毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第四章「地獄の黙示録(アポカリプス・ナウ)」
07-21 カチコミカチコミ申さく


「御怒りの大いなる日が、すでに来たのだ。誰がその前に立つことができよう」

 

     ――ヨハネ黙示録――

 

 

 

 幸いと言うべきか、本当に奇跡的な事に死人は出ずにすんだ。

 ヒョウエに加えて王宮に仕える治癒術師たちが待機していたのと、三人娘、サナ、アンドロメダとイサミ、会場に潜り込んでいた"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"のエージェント、そして衛士達の奮闘のおかげである。

 

 リアスは甲冑こそ着けていなかったが、体の線を隠すドレスの下に白甲冑のアンダースーツ――白甲冑の、筋力強化と敏捷強化の魔力を発揮する部位――を着込んでおり、カスミが隠しポケットで彼女の刀を持ち運んでいたため、防御力以外はほぼ普段通りの戦闘力を発揮する事ができた。

 スカートの下に雷光銃を隠していたモリィ、隠しポケットに装備を持ち込んでいたカスミ、無手でもその戦闘力を遺憾なく発揮できるサナ、全身に魔道具をごっそりと装備していたアンドロメダとイサミもそうだ。

 

 壮絶な白兵戦の末に、緑色の巨人(ハルク)はリアスに手足の腱を切られて動けなくなった。

 クズリ(ウルヴァリン)のような獣人はモリィの神技とも言える連射で鋭い爪を全て根元から吹き飛ばされ、カスミの目つぶし玉を喰らって悶絶したところをしびれ薬で無力化された。

 魔力をフォークやナイフに込めて投げつけていた破片の射手(ビット・ガンナー)はアンドロメダの魔道具により魔素断絶(マナ・ダウン)の結界に封じられたところをイサミに殴り倒された。

 他に何人も変異したものはいたが、どうにか収めることができた。

 

 そしてヒョウエ達がパーティ会場の混乱を収めているころ、カレンと"狩人"が素早く動いていた。

 ゲマイの代表団一行を有無を言わせず拘束、怪しい料理人(驚くべき事に、ゲマイの人間でないものがそれなりにいた)、また彼らに協力していたと思われる市井に潜んだものたちを芋づる式に逮捕していく。

 夜明けを待たず、この一件に関わった容疑者たちはほぼ全滅していた――例の、ライタイム風の服装の男を除き。

 

 

 

「それで・・・鬼薬(ヤクシャ)を投与されて変異した方々の容態は? 中にはファーレン家の当主もいらっしゃるのでしょう?」

「正直何をどうしていいかわからんらしいですな。医神(クーグリ)競技神(ソール)心の神(ウィージャ)の神殿は全面的な協力を約束してくれましたが、それでも取りあえず生命維持を優先しないといけない状態のようで。

 例外的にコネル殿下はヒョウエ殿下の解毒を受けたせいか、比較的変異の度合いが軽いようですが他の面々は・・・」

 

 "狩人"の言葉に一斉に溜息が漏れる。

 王宮の中、カレンが公務を取る部屋に一同は集まっていた。

 医神(クーグリ)は名前の通りの医術を司る神、競技神(ソール)は肉体的な変化を司り、魔法非魔法問わず様々な治療を施す神でもある。心の神(ウィージャ)もそのまま精神を司る神で、心の病の治療や今でいうカウンセリングに近い技術も保有していた。

 

「最悪とは言いませんけど、それの三歩手前くらいの状況ね。

 こともあろうにゲマイの国家元首の一人がディテクで毒を盛られて怪物になったなんて。下手をすれば全面戦争でしてよ」

 

 お手上げ、と言った様子のカレン。ヒョウエやイサミ、"狩人"など、その辺が理解出来る人間が深刻な表情で頷いた。

 

「あのライタイムの男は?」

「ライタイムの代表の付き人らしいが、完全に行方をくらました。家臣もほっぽり出してだ。申し訳ないが代表団にも監視をつけさせて貰ってる」

「・・・となると、本人でなかった可能性もありますね」

 

 変身ないし変装の術でなりすましていたと言うことだ。その場合本物は既にこの世にいないだろう。

 

「そういえば」

 

 カレンがアンドロメダに眼を向けた。

 

「ご実家の方にはもうご連絡されまして?」

「いえ。母には伝わっていると思いますが、事が事ですからあなたがたの許可を頂いてからにしようかと。連絡するにせよ事態を整理してからのほうがよさそうですし。

 多分あの男は争いを収める方に動くでしょうが、それはそれとして利益を最大化しようともするでしょうね」

「賢明なご判断に感謝します」

 

