毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-17 スパイ&スパイ

「それで奥様。どういったご用件でしょう?」

「リムジーの跳ねっ返りがメットーで馬鹿なことをやろうとしているみたいなのよ。王国の諜報機関と連絡が取れないかしら?」

「あ、母上。そちらのほうには青い鎧がつなぎをつけています」

「青い鎧?!」

 

 ルクバーが目を丸くした。

 

「実はこういうわけで・・・」

 

 ヒョウエとは別口に、あくまでも「青い鎧」と面識があるという形で事情を話す。

 

「はー・・・」

「ふぅん。青い鎧・・・それにあの王子様がね」

 

 ルクバーはひたすらに驚愕しているが、シェダルは一瞬だけ意味ありげに眼を細めた。

 

「「・・・」」

 

 イサミとメディが僅かに身を固くするが、老婦人はお構いなしに話を続ける。

 

「ルクバー。あなたの把握しているゲマイ人の中で、リムジーの、特にサヌバヌールの派閥に通じているものはいますか?」

「はい、数人ほど」

「そのグループに動きは?」

「なんとも。例の経済会議関係のお祭りやレスタラの攻撃で混乱してまして、忙しくしているようだとは思ったんですが・・・」

「なるほど。まあしょうがありませんか」

 

 シェダルが溜息をつく。結果を見れば、彼らはレスタラ事件の混乱に紛れてうまく動いていたということになるのだろう。

 

「娘たちの話によれば、すぐに王国諜報機関・・・ええと、何と言ったかしら」

「"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"です、母上」

「そう、それね。その"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"が接触してくるそうだから、それまでになるべく情報を集めておいてちょうだい」

「かしこまりました」

 

 ルクバーが一礼する。

 それに頷くと、シェダルが表情をゆるめる。

 

「さて、それではまだ少し時間もあるだろうし、みんなで夕食にしませんか。

 話したいこと、聞きたいこともまだ色々ありますしね」

 

 にっこりと笑う母親に、アンドロメダが僅かに頬を引きつらせた。

 

 

 

「奥様、お客様が参りました。片隅からいらしたと仰せですが」

「あら? 思っていた以上に早かったわね。さすがと言いましょうか。お通ししてちょうだい」

 

 丁度食事を終えたあたりにそれはやってきた。

 侍女が食器を片付けるのと入れ替わりのように入って来たのは、そこそこ裕福な平民の若奥様とそのお付きの男――に見える二人。

 二人の顔を見てイサミが目を剥いた。

 

「カレン殿下!? それにそっちは、ひょっとして――」

「どうも、お久しぶりですわね、イサミさん。アンドロメダさんも」

「おまえさんがイサミ・ハーキュリーズか。話が早くて助かる」

 

 にっこりと笑うカレン。

 帽子を脱ぎながら、"狩人"が無感情に頷いた。

 

「初めまして、レディ・シェダル・リムジー。ディテク王国第二王女カレン・スー・ボッツ・ドネです。お目もじ嬉しく思いますわ」

「ありがとう、カレン殿下。このような体ですので失礼しますわね」

「いえいえ」

 

 和やかに挨拶を交わした後、二人が席に着く。

 タイミングを計ったかのように茶が運ばれてきた。

 上品な笑みを浮かべてシェダルとカレンが言葉を交わす。

 

「それにしてもまさかこんなに早く、しかもカレン殿下と"狩人"閣下直々のお出ましとは驚きましたわ」

「魔導君主のお后たる方ともなれば、相応の礼を尽くすのは当然でしょう。

 早め早めに動きましたのは、それだけ事態が深刻であるとご理解頂ければ」

 

 頷きつつシェダルが溜息をついた。

 

「ごめんなさいね。本当にもう、身内の恥がご迷惑をおかけしてしまって。何とおわびすればよいやら」

「いえいえ、お気になさらず。今回の件がうまく収まるところに収まれば、それはそれで我が国の利益にもなりますので」

「まあ」

 

 ころころと上品に笑う二人。

 もっとも言ってることは微笑ましくもなければ上品でもない。

 

(要するにこの件で圧力かけて、ゲマイの代表に交渉で大幅に譲歩を強いるってことだろうからなあ)

 

