めたんだか」

 

 1970年大阪万博のころの8ミリカメラ本体が大体そのくらいであったと言う。 

 金持ちか、よほどの趣味人でもなければ手の出せない代物だ。

 

 なお「お給料の三ヶ月分」は当時ダイヤモンド販売を牛耳っていたデ・ビアス社のキャッチコピー。

 昔懐かしパタリ■の国際ダイヤモンド輸出機構の元ネタだ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「まあともかくオープンリールデッキはまだマシだが、それでもホイホイ買えるもんじゃねえ。あの時代に一般人が音楽聞くならレコードプレイヤーだな。

 オープンリールテープはそれより高級路線で売り出したけど普及しなかった・・・まあレーザーディスクみたいなもんだ」

「レーザーディスクってなんです?」

「!?」

 

 イサミが愕然とした表情になり、次いで手で顔を覆ってテーブルに肘を突く。

 

「ど、どうなされたんですの?」

「ジェネレーションギャップを受けてるんでしょう。いい年なのはいい加減自覚してると思いましたが」

「うるせえ! 転生したんだから今はピチピチの20才だよ!」

「そのピチピチって表現が既に古いんですが・・・」

 

 どう反応していいかわからない、という顔のヒョウエに、がーっと吼える。

 

「うるせえって言ってるだろ! デッキを買って悪いか! 昔のアニメ見たさに給料の大半をLDボックスにつぎ込んだのが悪いか! その後すぐにDVDの時代になって周囲から笑われたのがそんなに悪いかちくしょうめ!」

「いえ、悪くありませんから話を進めてください」

 

 勢いに気圧されつつも、何とか兄弟子をなだめようとするヒョウエ。

 はあはあと息をつきつつも、イサミが平静を取り戻す。

 

「ともかくだ、多分コンピューターの記録用とかじゃあないな。あれもっとでかかったはずだし」

「じゃあやっぱり音楽用とかですか」

「いやあ、音楽用のももっと大きかった気がする。

 なんだったかな、録音再生できる小型の奴だったような・・・」

 

 うーん、と二人で唸るヒョウエとイサミ。

 手持ちぶさたな三人娘がお茶をすすっている。

 

「というか、これゲマイの連中が運んでたって事は、ひょっとしてあいつらオープンリールデッキ持ってるのか?」

「じゃ、ないでしょうかねえ」

「あの方々は大抵の事は魔法で出来ると聞きますが・・・。わざわざ異世界の物品を使うのですか?」

 

 話が変わったところでリアスが疑問を挟んできた。

 男同士で話が盛り上がっているので、ヒョウエと話をしたくて我慢できなくなったらしい。

 

「魔法が高度に発達した国だからじゃないですか? 魔法で盗聴する手段もそれを防ぐ手段も沢山あるでしょうが、これ(テープ)なら根本的に、魔法で解読することも盗聴することも出来ません」

「ああ・・・」

 

 納得がいったのかリアスが頷いた。目に感心の色がある。

 

「異世界から持ち込まれたものを魔法で直すなりなんなりして使っているのですね」

「でしょうね。あるいは・・・あっ」

「どうした、ヒョウエ?」

「思い出しました! オープンリールデッキのありかに心当たりがあります!」

「マジか?!」

 

 ヒョウエ以外の四人が一斉に目を丸くした。

 

「で、心当たりって?」

「王宮ですよ。宝物庫で小さな頃にそれらしいものを見た記憶が」

「そこかあ」

 

 子供の頃、いとこたちと共に宝物庫を見せて貰ったことがある。

 ニホンから持ち込まれた物品を展示した一角があり、日本刀や武士甲冑、キセルやサイドカーなどが展示されていた中にそんな形のものを見たような気がするのだ。

 

「じゃあ王様に頼んで見せて貰うか」

「それだと僕が青い鎧だって事がばれちゃうじゃないですか」

「なーるほど。じゃあ手は一つしかないなあ」

「ありませんねえ」

 

 にやり、と兄弟子弟弟子が悪い笑みを交わす。

 三人娘が顔色を変えた。

 こいつならやりかねないという表情のモリィ。

 まさかという顔のリアス。

 そして思わず声の出たカスミ。

 

