毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-06 マッハGoGoGo

「行きたい行きたい! 俺もゲマイに行きたい! なあいいだろヒョウエ!」

「いやあ・・・兄さん重いので正直勘弁して欲しいんですけど・・・」

 

 子供のようにわめきながらずいずいと迫ってくる兄弟子に、僅かに顔が引きつるヒョウエ。顔がでかい。圧が強い。暑苦しい。

 実際2mの身長に広い肩幅で筋肉の塊という巨漢である。下手しなくても一人で三人娘を合わせたのと同じくらいの体重がある。

 いくらヒョウエでもこの重い荷物を抱え込むのは二の足を踏む。

 

「悪いな兄さん、この杖は五人乗りなんだ」

「この世界で通じないボケかましてんじゃねえよ! お前なら念動で余計に連れて行けるだろ! いいのか、これ以上拒否するようなら泣きわめくぞ! いい年した男がみっともなく床の上でジタバタするぞ!」

「そこまでして行きたいんですか・・・」

 

 行きたいに決まってるだろ、と言おうとした瞬間、イサミの背に危険信号が走る。

 後ろにナイフを持った殺人鬼が立っているのと同じくらいの反応速度で振り向くと、そこには愛する妻が立っていた。

 くい、とメディがメガネを直す。

 

「あなた」

「はい」

「気持ちはわかるけどわがままはそのへんにね」

「はい」

「軍からの依頼がまだなんだから、帰ってくるまで作業を進めておいて」

「・・・はい」

 

 がっくりうなだれる大男。

 その哀愁漂う背中を、ヒョウエが複雑な表情で見ていた。

 

 

 

「あ、私たちの通行手形と旅行用のマントを用意しておいて。いい感じに灼けてしおれたやつを」

「鬼かお前は!? あれ魔力認証ついてるからしんどいんだぞ!」

「必要なのはわかるでしょ。ヒョウエもいることだし。使えるものは親でも使えってのはあなたの世界の言葉じゃない」

「それちょっと違う・・・」

「お土産買ってくるから今回は我慢してちょうだい。ね?」

「へーい・・・」

 

 微笑みながら夫の頬を撫でるメディ。

 溜息をついてイサミは自らの【加護】を発動させるべく手を広げて集中を始めた。

 

 

 

 マッハ0.9。

 普段の数倍、亜音速で呪鍛鋼(スペルスティール)の杖が飛ぶ。

 ヒョウエ、モリィ、リアス、カスミのいつもの四人に加えてメディ。

 カスミの術でその姿を隠し、遥か南西のゲマイを目指して、一直線に杖が飛んでいた。

 高度500m程にもかかわらず、恐ろしい勢いで流れていく眼下の風景。

 初めてというわけではないモリィ達も流石に唸る。

 

「すっげえなあ、おい・・・これどれくらいのスピードが出てるんだ?」

「そうですね、一時間に大体1000kmくらいでしょうか」

「1000km・・・!」

 

 リアスが絶句する。

 旅慣れた人間が徒歩で移動できる距離が大体一日40kmだ。

 一日の移動時間がおおむね八時間と言うことを考えると、通常の200倍の速度と言うことになる。しかも地形にそって曲がりくねった道を辿るのではなく一直線に飛べるし、山や川、海や砂漠と言った障害も全く問題にならない。

 ディテクとゲマイの間には世界の屋根と呼ばれるような巨大な山脈があるからなおさらだ。

 

「・・・昔、ディテクからゲマイまで旅した方の旅行記を読んだことがありますが、片道だけでも確か三年以上かかっていたような・・・この速度だとゲマイまではどれくらいかかるのですか?」

「えーと・・・」

 

 リアスの質問にヒョウエより早く答えたのはメディだった。

 

「そうですね、直線距離だと恐らく6000kmほどでしょうから、六時間というところでしょうか」

「六時間・・・」

 

 再度絶句するリアス。

 それに代わり、真顔のモリィが会話に入ってくる。目には妙に強い光。

 

「・・・なあ。それ、冒険者よりディテクとゲマイの間を往復してさ、あれこれ売り買いした方がもうかるんじゃねえのか?」

「モリィ様・・・」

 

 呆れたような声を出すカスミ。

 モリィが少し焦って弁解する。

 

「だ、だってそうじゃねえかよ! ゲマイのものをディテクに持ってきたり、逆にディテクのものをゲマイに持っていって売りさばいたら高く売れるだろう? すげえ大金持ちだぜ!」

「まあそれは考えないでもありませんでしたけどねえ」

「だろ? だったら何でやらなかったんだよ?」

「うーんまあ、民業の圧迫はやっちゃいけないかなーと」

「は?」

 

 後ろの四人が一斉にクエスチョンマークを浮かべる。言葉の選択を誤ったかとヒョウエが苦笑した。

 

