毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
外で気絶させたシーニーの部下たちを引きずり込んで武装解除した部屋の中。
かちゃかちゃと響くのはリアスが白甲冑を身につける音。
取り上げられた武装はヒョウエが"
モリィは雷光銃の動作を確認し、手早く装備を整えたカスミは主が鎧を着ける手助けをしている。
「それにしても、よく間に合いましたね? まさかうちの宿六まで連れてくるなんて」
「まあそこはサナ姉とリーザのおかげですね。ごっそりと魔力を消費してしまいましたけど」
「本当にデタラメですねあなたは・・・」
メディが嘆息する。
「魔力があればまあ何とか。それにリーザの潜在能力は、僕たちが思っているより随分と大きいのかも知れませんよ」
あの時、ヒョウエは咄嗟に工房を飛びだして逃れた。
リーザを介して――6000kmの距離があるにもかかわらずだ――モリィ達に降伏を指示したのもヒョウエだ。
その後サナの力を借りて瞬間移動でメットーと行き来し、イサミを連れて来た。そして麻薬で操られていたバーリーにも接触し、解毒と精神安定化の呪文で暗示を解除し、今に至るというわけだ。
シーニーは部下同様に武装解除されて拘束されている。イサミのラリアットとバーリーのダブルハンマーをくらった顔面が酷いことになっていた。
その上半身をイサミが起こして、後ろから活を入れる。
「うぐっ・・・」
ダメージと活による吐き気で朦朧としているシーニーに、トイレからくんできた水(驚くべきことに現代日本に近い水洗式である)を遠慮無くぶっかける。
「あ・・・あ?」
ぼんやりとしていた目の焦点が次第に合ってくる。
気がついたとき目の前にあったのは、満面の笑みを浮かべるイサミとバーリーの顔。
「おっはよー」
「よう、どうだ、気分は?」
「きゃあああああああああああああ!?」
シーニーの悲鳴は監禁室の分厚い扉と壁に阻まれ、外に漏れることはなかった。
「どうせ何も話さないだろ。重しをつけて港に沈めようぜ。あそこ結構深いしな」
「馬鹿、こんなハラワタの腐った奴を沈めたら魚が浮いてくるだろうが。
キュッとシメて庭に埋めようや。庭木が腐ってもどうせリムジーの庭だしよ」
「ひいいい! やめて! やめてぇぇぇぇ!」
いい顔で物騒なことを話しあうイサミとバーリー。涙と鼻水とよだれと血と、その他色々な物を垂らして怯えるシーニー。
「はあ・・・」
馬鹿な男どもにメディが溜息をついた。
身につけたベルトの締まり具合を確認して、両手をぱんぱんと打つ。
「はいはい、そこまでにしておきなさい。そいつには聞き出さなければならないことがあるんですから」
「「へーい」」
残念そうに返事する男ども。
何気に息があっている様を、ヒョウエが生暖かい目で見守っている。
ぱあっと顔面を明るくしたシーニーが、ずりずりとメディの方に這いよってきた。
「ああ、ありがとうアンドロメダ! 君はやっぱりやさしいひとだ!」
「やさしい?」
そのメディの一言だけで、急に室温が低下したように思えた。
装備の点検をしていた三人娘さえ思わず振り向くような、そんな声。
メディがしゃがんで顔を近づける。俯いたその顔はシーニー以外からは見えない。
「ええ、もちろん私はやさしいですとも。それをあなたに向ける理由は欠片ほども思いつきませんが」
「あ・・・ひ・・・」
「選びなさい。あなたが知っていることを全て話すか・・・それとも私の魔道具を思う存分味わってみるか」
もはや悲鳴を上げることもできず、硬直するシーニー。
呆然とそれを眺める三人娘。
イサミ、バーリー、ヒョウエの三人が、揃って肩をすくめる。
結局、一分きっかりでシーニーは落ちた。
「――つまり、ここ二年ほど麻薬が市井に流れていたのはあなた方の仕業だったと」
「そ、そうだ。父さんの雇っていた薬師がこの薬品――僕たちは"
「父が病と称して最近表に出てこないという話を聞きました――殺したのですか」
底冷えのするようなアンドロメダの声。
シーニーが慌てて喋り始める。
