毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「姐さん。これ魔法がかかってるけどさ、あたしは普通に鍵だけ開けりゃいいのか?」
「はい。護符を持ったものが正式な鍵を使えば開く形だと思います。
鍵自体にも魔力が込められている可能性がありますが、その場合はヒョウエの作業が終わったところで強引に穴を開けてしまいましょう」
「オーケイ、わかった。なら気楽なもんだな。
お前ら、なるべく離れてろよ。それと正面に立つな。矢とか飛んでくる可能性があるからな。まあゲマイのお偉いさんの家なら魔法の罠とかだろうけど」
リアスとカスミが頷き、後ろに下がる。メディは護符を掲げたまま、金庫の脇。
バーリーは腕を組んでその横に立った。
「おいおっさん」
「何かあったら姫を守るのは俺の役目だ。いいからとっととやれよ」
メディの方に視線をやる。長身の美女は微笑んで肩をすくめた。
溜息をついて、鍵に向き直る。一つ、深呼吸をして精神集中。
「・・・」
《目の加護》を受けたモリィの視線が、金庫の表面を舐めるように調べる。
彼女の目は透視の力を持っているわけではないが、それでも表面に何らかの仕掛けがあるなら見逃しはしない。
そうしたトラップが表面にないのを確認すると、身をかがめてモリィは鍵に取りついた。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
かちゃかちゃと、モリィが鍵をいじる音だけが響く。
鍵穴に細い針金を刺して、動かした鍵の機構を固定。
作業が進むにつれて細い針金の数が増え、それが四本に達してしばらくしたところでかちゃり、と音がした。
「っし!」
モリィのガッツポーズ。
額に僅かに汗が浮いている。
その横で金庫の扉が静かに開いた。
「お疲れさまでした。さて・・・」
アンドロメダがモリィをねぎらい、金庫の中身に手を伸ばす。
その瞬間、周囲が暗転した。
「!?」
「これは・・・」
カスミの光球が消えた。
リアスの網膜に、白甲冑からのメッセージが表示される。
「古代文字? ええと、魔素・・・欠乏?」
「どういうこった、部屋中ぴかぴかしてた魔法のオーラが一斉に消えたぞ?!」
「"
言うなり、アンドロメダが凄い力で殴り倒された。
「おっさん!?」
「バーリー様!」
モリィとリアスの悲鳴が上がる。
アンドロメダを全力で殴ったのは、矮躯のヴァナラ、バーリーだった。
「ふっ!」
二人が悲鳴を上げるのと同時にカスミはバーリーに飛びかかっていた。
その目が既に青い。
左手で棒手裏剣を三本、同時に投擲すると同時に忍者刀を抜いて斬りかかる。
「ガアアアアアッ!」
「っ!」
バーリーがオランウータンのような長い腕を振り回す。
棒手裏剣は腕の表面に刺さらずに弾かれ、カスミも腕をまともに食らう。
「カスミッ!」
リアスの悲鳴。軽量のカスミが吹き飛ばされ、ソファとテーブルセットを巻き込んで派手に転がった。
悲鳴を上げながらリアスも抜刀している。モリィもピックを投げ捨てて雷光銃を抜いていた。
「このっ! 怪我しても恨むなよ・・・なぬっ!?」
放たれた雷光が、銃口1.5メートルほどのところで途切れて消える。
モリィの頭が一瞬真っ白になった。
"
名前の通り、範囲内の
魔法や魔道具を車にたとえるならば、術式はエンジン、魔力はガソリン、そしてマナは酸素だ。
魔力とマナが反応することで初めて術式は駆動する。
酸素がなければ、どれだけ燃料があっても燃焼は起こらない。
放たれた雷光、つまり魔力ビームは大気中のマナと反応することで本来の破壊力を発揮する。
雷光が尻すぼみになって消えてしまったのはそう言う理由だ。
一方で白甲冑は完全に通常通りの性能を発揮していた。
多くのアーティファクト、とりわけ高級なものには魔力のみらずマナを蓄える機構がある。
ゆえに、周囲からマナを吸気できなくとも蓄えたマナの続く限り問題なく駆動できる。
通常の魔道具がジェットエンジンなら、アーティファクトはロケット。
真空であっても燃料の続く限り飛んでいける。
雷光銃が雷光の発射自体はできたのもそう言う事だ。
雷光に含まれたマナが、マナの真空の中でも僅かの間は魔力の燃焼を支えているのだ。
「けあっ!」
カスミが殴り飛ばされたことで、リアスの脳裏から手加減という言葉は消えている。
完全に斬り殺す気で振り下ろされた一刀を、バーリーがギリギリのところで甲冑の両手首を掴んで止めた。
「ガアアアア!」
「?!」
額に刃を食い込ませ、血を流しながらもバーリーの両手はリアスの斬撃を止めている。
その力の異常さと、焦点のどこかあっていない瞳が頭に血の昇ったリアスを冷静にさせた。
(いくら妖精族、いくら上位冒険者並みの経験を積んでいると言っても、この白甲冑に伍する膂力など・・・まさか魔法による洗脳、あるいは薬・・・っ!)
バーリーの腕からふっと力が抜けた。
体ごと沈み込んで、リアスの両腕をひねる。
柔道やレスリングの、高度な「崩し」の技術。
「くっ!」
右足で踏ん張る。
鍛えた体幹と技術で何とか耐えた。
だが組み合っている状況には変わらない。
(メディさんとカスミはまだ動けない、モリィさんもこの状況では戦えない。ヒョウエ様が気付いて助けに来るには遠すぎる。わたくしが何とかしなければ――!)
全身に力を入れ、伝説の魔導甲冑のポテンシャルを最大限発揮させようと集中する。
互角の力と高い技量を持ったバーリーを相手に、一瞬たりとも気は抜けない。
恐らく無手の体さばきではあちらの方が上。
下手に蹴りを入れれば倒されて無力化されかねない。
愚直にでも力比べを続けるしかない。
そう思ったとき、光が閃いてバーリーの腕から力が抜けた。
何を、と思う間もなく反射的に体が動き、剣を翻す。
渾身の力で振り下ろした西川正宗の峰がバーリーの脳天を直撃し、猿人は物も言わずに倒れた。
「何が・・・」
見下ろすと、バーリーの背中に焦げたような傷跡。
その向こうに雷光を吐き出し続ける雷光銃――それはまるで光の剣のようで――を手にしたモリィがいた。
雷光銃から吹き出し続けていた雷光が消える。
目が合うとモリィはニヤリと笑い、雷光銃を掲げてウインクをして見せた。
「ふう・・・」
息をつく。
「一体何だったんだ?」
「わかりませんが、とにかくヒョウエ様と合流しましょう。私はカスミとバーリーさんを担ぎますからモリィさんは」
メディさんをお願いします、と言おうとしたところで窓の外が明るくなった。
「ちっ!」
モリィが舌打ちして、素早くカーテンの隙間から外を覗く。
「・・・!」
モリィの目には一見してわかる、魔導甲冑と高位術者を中心とする部隊がびっしりと周囲を固めていた。