毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「只今戻りました」
「オヤジさんとの話し合いはどうだった、姫・・・ってそのツラじゃ言うまでもないか」
夕方近くになり、バーリーの家に戻ってきたアンドロメダとイサミ。
その顔を見てバーリーが皮肉げに口元を歪める。
怒りがぶり返したのか、アンドロメダが爆発する。
「ええ、全く駄目ですよ! あそこまで優柔不断な男だとは思いませんでした!」
「家中の術師と兵士たちを待機させて、証拠さえ見つければ即応することは約束してくれたがな・・・魔導宮の件に関しては半信半疑と言ったところだ」
肩をすくめるイサミに、ヒョウエが溜息をつく。
「まあ現状ではかなり突拍子もない意見でしょうしね・・・ただ、例の
創世八家筆頭であるファーレンの当主ですら洗脳してのけたわけですし・・・そう言えばあれ、どうやったんでしょうね? それこそ国王みたいなものですし、守りは魔導宮の比じゃないと思うんですが」
「確かサヌバヌールの祖母がファーレン家の出だったと思います。
その縁で話を繋げて、どうにかして薬を盛ったのではないかと・・・彼は魔力においてはゲマイでも群を抜きますが、頭も切れれば話術にも長けていて、貴族家の当主としても優秀な能力を持っていたそうです」
「単なる脳筋じゃねえってわけだ。テメェとは大違いだな、ウドの大木?」
「何だとこの寸詰まりの猿野郎」
隣でじゃれ合う男二人に最早一瞥をくれることもなく、アンドロメダが話を続ける。
「そう言うわけですので魔導宮には私とモリィさん、リアスさんとカスミさん。
並行で残ったアジトの捜索にイサミとヒョウエ」
「うん? 俺は留守番か、姫? まあ楽でいいけどよ」
「まさか、この忙しいときにそんなのんびりさせるわけないじゃないですか」
にっこりと微笑む。
「バーリーにはクリエ・オウンド周辺の水源地を見回って貰います。ゲマイ市民に大量に薬を盛るなら、恐らく水ですからね」
「なるほど、俺向きだな」
《水の加護》を持つバーリーは水に関する感覚も常人より遥かに敏感だ。
臭いを嗅ぐだけでもその中に何が混ざっているかは大体わかる。
「でもよ、アンドロメダの姐さん。アタシ抜きでアジトの捜索できるか?
そりゃヒョウエも多少は心得あるし大工のトンカチもあるけどよ」
「
「・・・ともかくその他に呪文があるにしたって、アタシ抜きじゃ危ないんじゃねえの?」
「ですわね。実際トラップはほとんど全部モリィさんが見つけていましたし」
「で、ございますね」
割と本気で心配している三人娘。イサミが腕組みをしてうんうんと頷いている。
「そうだそうだ。俺達だけで行くのは危険に過ぎる。なあヒョウエ?」
が、それに対する反応は冷たいものであった。
「兄さんがそれを言います?」
「あなた?」
ヒョウエは半目で突っ込む程度だが、アンドロメダは明らかに声が冷たい。
僅かにイサミがたじろいだ。
「だ、だってよ! あれ凄く疲れるんだぞ? 頭が痛くなるんだ!」
「なあヒョウエ、どういう事だ?」
「兄さんはね、その気になれば周囲のあらゆる物を広範囲にわたって物理的魔法的に解析できるんです。それこそ壁の裏でも床下でもあっという間に」
三人娘が一斉に驚き顔になる。
「すごいですわね。そんな《加護》も持ってらしたのですか。それとも魔法ですか?」
「いや、ものを複製する《加護》の応用ですよ。何かを精密に作ろうと思えば、同じだけ精密にものを解析しないといけないでしょう?」
「ああ・・・」
「複製する前に何か集中してたのはそれか」
「そういうことです」
なおヒョウエの説明の間、イサミは妻に睨まれてあっさり屈服していた。
「あー、やっぱり気乗りしないなあ」
「まだ言いますか」
「マジで疲れるんだよ。使いすぎると目の奥が痛くなる」
「脳の処理能力がオーバーヒートするんでしょうかね」
「そんな感じだろうなあ。あれは"
「まあ本来は肉体的疲労を回復する呪文ですからねえ」
そんな会話を交わしつつ、ヒョウエとイサミが銀色の杖にまたがって空を行く。
同乗者が一人だけなので普段より軽々と・・・と行きたいところであるが、装備品を含めるとイサミ一人で三人娘とほとんど変わらない重量になるので速度は余り変わらない。
今回の目標は高級住宅街にあるサヌバヌールの別邸。
バーリーの集めてきた情報によれば、つい最近人の出入りがあったそうだ。
「あの人もどうやって情報集めてるんでしょうね?」
「貧民街のガキどもに小遣いやって、あちこちうろつかせてるんだそうだ」
「ちょっとした
「少年探偵団ってか。小林少年はいるのかな」
「覇悪怒(はあど)組かもしれませんよ」
「あれもすげえネーミングだよな。暴走族かと当時思ったわ」
そんな馬鹿話をしながらも、幻影をかぶって素早く別邸の庭に着地し、てきぱきと侵入の準備を整える。
この辺は流石に阿吽の呼吸だ。
準備ができるとまずは玄関先、地面にイサミが手をつく。
「むっ・・・」
目を閉じて精神集中。
と、その脳裏に周囲の情景がワイヤーフレームのCGのように浮かび上がる。
物質的なものを示すワイヤーフレームに重なって、ぼんやりした魔力の塊と術式も。
「取りあえず周りの窓には全部術式が仕込んであるから入るなら正面玄関からだな。
鍵開けは任せるが、扉にも開けた途端発動する"
「昨日のアジトでも思いましたが、偏執狂的ですねえ。それともサヌバヌールの部下の術師はよほど暇を持てあましてたんでしょうか」
嘆息するヒョウエに、イサミは肩をすくめることで答えた。
「あー、頭がいてえ」
「昨日、モリィから同じようなセリフを聞きましたね」
「あの嬢ちゃんは一箇所だけだろ。おれは三箇所こなしたぞ」
「はいはい、えらいえらい。姉さんによしよししてもらいましょうね」
「やっぱりお前は俺に対する敬意が足りないな」
「気のせいでしょう」
午後三時頃。二人は杖に乗ってバーリーの家に向かっていた。
午前中に二箇所、昼食を挟んで午後にもう一箇所。
そこでイサミがギブアップしたので今はこうして(途中でおやつを買い込んで)帰路についている。
「しかしまじめな話、大丈夫ですか?」
「割と辛いな。流石に三軒ハシゴはこたえたわ。今晩休んでも明日は二箇所くらいがせいぜいかもな」
「体への負担は"
単純な筋組織の疲労と違い、肉体を酷使することによる負荷は、体組織を疲労させるのではなく破壊する。
(余談ながらそこから筋組織を修復するのがいわゆる超再生だ)
なので、そうした構造的疲労は疲労回復より負傷を治癒する呪文の方が必要になる。
それが重度であったり、脳のような複雑な構造の組織であれば更に高度な肉体再生呪文が必要になると言うわけだ。
ヒョウエも治癒系統の才能はあるのだが、同じ系統でも術式が高度になればなるほど素質がものを言うようになってくる。
頑張れば習得できるレベルの術ではあるが、習得に他の術の二倍か三倍ほどかかるとなると二の足を踏まざるを得ない。
「とはいえ、そろそろ習得してもいいころでしょうかねえ。メットーの
「日銭を稼いでるとスキルアップのための時間は中々取れないよなー」
微妙に生々しい話をしつつ、ヒョウエの杖は貧民街に降下していった。