「け、ケイフェス様は生きてる! 薬で人事不省にしてあるだけだよ! お父上の派閥の他の連中も殺しちゃいない! 大半は薬漬けにするか、洗脳するか、人質を取って言うことを聞くようにしてあるけど!」
「反吐が出ますね。ではこの計画に荷担している残りの主な人間を教えて貰いましょうか」
「あ、ああ。まずは父さんに・・・」
あらかた吐かされた後、シーニーは再び(物理的に)昏倒させられた。
しばしの沈黙の後、代表して夫のイサミが口を開く。
「それで? どうするんだこれから?」
「――」
少し考え込み、アンドロメダが一同を見回す。
「もうこことは縁を切った身ですが、放置しておくとはた迷惑ですし、後味も悪いですし、やってしまいましょう。
みなさん、手伝っていただけますか?」
全員が頷くのを見て、メディの口元に微笑みが浮かんだ。
一同は扉を溶接してシーニー達を閉じ込めてから地上に上がり、堂々と当主の寝室を目指した。
「げっ!」
「ぐわっ!」
「ぎゃあっ!」
金属球が宙を飛び、衛士を次々と打ち倒す。
物陰に隠れて術を発動しようとする術師も、ヒョウエの感知能力を逃れられるものではない。
カーブして通路を曲がってきた金属球にあばらを折られ、あっさりと気絶した。
他の面々が身構えてはいたものの、全く出番が無い。
バーリーが口笛を吹いたところで、一行は当主ケイフェス・リムジー――アンドロメダの父の寝室に到着した。
ノックもせずにドアを開け、転がる衛士をまたいで中に入る。
ベッドの傍に座っていた中年の侍女が最初に怒りの、次いで驚きの表情を浮かべた。
「ノックも無しに無礼な・・・姫様!?」
「久しぶりですね、アディル。元気でしたか」
「姫様・・・ああ、姫様!」
駆け寄ってきた侍女がメディにすがりつき、泣き出す。
「大丈夫ですよ、アディル。どうにかしますから。ヒョウエ、お願いします」
ヒョウエが無言で頷き、ベッドに歩み寄る。
肩までの髪を綺麗になでつけ、ひげを短く刈り込んだロマンスグレイの初老の男である。薄く目を開け、ぼんやりと宙を見たまま横になっている。
"
(なんて量の薬物ですか――いえ、さすがは創世八家の当主というところでしょうか。この量を投薬しなければ、眠らせておくこともできないということですね)
一つ深呼吸して集中する。
解毒、そして"
視線がヒョウエ、そしてメディの方に移動する。
「お前は何者・・・アンドロメダか」
「ご無沙汰しております、『父上』」
「・・・事情を話せ」
言いたい事をぐっと飲み込み、出奔した娘に説明を促す。
アンドロメダの説明は断片的、端的な物であったが、それだけでケイフェスも事情をおおよそ察したようであった。
「よしわかった。ついてくるか」
「むろんですとも。処置は?」
「頭と手だけだ」
「いいでしょう」
頷き合う父と娘。
「アディル、羽織る物を」
「はい、ただいま!」
侍女が駆け出していく。
モリィがこっそりヒョウエに耳打ちした。
(なあ、姐さんたち何話してるんだよ?)
(裏切った傍系の派閥を潰して連中がやってたことにケリを付ける、手伝う気があるならついてこいと言ったのに対して、手伝いはしますけど連中はどうするんですって聞き返して、トップと実際に実験をやってた連中は身柄を拘束して蟄居幽閉、後は適当に罰を与えてそのままと言うことでしょう)
そんな事を話していると、ガウンのような物を羽織ったケイフェスがヒョウエの方を向いた。
「・・・この"
「はい、御当主様」
読んで字の如くの術である。
長らく人事不省状態にあり体力の衰えているケイフェスが、一時的にせよ常人と同様かそれ以上に元気に歩き回れるのはヒョウエがかけたこの術あってのことだ。
「見事なものだ。魔導君主でもこのレベルの魔力を練ることはできまい。
――何者だ、お前は?」
「さて。"六虎亭の
ウィンクするヒョウエにケイフェスが僅かに苦笑を漏らす。面識のある、傍若無人な大術師のことを思いだしてでもいただろうか。
「
「私の弟弟子ですよ。さしあたってはそれで十分でしょう」
誇らしげに胸を張る娘に、ケイフェスが僅かに目を見張った。
「そうか・・・まあいい。では行くぞ。時間は
その場の全員が頷いた。
ケイフェスのビジュアルはダブスタクソ親父でひとつ(ぉ