毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ちっ」
「・・・」
「・・・」
モリィが舌打ちをした。
首都中心部にあるリムジー家の地下、
身分ある人間のためのものなのか牢獄と言うにはかなり豪華で、ちょっとした高級ホテル並みの内装はあるが、それでも人を閉じ込めるための部屋には変わりない。
あの後踏み込んできた魔導甲冑と高位術者の部隊に、三人は為すすべ無く降伏した。
回復したカスミを含めて三人だけならまだ何とかなっただろうが、気絶したメディとバーリーをかばいながらでは流石に分が悪かった。
その後、主な持ち物を取り上げられてここに押し込められた。
素直に降伏したのがよかったのか、荒っぽい真似はされていないしメディとバーリーも治療が施されている。
今部屋にいるのはモリィ、リアス、カスミ、そしてベッドで眠り続けるメディ。
バーリーは治療を受けた後、どこかに連れて行かれた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
舌打ちが響いた後、再び部屋の中に沈黙がわだかまった。
ここに押し込められて既に数時間。
奇妙なことにヒョウエの姿はないし、彼女らも彼のことを口にしない。
「んん・・・」
「姐さん!」
「メディさん!」
ベッドの上のアンドロメダが身じろぎした。
三人が駆け寄ると、まぶたが開く。
「ここは・・・」
「ご本家らしき館の地下、貴人を軟禁する部屋のようですわね」
頷いてメディが身を起こす。
「大丈夫か、姐さん?」
「ええ。問題ありません。それより・・・」
事情を説明して下さい、と言おうとしたタイミングで部屋の扉がノックされた。
四人が顔を見合わせる。再度ノック。
「・・・はい、どうぞ」
メディが答えると鍵を開ける音がしてドアが開く。
入って来たのは魔導甲冑の護衛を数人はべらせた、ターバンを巻いた貴族風の若い男。
25から30ほどだろうか、知的でハンサムな風貌。ひげを綺麗に刈り整え、自信ありげに笑みを浮かべている。
服の布地や仕立てもよく、金の鎖や宝飾品をじゃらじゃらとつけていた。
「やあ、アンドロメダ。久しぶりだね。元気そうで何よりだ」
「あなたも元気そうで何よりですね、シーニー」
冷たくよそよそしい声にも、男の笑顔は崩れない。
「まさか戻ってくるとは思わなかったよ。だがこれで君と私の優秀な血を混ぜ合わせることができる。イプラのような代替品でなくてね」
「あなたの奥方でしょうに。大体私は人妻です」
「そんなこと! あのウドの大木とのことなら無効に決まってるじゃないか!
まあ私は寛大だ。義務さえ果たしてくれれば、ちょっとした戯れくらいは許してあげるよ。もちろんあんなものの血を引く子供などを産まない限りにおいてだが」
メディが不愉快そうに眉をしかめる。
後ろの三人はもっとだ。
「あなたの妄言には付き合いきれませんね。それよりバーリーはどうしたんです。彼に何を」
アンドロメダがシーニーに詰め寄る。
後ろの護衛たちが動こうとしたが、シーニーが手を上げると元の位置に戻った。
「はは、大した事はしてないさ。ただ薬をちょっとね。それで暗示をかけたんだが、見事にはまってくれたよ。人間どころか妖精族にまで効くとは! 素晴らしいとは思わないか!
これなら
その瞬間、アンドロメダの脳裏に閃くものがあった。
「まさか、このところ起こっているという麻薬騒ぎというのは」
「おお」
シーニーが目を丸くした。
「素晴らしい! 君はやはり優秀だ! いや、私の血とかけあわせたときに、どれほど素晴らしい優良種が産まれることか!
