毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-27 活劇映画の悪役

 アンドロメダたちが連れて行かれたところは、巨大な吹き抜け、ないしは縦穴の中に作られた広いフロアだった。

 直径100mはあろうかという縦穴の周囲を幅20mを越える広い床がぐるりと取り巻き、様々な機器が壁際に据え付けられている。

 縦穴を挟んで反対側に十数人の人影があり、その中に一際巨体を誇る男がいた。

 

「サヌバヌール・・・」

 

 体躯は2mを優に超える。イサミより更に頭一つ、縦横にひとまわり大きい。

 ゴリラの様ないかつい顔に分厚い唇。

 アーティファクトとおぼしき魔導甲冑を身にまとい、顔だけが露出している。

 強大な魔力の影響か、目には僅かに燐光が灯っていた。

 その目がじろりとアンドロメダたちを睨む。

 100m近い距離を越えてなお、その威圧感はただ事ではなかった。

 

「アンドロメダ! また会えるとは思ってなかったよ! ディテクに行ったと聞いていたけど戻ってきたんだね!」

「うわっ」

 

 アンドロメダが顔をしかめた。

 サヌバヌールを取り巻く一団に近づくと、髪とヒゲを整えた伊達男が飛び出して来る。

 軟禁されていたはずのアンドロメダの元婚約者候補、シーニーだった。

 

「やはり僕たちは結ばれる運命にあるようだね。こんな時ではあるが、僕たちの血を結んで生まれる子供が楽しみだよ!」

「・・・」

 

 たわごとを並べるシーニーに最早一瞥もくれることはなく、手かせでぼんやりした頭を必死に回転させる。

 だがこれまで無理に回転させ続けた頭脳は満足に動いてくれず、シーニーの背後から投げかけられる燐光の視線が圧力をかけてくる。

 いつの間にか風景もシーニーもモリィ達も消え、真っ暗な闇の中にサヌバヌールの光る目だけがぼんやりと浮かんでいるような心地さえした。

 

 突然暗闇も光る目も消え、アンドロメダは現実に戻ってきた。

 モリィ達が心配そうな顔で何事かを口にしているが、耳には入らない。

 ただシーニーが恐れおののいたような顔で脇に退いているところを見ると、父親(サヌバヌール)に何か叱責を受けたのであろうかと思われた。

 

「大丈夫です、大丈夫・・・」

 

 ぐらつく頭に手を当てて、必死に倒れまいとする。

 モリィとリアスが両脇からその体を支えた。

 その顔が、同時に前を向いた。

 

「・・・」

 

 悠然と歩み寄ってくるのは魔導甲冑を着込んだ巨体の術師。

 騎士甲冑のような重装備にも関わらず、足音一つしない。

 その後ろに付き従うのは数人の魔導甲冑兵と、これも術師とおぼしき老婆。

 

「ミロヴァ・・・やはりですか」

「どなたですの?」

「サヌバヌールの腹心で、ゲマイでも数少ない瞬間移動(テレポート)の術を使える大魔術師(ウィザード)です」

瞬間移動(テレポート)・・・!」

 

 アンドロメダたちの視線が自分に向いていることに気付いたのか、老婆が一礼する。

 かつてヒョウエが瞬間移動(テレポート)の呪文について『大魔術師(ウィザード)なみの技量と特殊な才能が必要』と評していたが、その両者を併せ持つ数少ない術師の一人がこの老婆だった。

 

「あの婆さんがあいつらを脱出させたってわけか」

「恐らくは」

 

 サヌバヌールが足を止める。

 2m30の高所からじろりと、天上から地べたを見下ろすかのような視線。

 

「久しいな、アンドロメダ・・・リムジーの面子に泥を塗り、おめおめとよく帰って来れたものだ」

 

 声からにじみ出る、ケイフェスでも比較にならない傲慢さと威圧感。

 それをぐっとこらえて、何とか平常通りの声を絞り出す。

 

「あなたがろくでもないことを始めたからでしょう。私だってあの男がいるこの国に戻ってきたくなどありませんでしたとも」

「ふん」

 

 サヌバヌールが笑みを浮かべる。

 

「それにしてもやってくれたものだ。我が計画が完遂間近というところでリムジー本家に潜入し、貴様の父親を始めとした人質をあっという間に全て解放して我が家臣達の大半を拘束。やはり貴様は優秀だな。

