毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
07-14 言葉の環(スピークリング)
「小羊がその七つの封印の一つを解いた時、わたしが見ていると、四つの生き物の一つが、雷のような声で「きたれ」と呼ぶのを聞いた。
そして見ていると、見よ、白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた」
――ヨハネ黙示録――
ケイフェス・アンドロメダ父娘主導の逆クーデターはほとんど一瞬で終わった。
リムジー家本拠にいたシーニーの一派は一瞬にして壊滅・捕縛。
主立ったケイフェス派の家臣達もあるいは縛を解かれ、あるいは解毒され、あるいは家族を見張っていた反動分子たちを瞬殺され、それぞれが改めて当主に忠誠を誓った。
そのまま彼らの私兵数百を引き連れて首謀者であるシーニーの父、現リムジー家のナンバー2であるサヌバヌールの邸宅を急襲、邸宅にいた全ての者を捕縛した。
分家当主のサヌバヌールと側近の何人かは邸宅にいなかったが、それでも
そのほとんどを一人で無力化したヒョウエに、周囲から畏怖の視線が注がれていたのは言うまでもないことである。
そして翌日の朝。リムジー本家の朝食。
ヒョウエたちやアンドロメダ、主立った家臣達も揃った場で、ケイフェスが一同を見渡して口を開いた。
「このたびは大変よく働いてくれた。お前達には改めて感謝しよう」
ハッ、とバーリーが鼻で笑う。アンドロメダは素知らぬ顔。
他の面々はおおむね無難にかしこまっているが、モリィがぴくりと片眉を上げた。
(なんだ、あいつ王様かよ。えらそうに)
(そうですよ? ゲマイを統治する八人の魔導君主の一人なんですから、よそなら王様です)
(・・・マジ?)
(マジマジ)
更にいくらか感謝とねぎらいの言葉を述べた後、ケイフェスの視線がやや鋭いものになる。
「――それで。何故戻ってきた、我が娘よ」
「おや、親子の縁は切ったと思っておりましたが」
白々しく驚いてみせる娘に、父親は表情を変えず言葉を重ねる。
「それはそれ、これはこれだ。今回の功績が大きいから不問に付すが、八家の工房に忍び込んだのは斬首にも値する罪だぞ」
「それはもちろん正義のためですよ。縁を切ったとは言え生まれた家が麻薬を流して人をさらっているなどと聞いてはね」
「・・・」
「・・・」
ケイフェスの視線が更に鋭いものになる。
食卓に肘を突き、両手を組む。
「ここには来ていないが、術師ヒョウエが昨夜助けた中にネムバスと言う男がいる。ネムバスはわしらの知らないサヌバヌールの企みを察知し、"
読んで字の如くの魔道具で、瓶や筒に手紙や品物を入れると、遥か遠隔地まで一直線に飛んでいくというものだ。ディテクまでとなると相当なコストのかかるものだが、裕福な商家や八家の有力者なら使えないほどのものでもない。
「それもご丁寧に自分の記憶を消し、追跡をかわすため
――
視線で圧力をかけたり、語気を荒くすると言うようなことはない。
しかしその言葉には言い逃れやごまかしを許さない厳しさがあった。
ヒョウエとアンドロメダが視線を交わす。姉弟子が頷いたのを確認して、ヒョウエが懐からオープンリールテープを取り出し、テーブルの上に置いた。
ケイフェスが手を持ち上げるとテープが宙に浮き、その中に収まる。
(ほう、無音呪文ですか。それも集中なしに)
(それは・・・凄いのですか? ヒョウエ様はいつも呪文無しに金属球を操っておられるではないですか)
感心するヒョウエに、ヒョウエを挟んでモリィと反対の席に座るリアスが疑問を漏らす。
ヒョウエとカスミ、イサミとアンドロメダが一斉に苦笑を浮かべた。
(お嬢様。無音呪文というのは、本来かなり高度な習熟を要する技術なんです。
ましてや精神集中のタイムラグ無しにそれを操るのは
ヒョウエ様は
(はあ・・・ヒョウエ様が凄すぎてわからないけど、あの方もやはり魔導君主と呼ばれるにふさわしい技量の持ち主と言うことですわね)