ああそうとも、あれは実験さ。貧民に薬を流してね・・・」
「シーニー様」
後ろに控えた護衛の一人が彼をたしなめる。
シーニーが大げさに驚いて、口を手で塞いだ。
「とっと、これはしたり。いやはや、好きなことになると饒舌になっていけないね。
わかってはいるんだがやめられない悪癖だよ」
「そんなことはどうでもいい! バーリーはどうしてるんです!」
「ははは、たかが猿にずいぶんご執着だね。会いたければ会わせて上げるよ。ほら」
シーニーがぱちんと指を鳴らすと扉が開き、バーリーがのっそり入って来た。
感情豊かだった顔からはそうした物がごっそり抜け落ちており、無機質な視線を床に向けている。
「バーリー!」
「・・・」
メディの声にも小柄なヴァナラは反応しない。
「ははは、無駄無駄。そんな事で解ければ苦労はしないよ。
ああそうだバーリーくん。アンドロメダに再会の挨拶をしたいので、少し動かないように抑えていてくれるかな」
「・・・」
「なっ!」
バーリーがアンドロメダの両手首を掴み、後ろにまわって彼女を動けなくする。
そこに近づいたシーニーが、アンドロメダの顎を右手で持ち上げた。
「なっ・・・やめなさい! やめて、バーリー!」
「だから無駄だって。さて、君の夫として再会の挨拶をしないとね。君が誰の物か、理解して貰わないと」
「~~~!」
もがこうとするが、ヴァナラの強い筋力は万力のように彼女の動きを封じている。
その間にもシーニーの唇はアンドロメダのそれに近づいていく。
「っ!」
止めようとしたモリィ達が、護衛たちのクロスボウを突きつけられて動きを止めた。
シーニーの唇がアンドロメダのそれと重なろうとする瞬間。
「え?」
強い力でアンドロメダの体が後ろに引き戻され、ぽーんとベッドに放り投げられる。
「え?」
唇を合わせようとしていた姿勢のまま、まぬけな声を上げるシーニー。
その顔面に、バーリーの拳が炸裂した。
「ぶぎゃっ!?」
ドアの近くまで吹っ飛ぶシーニー。
一瞬、アンドロメダも、三人娘も、護衛たちすら何が起こったのかわからず立ちすくむ。
慌ててバーリーにクロスボウを向ける護衛たちだったが、その瞬間ドアの向こうから何かが飛んできて、護衛たちの魔導甲冑の左脇腹の一点を正確に打ち抜く。
「・・・!」
モリィの《目の加護》は飛んできた「何か」が見慣れた金属球であることをはっきりと捉えていた。
それと同時に通常の視覚では見えず感じられない、魔力の爆発が五度起きる。
同時に護衛たちの体が痙攣し、ばたばたと倒れた。
「ひいいいい!」
起き上がったシーニーが、這いずりながらドアの外に逃げようとする。
リムジー家でも屈指の高位術師である彼なら、魔素断絶の結界の外に出さえすればどうとでもなる。そうすれば・・・
そんな事を考えていた彼は、何かにぶつかって尻餅をついた。
「・・・」
見上げる。広い戸口をほとんど完全に塞いでいるのは人間。
筋肉の塊のような大男。鴨居で顔が半分隠れている。
伸びてきた手がシーニーの襟首を掴み、軽々と宙に持ち上げた。
「よう、久しぶりだな。で。誰が、何を、許すって?」
「あ・・・あ・・・」
歯が欠け、血を流す口をガクガクと震わせるシーニー。
それを見下ろしてにたりと笑ったのは。
「あなた!」
「悪い、遅れた」
アンドロメダの夫、イサミ・ハーキュリーズが妻のほうを向いて笑った。
視線を持ち上げたシーニーに戻す。笑顔が怖い。
「で? 誰が、何を、許すって?」
「あ・・・ひ・・・」
もはやシーニーは震えるだけ。
そのシーニーを掴んでいた左手で、軽く宙に放る。野球のコーチがノックするボールを放り上げるように。
そして落ちてきたシーニーを。
「うおらぁっ!」
丸太のような右腕による、渾身の顔面ラリアット。
宙で一回転したシーニーが飛んで跳ねたのはバーリーの目の前。
満面の笑みを浮かべた猿人の両手は、既に頭の上で組み合わされて。
「どらあっ!」
岩をも砕こうかという、全身全霊のダブルハンマーパンチが仰向けに転がったシーニーの顔面に振り下ろされる。
鈍い音がして、シーニーの体がびくんと痙攣した。
「「イェーイ!」」
イサミとバーリーの、満面の笑みでのハイタッチ。
その足元で、寝取り(未遂)男がピクピクと震えている。
「イサミ!」
「ととっ」
ベッドから起き上がったメディが夫に抱きつく。妻を抱き返すイサミ。
「・・・へへっ」
その二人を三人娘とバーリー、そして戸口のヒョウエが優しく見つめていた。
シーニー → ミスター・シニスター
シニスターの部下 → マローダーズ → 左胴致命的命中(ぉ