 貴様を我が手に出来れば、計画も随分順調に進んだろうに、惜しいことよ」

「私の功績ではありませんよ。大方は夫や弟弟子、友人たちのおかげです」

 

 サヌバヌールの笑みが大きくなる。相手を押し潰すような、威圧感溢れるそれ。

 

「ディテク王弟家の王子か。あの男(イサミ)といい、オリジナル冒険者族をたらし込むのは得意らしいな」

「そう言う言い方は不愉快ですね」

 

 グッグッグ、と濁った笑い声。

 

「褒めたつもりだがな。優秀なものを繋げ、まとめ上げるのもまた優秀さの証よ」

「いい加減世間話はやめましょう。さっさと降参するなり逃げるなりしなさい。

 このまま進めても、あなたの計画が成功することなどありえません。

 最早全ては露見しているのですから」

「それはどうかな。創世八家がそれを認識しているなら、ここに乗り込むのがお前達だけなどと言うことはあるまい。

 ファーレンの当主はディテクで人事不省、留守居やお前の父を含めて、魔導君主を名乗る平和ボケした老人どもは様子見に徹しているのであろうよ」

「・・・」

 

 図星を突かれ、アンドロメダが沈黙する。

 また笑い声。

 

「まあ魔導宮の仕掛けを知っていて、そこから我の計画に気がついたまでは見事だったが・・・後が続かなかったな」

「やはり水に鬼薬(ヤクシャ)を混ぜて・・・!」

「うん?」

 

 サヌバヌールが怪訝な顔になり、すぐに破顔した。

 

「なるほど、なるほど! 水源地に鬼薬(ヤクシャ)を投入して、クリエ・オウンド中の人間に飲ませると、そう考えたか!

 惜しいが違うな。それでは不確定性が大きい上に、水を飲むタイミングの違いで効果時間がずれる危険性も大きい。

 水道を直接使わず、水瓶に水を溜めておく家も多いからな」

「む・・・では一体・・・」

 

 必死に考えるアンドロメダを見下ろして、サヌバヌールが苦笑する。

 

「普段のそなたであればすぐに考え至ったであろうがな。封印の手かせ(シールド・シャックル)をはめられた状態であれば詮無いことか。

 鈍くなった頭でよく考えるがよい。食物よりも水よりも人に不可欠で、一分とおかずに摂取せねばならぬもの。それはなんだ?」

「・・・空気? まさか、香の形で!?」

 

 サヌバヌールが満足げに頷いた。

 

「正解だ。鬼薬(ヤクシャ)を香にして、クリエ・オウンド全体に焚きしめる。

 都を覆う結界には、雨や大風を凌げるよう、一時的に水や空気を通さぬ機能がある。

 それを発動して十分な量の香を焚けば、それこそ魔導宮の地下にでもいない限り、都にいる全ての人間が十数分で鬼薬(ヤクシャ)のとりことなる。

 後は魔導宮の仕掛けを発動させれば終わりだ。貴様の父も、他の魔導君主も、むろん地べたを這う無能なゴミどもも! 全てが我が手に落ちる!

 ハハハ! ハハハハハハハ! 世界が我が前にひれ伏すのだ!」

 

 高笑いをあげるサヌバヌールを、アンドロメダと三人娘が睨み付ける。

 

「あなたがこれほど愚かとは思いませんでしたよ、サヌバヌール。自分に都合良く考えることしかできなくなりましたか。物事が何もかもあなたの思い通りになるとでも?」

 

 高笑いが止まる。

 アンドロメダたちを見下ろす顔には、歯ぐきをむき出しにした満面の笑み。

 

「愚かなのは貴様だ、アンドロメダ。ほんのわずかにでも阻止される可能性がある計画を、我がペラペラ喋ると?

 そんな物は三文英雄譚の悪役だけで十分よ」

 

 アンドロメダの顔が、さっと青くなる。

 

「ま・・・まさか・・・」

 

 サヌバヌールの笑みが更に大きくなる。

 

「3分50秒前に、既に実行したわ」

 

 爆発音。

 杖にまたがったヒョウエたち三人が壁を突き破り、縦穴内部に侵入して来たのはまさにその時だった。




言ってやった言ってやった!w

ミロヴァ → ミハイロヴァ(ミハイルの女性形) → ミハエル・ラスプーチン(X-MENのヴィランでポラリスと同じくアポカリプストゥエルブの一人)
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