(そう言う事です)
ヒョウエが頷く。
ケイフェスはしばし無言だったが、そのまま何を言うでもなく朝食が始まった。
朝食後、ヒョウエたちはケイフェスの居室に呼ばれた。
リムジー家の家臣は裏向きのことを任されているケイフェスの腹心が一人だけ。
テーブルの上にはオープンリールテープと、王宮で見た物より随分小さいデッキが一つ。この場にいる人間は誰も知らないが、録音・再生用に市販されていた小型デッキだ。
着席したアンドロメダがちらりと父を見た。
「もう聞いたのですか?」
「まだだ。最悪、一度声を再生したら消滅するような何かが仕込まれている可能性もある」
「おはようフェノレプスくん、と言う奴ですね」
「なおこのテープは自動的に消滅する」
「「・・・」」
ヒョウエとイサミが顔を見合わせた。
「「YEAAAAAAAAAAAAAAH!」」
満面の笑顔でピシガシグッグと、謎の擬音を出してハイタッチする馬鹿兄と馬鹿弟。
その二人を、アンドロメダがものも言わずに拳でぶん殴った。
「痛い!」
「何するんだよメディ!」
「二人とも時と場所をわきまえなさい!」
「あの、姫様・・・再生を始めてもよろしいでしょうか?」
ケイフェスの脇に控えていた腹心がやや呆れたような顔で確認する。
主人の方も僅かに呆れ気味だ。
「はい、お願いしますエラキス」
頭痛をこらえるような顔でアンドロメダが言った。
カチリ、と音がしてデッキが止まった。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
沈黙が部屋に満ちる。
「マジかよ」
モリィが思わず漏らした言葉が、概ねその場の全員の総意だった。
テープの内容がそれほど壮大にして、恐ろしくも馬鹿馬鹿しかったのだ。
「ファーレンの当主が既に
「ディテク国王を含むメットーに集まったVIPたちにも薬物による洗脳を施して」
「最終的にはマルガム大陸、いやこの世界をサヌバヌールのものにする?」
ヒョウエがケイフェスの方を向いた。妙に真顔だ。
「当主様。これは本気なんでしょうか? 極めて手の込んだいたずらという可能性は?」
「・・・少なくともネムバスはそのような真似をする男ではない・・・ないが・・・」
頭痛をこらえるような顔で俯くケイフェス。
その後ろでは、腹心のエラキスが必死で無表情を保とうと努力していた。
「ではディテクへとって返すべきですわね。それがまことであれば不埒者どもを成敗してファーレン家の当主様を解毒せねばなりません。まことでなければないで、こちらに再びとって返して、こんな事をしでかした者達にお仕置きが必要でしょう」
「・・・」
行動あるのみ! と言わんばかりのリアスの脳筋の主張に再び沈黙が落ちる。
ヒョウエが苦笑しつつも頷いた。
「そうですね。真偽を確かめるためにもまずは現地に行ってみないと」
「脳筋の意見もたまには正鵠を得ているもんだな」
「モリィさん? 最近言葉にトゲがあるのではなくて?」
「ま、まあまあ・・・」
三人娘によるいつものコントを斜めに見て、ケイフェスが息をつく。
「そうだな。とにもかくにも動かねば始まらん。アンドロメダ」
「みなまで言わなくても結構。リムジー家とよりを戻すつもりはありませんが、事が事です。大陸を巻き込む大戦争が起こりかねないなら、止めなくてはならないでしょう」
娘の言葉に父が大きく頷く。
「よし。エラキス。それでは至急
「不要です。ヒョウエの杖で飛んでいく方がよほど早いので」
ケイフェスとエラキスの動きがぴたりと止まった。
真顔でヒョウエを見た後、再びアンドロメダを見る。
「・・・アンドロメダ。それはひょっとして冗談で言っているのか?」
「単なる事実ですよ」
平然としてるように見えて、どこか勝ち誇った表情のアンドロメダ。
そんな馬鹿な、しかしこいつならひょっとしてと、半信半疑、いや四信六疑くらいの目で二人がヒョウエを見つめていた。
アディル、ネムバス いずれもアンドロメダ座の星の一つ。
エラキス ケフェウス座の星。別名ガーネットスター。