 イサミがこっそり溜息をつく。

 "狩人"はさすがに平然としていたが、ルクバーの額には一筋の冷や汗が流れていた。

 

「そう言えば、おいでになるまでにいくらかおもてなしを用意しようと思ってたのですけれど、恥ずかしながら何も用意できませんでしたの」

「先触れも無しにお邪魔したこちらに責任のあることですわ。お気遣いなきよう。それで、ご用意頂けるはずだったおもてなしというのは具体的には?」

「その点は実務を預かってくれる者達で話して貰った方がようございましょうね。ルクバー」

「はい、奥様」

「頼むわ、"狩人"」

「お任せ下さい」

 

 貴婦人たちの、言い換えると政治家たちの儀礼的な挨拶と交渉から一転、実務者である狩人とルクバーが具体的な話し合いを始める。

 それを横目で見て、カレンがイサミ達に視線を移した。

 

「そう言えば、こうしてゆっくり話すのは初めてね。どうも、ヒョウエの姉のカレンです。弟がお世話になってますわ」

「こちらこそ。私たちにとってもあれは弟みたいなものですから」

「随分と苦労されているのではなくて?」

「お互い様でしょう」

 

 二人の姉が無言で微笑みをかわす。

 ほほえましさより寒気を感じる。イサミは心の中でこっそりと、弟分の冥福を祈った。

 

 

 

「薬を使うならまず臭いのは料理人だと思うんですよ。ゲマイの代表が来てるって事は、王宮の方にもゲマイの料理人が上がってるんじゃありませんか?」

「もちろんだ。今部下にその辺を調べさせているが、そちらの方に協力してくれるとありがたい。やはり外国人のコミュニティ相手では探りを入れるにも限界があるからな」

「もちろんです。後は香水師ですね」

「香水師? 香りだけでそんな強烈な薬効があるものか?」

「香辛料の利用が多いお国柄だからでしょうかね、ゲマイでは伝統的に香りを重視します。まっとうにリラックスしたり雰囲気を盛り上げたり、夜のことについて利用することもありますし、医療や、あるいは色々後ろ暗いことにもよく使いますよ。

 創世八家の中にもそうした方面に特に通じてる家があります」

「さすがゲマイ、文化が多彩でうらやましいことだな」

「いえいえ、要はそれを用いてどう結果を出すかでしょう」

 

 現存する王国の中で一番古いのはディテクだが、文明として一番古いのがどこかという話になると、これはまずゲマイだろうと言うことで衆目の一致を見ている。

 真なる魔法文明、古代王国が崩壊した後、その術を伝える生き残りたちが南方の地で古代王国と魔法の復興を掲げていち早く築いたのが古代ゲマイ文明なのだ。

 閑話休題(それはさておき)、"狩人"とルクバーの話し合いはその後も続いた。

 その間カレンとアンドロメダは弟をダシにして盛り上がり、イサミは姑と和やかな会話を交わしていた。

 

「ではこのへんでよろしゅうございましょうか、閣下」

「ああ。レディ・シェダル。場合によっては娘さんと御夫君にもご出馬を願うことがあるかも知れませんが、よろしいでしょうか」

「今回の事は娘が持ってきた話です。どうぞいかようにもお使い下さい」

「母上!」

 

 しれっとのたまう母親に抗議する娘。

 イサミが眉を寄せた。

 

「出馬って、手助けするのはかまわないが、何をやらせようってんだ?」

「単純に戦力として、魔導技師としての特殊技能を見込んででもある。ついでに言えばオリジナル冒険者族としてのそれもな」

「知ってたかぁ」

 

 溜息をつく。

 

「ヒョウエ殿下が典型的だが、オリジナル冒険者というのは子供の頃から異常な振る舞いを見せるからな。網を張っていれば結構見つかるものだ。

 ともかく殿下もそうだが、レディ・シェダルやレディ・アンドロメダなら、そのまま王宮に上がっても何ら問題はないご身分の方だ。そうした立場で頼りになる戦力を確保できるのはこっちとしても助かる」

「ヒョウエから聞いてたが、"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"も結構人材不足らしいな」

「我々の本分は諜報だ。戦闘ばかり繰り返している冒険者や、『チイト』持ちのオリジナル冒険者族と比較されても困るよ」

 

 "狩人"が肩をすくめた。

 

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