毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-05 アンドロメダ・ハーキュリーズ

「痛ってぇ・・・」

「ひどいじゃないですか、モリィ」

「黙りなさい、二人とも」

「「アッハイ」」

 

 冷たい目がイサミとヒョウエを睨む。

 頭を抑えて唸っていた馬鹿二人(イサミとヒョウエ)が背筋を伸ばして口を閉じた。

 年齢は20才ほどであろうか、水色の髪をアップにした理知的な容貌の彼女はイサミの妻にしてヒョウエの姉弟子、この魔道具店「アキリーズ&パーシューズ」の共同経営者であるアンドロメダ・ハーキュリーズ――愛称メディ。

 

「うーむ」

 

 モリィが唸る。リアスとカスミは僅かに引いていた。

 

「さて、お三方」

「は、はい」

 

 身を固くする三人娘にアンドロメダが苦笑する。

 

「そんなに固くならないで下さい。このたびはうちの宿六と弟弟子がご迷惑をおかけしました」

 

 深々と頭を下げる彼女に、かえってうろたえる三人。

 

「い、いやそんなこたぁ・・・」

「止められなかった、わたくしどもの責任でもありますし・・・」

「・・・」

 

 かろうじて礼儀正しく無言を貫くカスミを含めた彼女らの様子を見て、メディがクスリと笑う。

 

「そうですね、今はあなたたちがヒョウエの仲間なのですし、あなた方に任せるのが筋ですね。何がとは申しませんが」

「・・・」

 

 三人の視線が何とはなしにヒョウエに集中する。

 ヒョウエが僅かにのけぞった。額に冷や汗。

 

「俺もそっちに任せて貰いたいなあ・・・」

「あなたはこっちに来なさい」

「痛い! 痛いって!」

 

 冷たい目のアンドロメダに耳を引っ張られ、イサミが悲鳴を上げた。

 

 

 

 改めて場所を移して店の奥。お茶をいれ直して全員が卓についていた。

 テーブルの上にはイサミの生み出したオープンリールデッキとテープの複製、そして封をしたままの文箱。

 

「それで、問題はこの"異界遺物(ディファレント・アーティファクト)"ですか」

「なんですよ。これこれしかじかで、青い鎧として受け取ったものなので、おおっぴらに調べるわけにもいかなくて・・・」

「ちょっと待ちなさい、ヒョウエ」

「はい」

 

 メディが三人娘の方に視線を走らせる。

 モリィ達が僅かに身を固くした。

 

「彼女たちには全部話したのですか?」

「ええ。全部」

 

 ヒョウエに頷き返してメディが再び三人に視線を向けた。

 今度はその視線の中にそこはかとない優しさがある。

 

「そうですか。事情を知ってヒョウエの仲間になってくれたのですね。

 天然で考えなしでフラフラしていて、そのくせ無駄にスペックが高くてやたらに突っ走る面倒くさい子ですが、どうかよろしくお願いします」

 

 再び深々と頭を下げる。

 

「・・・」

「あ、いえ、その・・・」

「・・・」

 

 モリィが照れくさそうに頬をかき、リアスがあたふたし、カスミがはにかむ。

 それを見たアンドロメダがにっこりと笑った。

 

「しかし姉さん、何もそこまで言わなくてもいいじゃないですか」

「全部本当の事でしょう。何ならあなたの仲間に聞いてみたらどうですか」

「・・・」

 

 三人娘の方をちらりと見る。

 うんうんと頷くのがモリィ。

 後ろめたそうに目をそらすのがリアス。

 礼儀正しく何も言わないのがカスミ。

 

「ぬぬぬぬぬ」

「これだけ欠点があってもあなたについてきてくれるんです、感謝しなさい」

「はーい・・・」 

 

 ヒョウエががっくりと頭を落とす。

 イサミが生暖かい、同類を見る視線を投げかけていた。

 

 

 

「話を戻しましょうか。この・・・」

「オープンリールテープ」

「オープンリールテープが問題なのですね」

「ええ。普通に考えれば王宮のゲマイ代表に渡すのが筋であるとは思うんですが・・・リアスによればこの紋章が全権大使であるファーレン家ではなく、リムジー家のものだと言うことで、どうもひっかかりまして」

 

 ヒョウエの説明にメディが頷いた。

 

「賢明な判断でしたね。確かにこの家紋はリムジーのものです。そしてこの世界で言葉の環(スピークリング)・・・オープンリールテープを使っているのは、私の知る限りリムジー家だけです」

「!?」

 

 驚愕の視線がメディに集中した。

 ただし、心底驚いているのはモリィ達三人だけだ。

 

「あの、そこまでご存じと言うことは・・・」

「はい。私は元々リムジー家の人間です。それも直系の当主候補でした」

「・・・!」

「まあそれは今は関係ないのでおいておきますが」

 

 絶句した三人の反応をさらりと流し、メディが話を続ける。

 

「もう二百数十年前の話ですが、ニホンからの転移者がリムジー家に保護されました。

 保護と引き替えに彼の知識や持ち物を提供していただいたのですが、その中にこのオープンリールテープとデッキがあったのです。

 『魔法によらない記録手段』という点に当時の当主が注目し、研究が始まりました。十年ほど前にこれらを複製する技術が完成し、音声の吹き込みと再生が可能なデッキとテープの生産が、今でも小数ながら続けられているはずです。

 ニホン製のテープなら作った工房の紋章が刻み込まれているそうですが、これにはないでしょう? そういうことです」

 

 後ろ暗い仕事や伝達にも使うから足が付かないように、と言うことだ。

 うむう、とイサミが唸る。

 

「しかしさすが創世八家、よくもまあそんな短時間でコピーできたもんだ。俺みたいなのがいたらともかく・・・いや、そうか。その時期は」

「ええ。先生がリムジー家に逗留していらしたころよ」

「なるほどねえ。師匠なら納得です」

 

 イサミとヒョウエがうなずく。

 興味を引かれたようにリアスが口を開いた。

 

「ヒョウエ様やお二人の魔法のお師匠様ですか。どのような方ですか?

 さぞかし腕の立つ術師なのだと推察いたします、が・・・?」

 

 リアスの語尾が迷ったように消える。

 兄弟弟子である三人が一斉に渋い顔をしていた。

 

「あの人はなあ・・・」

「掛け値無し"大魔術師(ウィザード)"と呼ばれるのにふさわしいお方なのですが・・・」

「そうですねえ・・・リアス、サーベージ師匠のことを覚えてます?」

「え? ええ、それはもちろん!」

 

 怪人ムラマサの事件で一時期行動を共にした、リアスにとっては剣の師でもある転生者の老人を思い出す。

 性格に問題はあるが、語り部としても剣士としても技量は超一流だった。

 

「あの人をもっとわがままに、偏屈に、自分勝手に、破天荒にすると僕たちのお師匠様になります」

「えぇぇぇ・・・」

 

 思わず声を上げてしまったのはカスミ。

 風呂に乱入されたこともあり、いいイメージを持っていないらしい。

 モリィとリアスも大体同じような表情だ。

 

「まあそれはともかく、デッキの話です」

 

 メディが強引に話題を元に戻す。どうやら仕切り属性であるらしい。もっとも破天荒な師、割と後先考えない亭主と弟を相手にしていれば、自然とこうもなるだろう。

 

「当てがあるのか?」

「はい。ただ、ゲマイに戻る必要があります」

「ということは・・・」

「ええ。ヒョウエ、あなたの協力が必要です」

 

 メディの瞳がヒョウエをひたと見据えた。

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