「ちょ、ちょっと待って下さいヒョウエ様。まさかとは、まさかとは思いますが・・・」

 

 悪い顔が揃ってカスミに向けられる。

 

「そのまさかですよ。カスミも協力してくれますよね?」

「・・・」

 

 絶句する。

 

「やってくれますよね?」

 

 にこにこと、肩に置かれる手。

 ちらりと主人の方を見るが、事件の解決への義務感とヒョウエへの好意と貴族としての倫理観がせめぎ合ってフリーズを起こしている。

 

「か、考えさせて下さい・・・」

 

 カスミにはそう答えるのが精一杯だった。

 

 

 

「うう、まさか王城に泥棒に入るなんて・・・」

「カスミの術が必要なんですよ。申し訳ありませんが」

「あたしまで連れてくることねえだろ!?」

「魔法的トラップがあった場合モリィの目が必要なんですよ」

 

 いつもの四人からリアスを引き、イサミを加えた四人組がヒョウエの杖に乗って王都の空を飛んでいた。

 まだ午前中だが、その姿は当然ながらカスミの透明化の術で見えなくなっている。

 

「大丈夫ですよ、僕が一緒なんですから最悪でも暫く牢にブチ込まれるだけですみます」

「十分大ごとだ!」

 

 ちなみにリアスにはご遠慮願った。

 今回のスニーキングミッションには鎧兜のサムライは邪魔でしかない。

 一緒に行きたい気持ちと王城に忍び込むなど畏れ多いという気持ちの狭間でひどく複雑な顔をしていたが。

 

 昼日中にもかかわらず、侵入は完璧に成功した。

 王宮にも透明な賊に対抗する為のトラップや、透明看破の術を身につけた光術師たちはいる。

 が、王宮の間取りどころかトラップの位置と種類、果ては隠し通路まで全部知っているヒョウエが相手では流石に分が悪かった。

 まだ朝で、この時間帯に侵入する賊などまさかおるまいという先入観も有利に働く。

 王族用の隠し通路から侵入したヒョウエたちは物質分解(ディスインテグレイト)の術で宝物庫の下まで穴を掘り進め、まんまと侵入を果たしたのである。

 

「うわあ・・・」

「すげっ・・・」

 

 カスミとモリィの口から感嘆の声が漏れた。

 さすがに大陸二大国家の王宮の宝物庫。平民どころか下手な貴族でも一生お目にかかれないような宝物のオンパレードである。

 博物館の類が存在しない世界であるから尚更だ。

 イサミも口笛を吹いている。

 

「はいはいお静かに。沈黙の結界を張ってますけど、仕掛けがないとも限らないんですからね」

「お前も多芸だなあ」

大魔術師(ウィザード)ですから。音の術も便利だというのをこの前身に染みて実感しましてね。新しく習得したんです・・・あ、多分あそこですね」

 

 王宮に仕える"沈黙術師(サイレマンサー)"や、少し前に冒険を共にしたクライムファイターを思い出しつつ、ヒョウエが宝物庫の一角に向けて歩き出した。

 

 

 

「おお、懐かしき文明の香りよ」

「生まれ変わったとは言えノスタルジーを感じますねえ」

 

 うんうんと頷き合う転生者二人。

 彼らの目の前には陸王のサイドカーや三八式歩兵銃、日本刀やかんざし、望遠鏡やラジオ、昭和初期の少年雑誌や懐中時計などがずらりと並べられていた。

 中には8ミリカメラや明治時代のものらしき映写機などもある。

 

「お、これじゃないか」

「ですね」

 

 40センチ四方ほどの箱を見つけ、ヒョウエとイサミがその前にしゃがみ込む。

 箱の右上には例の円盤より大きめな、空の円盤がはまっていた。

 モリィとカスミがその後ろから覗き込んだ。

 

「さて、それじゃ帰りますか」

「帰るのかよ!?」

 

 モリィが全力で突っ込んだ。




>一緒に行きたい気持ちと王城に忍び込むなど畏れ多いという気持ちの狭間
ああっ、どうすれバインダー!
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