 "狩人"が頭を下げる。アンドロメダが微笑んだ。

 

「お気になさらず。今はディテクが私の故郷ですから」

 

 周囲に笑みが伝染する中、ヒョウエは硬い表情。

 最初に気付いたのはモリィだった。アンドロメダと笑い合っていたカレンも一瞬遅れてそれに気付く。

 

「・・・」

「おいヒョウエ」

「なんです?」

「なんですじゃねーよ。思い詰めた顔しやがって」

「あいたっ」

 

 モリィがヒョウエを軽くこづく。

 

「あれだ、カチコミしに行くんだろう? そう言うツラしてたぜ」

「そうね。本当にあなたはわかりやすいわ」

 

 ちらりと視線を交わして、ニヤリと笑うモリィとカレン。

 

「姉上が二人に増えた・・・」

 

 嘆息するヒョウエにアンドロメダが視線を向ける。

 

「カレン様やモリィでなくてもわかるわよ。あなたは顔に出るんだから気を付けなさいといつも言ってるでしょう」

「・・・」

「三人だったな、ヒョウエ」

「兄さんうるさい」

 

 渋い顔になりつつも、ヒョウエが立ち上がる。

 

「いい機会だしここではっきり宣言しておきますよ。僕はサヌバヌールを追います。

 麻薬をばらまくような奴を放っておく気は元からありませんでしたが、家族に手を出されて黙ってはいられません。サヌバヌールにはちゃんと落とし前をつけさせます」

 

 ぐるりと周囲を見渡す。

 モリィ、アンドロメダ、イサミは笑みを浮かべて、リアスとカスミは真剣な顔で頷いている。

 "狩人"は溜息をついているが、止めようとする雰囲気ではない。

 ヒョウエの視線がカレンのそれと正面からぶつかった。

 真剣な顔で二人が見つめ合う。

 

「ヒョウエ」

「なんでしょう、姉上。まさか止めるおつもりで?」

 

 僅かな沈黙の後に、カレンが笑みを浮かべる。

 

「まさか。私だってコネルがあんな事になって怒ってるのよ? でも私はここを離れられないから、私の分までそいつを殴っておいてくれる? 百発くらい」

「僕の殴る分が残りませんよ」

 

 ヒョウエが肩をすくめる。

 姉弟がニヤリと笑みを交わした。

 

 

 

 風が鳴る。

 高度1000mの冷たい大気が一行の周囲を通り過ぎていく。

 しかしその音も空気の冷たさも、念動障壁で守られた一行には届かない。

 

「なあヒョウエ、お前やっぱり俺に対しては扱いが悪くないか? 兄弟子だぞ? 敬意を払えよ。せめてもうちょっと広くしてくれ」

 

 例によって杖に乗れず、障壁の内側にごろんと転がされたイサミがぶつくさと文句を言う。内部はそれほど広くもないので、2mの体躯には狭苦しいことこの上ない。

 

「敬意は払ってますよ。無駄に重くて邪魔になるのに隠しポケットに入れずにちゃんと外にいさせて上げてるじゃないですか」

「隠しポケットの中の空気なんざ三十分も持たないだろうが」

「息を止めてればいいでしょう?」

「できるかっ!」

 

 ものにもよるが、そんなものである。

 ヒョウエやカスミのかばんなら人間を数人放り込むくらいの余裕はあるが、それだけ詰め込めば空気は数分ともつまい。

 以前ミトリカの精神世界の中でかばんにリアス以外の面々を詰め込んだことがあったが、あの時は中でヒョウエが空気浄化の術を連続して使用していたからである。

 首だけ出していればいいじゃないかという意見もあるだろうが、「隠しポケット」は開けっ放しだと故障の原因になる。外の空間と繋げ続けることで、中の亜空間が不安定になるからだ。

 閑話休題(それはさておき)数時間後、一行は再びゲマイの土を踏んだ。




「地獄の黙示録(原題:Apocalypse Now)」は説明不要の超有名映画。
「ゲート」で自衛隊のヘリが「ワルキューレの騎行」流しながら地上掃射していたあれの元ネタw
あれのラスト、ベトナムの奥地で現地民手なずけて王国作ってた狂った米軍大佐を主人公が殺害した後に、現地民が主人公にひれ伏すんですけど、監督はあれ何を言いたかったのかなあ。
未だにわからない。
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