「つまりですね、ディテクとゲマイの間を何年もかけて往復してものを運ぶ人たちがいるわけですよ。沢山旅費もかけてね。

 そういう事ができるのは、運ぶ品物が高値で売れるからですけど、僕がそう言う品物を大量に運んで売りさばけば、当然値段は下がります。

 商会がいくつも潰れたり、下手すると首をくくる人が出ますよ」

「ぐっ・・・」

 

 モリィが言葉をつまらせる。

 幼少の頃、親が商売にしくじって家と家族を失った彼女だ。

 特にヒョウエがそれを示唆したわけではないし状況も違うが、そう言われると何も言えなかった。

 

「まあ小規模なら大丈夫ですけど、それくらいなら毎日冒険者やってるのと大差ないんじゃないかなあと」

「ぬぬぬぬ・・・」

「後はまあ、どう考えても僕は商売人には向いてませんし」

「あら、ヒョウエも商売のいろはくらいは教わってるんじゃなかった?」

「そうですけど、やっぱり向き不向きはありますよ、姉さん」

「まあそうね。でも売り子になったらお客さんが沢山来そうじゃない? そっちの方を考えてみる気はないかしら? 酒場の看板娘でもいいわよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 想像してしまったのだろう、三人娘の動きが一斉に止まる。

 

「勘弁して下さい」

 

 背後の気配とくすくす笑う姉弟子に、ヒョウエが深々と溜息をついた。

 

 

 

 ゲマイの首都、クリエ・オウンドについたのは空が赤く染まり始めた頃だった。

 

「うわっ・・・」

「船が空飛んでるぞ!?」

「あ、あっちの船がこちらに手を振ってますよ!」

 

 メディの指示でカスミの術を解除したときは大丈夫かと思ったものだが、その懸念は目の前の情景を見て吹っ飛んでいた。

 夕日に照らされる海に漁船から大型商船まで大小無数の船が浮かび、その上空には小型船や空飛ぶじゅうたん、あるいは生身で飛行する無数の影があった。ヒョウエたちもその中に埋もれて全く目立っていない。

 中にはヒョウエたちのように杖にまたがっているものもいる。

 

「まあ。あの方々も念動の術で飛んでいらっしゃるんですか?」

「場合によりますね。『空飛ぶ箒』と呼ばれてる魔法の道具で飛んでる場合もあります。あれは魔道具の方でしょうね」

「ほうき、ですか? 掃除に使う? 杖にしか見えませんが」

 

 カスミが首をかしげる。

 一方でモリィはあー、というように頷いた。

 

「魔力が見えるとな、あの杖の後ろから魔力が放出されてるのが見えるんだ。確かに言われてみれば箒みてぇだな」

「なるほど」

「・・・」

 

 納得して頷くカスミ。メディが懐かしそうに眼を細めていた。

 

「ヒョウエ、そのまま港のあそこに見える赤い屋根の建物に向かって下さい。大きな門の横にあるやつです」

「わかりました。あれが噂に名高い魔導門ですか?」

「ええ。正確にはその中でも最大級のものの一つですね」

「まどうもん? 姐さん、なんだそりゃ?」

「ゲマイは国境線全てに結界を張って国への出入りを厳しく管理しているんです。ヒョウエと私がいれば結界を破って密出入国は出来なくもありませんが、正規の手続きを踏むに越したことはありませんからね。ご禁制の品を密輸出などすると特に罪は重いですよ」

「へーえ・・・」

 

 よく見れば港周辺は壁で覆われており、魔導門を通らなければ都市部に入れないようになっている。モリィの目には、壁の上空と海岸線に沿って、強力な魔力で構成された不可視の壁が存在するのも見えた。

 商人や漁師、旅人や魚を乗せた荷車などが門をくぐり、賑やかに行き来している。

 高さ幅ともに20mを越えようかという巨大な門は滑らかな大理石で作られており、モリィの目には門を飾る精緻な彫刻や表面に刻まれた無数のルーン文字もはっきり見えた。

 

「すげえなあ・・・」

 

 感嘆を隠し切れないモリィを微笑ましげにちらりと見やると、ヒョウエはそのまま門の横の関所の建物を目がけて降下していった。

 




クリエ・オウンド → クリエイター・オウンド

アメコミでは作品の著作権は基本的に出版社が持つ慣習で、クリエイターはしばしば強制的に権利を売り払わされます。
有名どころではスーパーマンの権利を手放してしまって困窮した原作者二人組(ジェリー・シーゲルとジョー・シャスター)とかですね。

それに対抗して作品の著作権はそれを作り出した漫画家・原作者にあるという考え方が"クリエイターの所有(クリエイター・オウンド)"で、ゲマイのネーミング元であるイメージ・コミックはそれを普遍的に確立させるために、当時のトップクリエイターたちによって設立されました。
まあそのイメージコミックもその後色々あったんですけどね!



一説には魔女の乗る箒も、実は杖だったという話があります。
後方からエネルギーを放出してるので、ジェット噴射みたいなそれが箒の穂先みたいに見えるという説。
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