毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
ゲマイの首都クリエ・オウンド。
猿人バーリーのところに顔を出した後リムジー本家に今度は正面から堂々と入り、当主ケイフェスのところに押しかけて人払いを要求した上で事情を話す。
「なるほどな。それで? 私に何を求めるのだ」
「サヌバヌールの捕縛、もしくは処刑に対する協力を。探索はしても手は出していないのでしょう? 彼はゲマイ有数の術師と聞きますからね」
両手を組み、ケイフェスが疲れたように深い息をつく。
魔法治療を施され、現在でも"
「有数、ではないな。知る限りではゲマイ最強だ。少なくとも私と比べれば遥かに上なのは間違いない。奴と側近だけでも、正面から戦ったらかなりの被害を覚悟せざるを得まいな――それで? 協力の代価は?」
「今回の事を穏便に済ませてあげる、だそうです」
「それは経済交渉における大きな妥協を要求しないと言うことかな?」
「まさか。ですが、もし戦争になったら魔導君主の力をもってしても相手にすらならないでしょうね、今のディテク相手には」
「・・・青い鎧とやらか」
苦虫を噛みつぶしたような父の顔を、娘が楽しげに眺める。
「おや、随分とお耳が早いようで」
「わかってて言っているだろう? あれだけ大騒ぎを起こして調べない馬鹿がいるか」
「さあ、どうでしょう。それで? 飲むのですか、飲まないのですか? 飲まないなら今度の件の責任は徹底的に追求されることになるでしょうね」
「アンドロメダ、お前どちらの味方だ」
もはや敵意すら浮かべる父親に、満面の笑みの娘。
「わたくしは既に家を出た身ですので。今回もあくまで向こうの言葉を伝えるだけです」
「・・・わかった。具体的には何が入り用だ」
「ご協力頂けると思っていましたよ」
満面の笑みを浮かべたまま、アンドロメダは一礼した。
いくらかの要求と僅かな交渉の末、必要な協力(主に情報)と物品を約束させて一行は退出した。
鼻歌を歌いそうなくらい上機嫌に歩くメディを先頭に、リムジー家の広い廊下を歩く。
先だってはバタバタしていたために余り観察のチャンスもなかったヒョウエやモリィなどは、物珍しげに周囲を見回していた。
ふと、思いついたようにイサミが口を開く。
「しかしヒョウエよ」
「何です?」
「オヤジさんがメディに『おまえどちらの味方だ』って言ってたろう」
「ええ、それが?」
「『愚問ですなあ、俺は俺の味方ですよ!』とか言ってみたかったなあ」
「・・・わかる。凄くわかる」
たわけた事をほざく馬鹿兄にうんうんと頷く馬鹿弟。
「何の話でしょう?」
「きっとオリジナル冒険者族にしかわからない何かですよ」
「まあ馬鹿な事なのは間違いねえだろうな」
アンドロメダとモリィが二人に呆れた視線を向けた後、盛大に溜息をついた。
上品にスルーしたリアスが話題を変えるべくアンドロメダに水を向ける。
「それでアンドロメダ様、これからどうするんですの?」
「そうですね。サヌバヌールの居場所は父も把握していないようですし、取りあえずは判明しているサヌバヌールの隠れ家に片っ端から踏み込んでみようと思います」
「リムジー家の手勢は貸して頂けるのでしょうか? 先ほどの話を聞いていると望み薄ですが」
「ですね。そうでなくても、サヌバヌールにこちらの優秀な術師を何人かやられていますし、これ以上リムジー家の手勢を消耗させたくないのでしょう。私たちが勝手にやるぶんには言い逃れできるという目算もあるでしょうね」
「義理の親父殿を悪く言いたくはないが、本当にこの国を出て正解だったな、メディ」
「本当ですよ――まあ創世八家の長としては正しいのかも知れませんけどね」
イサミとアンドロメダが揃って溜息をつく。
リアスは難しい顔だ。
「となると、今回は全て私たち独力でやる必要がある訳ですか」
「あの男が手出しをしないのはサヌバヌールが強力な術者である以上にもう大した事はやれないと高をくくっているのもあるでしょうから、何かそうした証拠をつかめれば話は違ってくると思います。
現状では手を出すリスクと出さないリスクを天秤にかけて、前者がマシだと思っている訳ですから」
「――各国代表の方々を洗脳するもくろみが失敗し、本拠地と手勢の大半を失った上で、まだ何かやってくるとお思いですか?」
「そうですね・・・」
思い出すのは母親との会話。
彼の異常性を数十年見てきた女性のそれ。
そして幼少の頃からこちらを見つめてきたぎらつく瞳。
その瞳に浮かぶのは憎悪か、狂気か、羨望か。
「母の受け売りもありますが・・・正直ないとは言えません。大して話したこともありませんが、彼が普通でないことだけは断言できます」
「まあどっちにしろやる事は変わりません。野放しにしておいたら確実にまた何かやらかすでしょうし、そもそもこれまでやって来た事だけでも断罪されるには十分すぎます」
「ですね」
ヒョウエの言葉に全員が頷く。
「まあ相手はゲマイの、それも魔導君主に準じる家の人間です。アジトにも大量の魔法の罠が仕掛けられてる可能性は高いですから、その辺は頼りにしてますよ、モリィ」
「うっしゃ、任せな!」
ご指名にガッツポーズを見せるモリィ。
ちょっとうらやましげにリアスがそれを見ていた。
「またかよ・・・ゲマイの連中は頭おかしいぜ・・・」
「え、またですか? どこです?」
「ほら、そこの廊下の先、じゅうたんの継ぎ目に」
「うわぁ・・・じゅうたん自体に魔力が付与されてるから気付きませんでした」
長旅の疲労を抜くために一晩休み、郊外に建つ最初のアジトの捜索を始めて一時間。
早くもモリィはげんなりした顔になっていた。
まあ三分に一回はトラップやら警報装置やらを見つけていたのではそうもなる。
しかもヒョウエとの会話にあったように、あちこちに魔力を帯びた家具や内装、美術品などが置かれていて、それに紛れ込ませる形で術式やトラップ用の魔道具が仕込んであるので面倒くさいことこの上ない。
ヒョウエもイサミもアンドロメダも魔力感知はできるし、ヒョウエは自前で、アンドロメダは眼鏡で"
「ところで、イサミの兄さんは何で"
「いやいやいや」
イサミが手をパタパタと振る。
「魔道具を使ってるメディは当然として、ヒョウエと一緒にせんでくれ。
単に魔力感知するだけならともかく、"
連続使用は並の術師なら三十分、俺でも二、三時間くらいが限度だよ」
「あーそーゆー」
納得しながらも、視線は周囲の探索を怠っていない。
床、壁、天井、柱、サイドテーブル、サイドテーブルの上の花瓶、ドア、ドアノブ、鍵穴、ちょうつがい・・・それら全てを詳細に観察する。
「大丈夫ですか?」
「あー、大丈夫。魔法よりは疲れねーよ」
心配そうに見てくるヒョウエに軽い調子で返してみせつつ、モリィは再度観察に集中した。