毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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07-30 超人対黙示録の男

「Woooooooooooooooo!」

 

 魔神が吼えた。

 どういう理屈かはわからないが、鬼薬(ヤクシャ)で服従させた市民から自発的に拠出させた魔力。クリエ・オウンドに住まう数十万人のそれを束ねた膨大な力を吸収し、巨大化した。

 

 空中の青い鎧に向かって拳を繰り出す。

 その拳には先ほどヒョウエが地面を掘り進んだときと同じ、回転する螺旋状の念動障壁。

 高速でかわす青い鎧だが、それでもかわしきれない鋭さと速さがその拳にはある。

 

「!」

 

 回転する念動障壁が青い騎士甲冑の表面をかすり、ぎゃりぎゃりぎゃり、と耳障りな音と火花を立てる。

 鋭く反転した青い軌跡がこんどはこちらだとばかりに、サヌバヌールの胸元を目指して一直線に疾った。

 

「ぬ!」

「ぐおっ!」

 

 青い鎧の拳がサヌバヌールの胸板に炸裂する。

 最早音とも言えない、腹に響く物理的衝撃が周囲を襲った。

 だがそれでもサヌバヌールは僅かに揺らいだ程度。

 古代魔法文明の技術の粋である"炎の魔神(ザイフリート)"ですら数歩は後退させたそれを受けてだ。

 僅かな驚愕と同時に、しかし青い鎧は僅かな時間でそのからくりを見抜く。

 

(念動障壁! 古代遺物の魔道甲冑に加えて膨大な魔力に支えられたそれが、強固な守りになっている!)

 

 つまりサヌバヌールは常時念動障壁を体表面に張っている。イサミの爆弾を受けて顔にやけど一つ負ってないのもそのせいだ。

 それが攻防一体の武装として機能しているのだ。

 

「羽虫が! ちょこまかと!」

 

 魔道甲冑の両肩が開き、無数の白い炎弾を吐き出す。

 それは回避機動を取る青い鎧を、操られているかのように追尾して襲いかかった。

 

「くっ」

 

 青い鎧が両手を構える。

 白い炎弾の群れが軌道を曲げて一箇所に集中し、盛大に連鎖爆発を起こす。

 爆発した後、無数の小さな白い炎が燃えながらパラパラと地面に落ちていく。

 フロアに落ちた白炎が広範囲にわたって炎のじゅうたんを形作った。

 

「今度はこちらから行くぞ!」

 

 閃光が走った。

 巨人の周囲を鋭角的に屈折する青いレーザービーム。

 超音速で空を切り裂くそれが絶え間ないソニックブームと共に巨人を乱打する。

 

 だが巨人と化したサヌバヌールもただ者ではない。

 同等とは言わないまでも、亜音速の身のこなしは体をブレさせるほどに早かった。

 青い輝線と化したヒョウエと、残像を繰り返して分身したかのような錯覚を起こさせるサヌバヌール。

 腹に響く重い衝撃音が途切れず鳴り響く中、それはある種の舞を舞っているようにも見えた。

 

(むう)

 

 兜の中でヒョウエが唸る。

 「殴り合い」は現在青い鎧が圧倒的に優勢だ。

 だがサヌバヌールが翻弄されっぱなしかというとそうでもないし、何発かは青い鎧もサヌバヌールの拳を受けている。

 とは言え互いにほぼダメージはない。

 

 互いに膨大な魔力をもって強力な念動障壁と具現化術式を身にまとって戦うヒョウエとサヌバヌールは、言わば同質の存在同士の戦い。

 どちらかがどちらかを圧倒できるほどの差は今のところない。

 強いて言うなら自前の"隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"が生み出すそれと、クリエ・オウンド市民から集めたそれという違い。

 市民のエネルギーを無理矢理供出させているなら、あるいはエネルギー切れも狙えるかも知れない。

 

(だが・・・!)

 

 魔力は無限ではない。そして生命力も当然無限ではない。

 魔力が尽きて気絶するだけならいいが、疲労で死んだ人間がいるように、術の使いすぎで死んだ術師も絶えたことがない。

 このままでは魔力の供出のしすぎで死亡する人間が間違いなく出る。

 その前に勝負をつけねばならなかった。

 

「むん!」

「ぬお?」

 

 青い鎧が巨人に「組み付いた」。

 一撃を与えて離脱という今までと変わった動きに、巨人(サヌバヌール)が僅かに戸惑う。

 次の瞬間、その体が宙に浮いた。

 

「お、おおおおおおおおおおお!?」

 

 背中側から腰のあたりに取り付いて、そのままサヌバヌールの身体全体を持ち上げる。

 体格差十倍のバックドロップ。

 落とす先は――縦穴の中。

 

「おおっ!」

「やっちまえ、ヒョウエ!」

「サヌバヌール様!」

 

 仲間達の声援と、サヌバヌールの部下たちの悲鳴。

 それを聞きながら、サヌバヌールの巨体は縦穴の中へと真っ逆さまに落ちていった。

 

 

 

 落ちる。落ちる。落ちる。

 重力という自然現象に加えて青い鎧の念動の全力が落下のベクトルに加わる。

 

「ぬうう!」

 

 サヌバヌールもまた全力の念動でそれに抗うが、1000トン近い巨体の質量を相殺できるほどではない。

 一秒ごとに加速度は増し、500m下の金属の床が見えてくる。

 落下を始めて九秒、後一秒で床に激突する。

 

「終わりだ! サヌバヌール!」

「そなたがな」

「?!」

 

 瞬間、サヌバヌールが消えた。

 青い鎧の直上、逆さまになった青い鎧から見れば足元にサヌバヌールの巨大な足の裏。

 轟音。

 何の反応をするいとまもなく、巨大な足が青い鎧を金属床に埋め込んだ。

 

「フハハハハハハ! どうだ、ん? んんん・・・! む!」

 

 青い鎧を踏みにじっていたサヌバヌールの体が揺らぐ。

 

「ぬおっ!?」

 

 右足を持ち上げられ、サヌバヌールが地響きを立てて転倒した。

 宙に浮くのは青い鎧。見た目に全く損傷はないが、動きが僅かに鈍い。

 

「フハハハハ! ダメージは隠せぬな! 念動の制御にも影響が出ておるぞ」

「お気遣い痛み入る。しかしよもや瞬間移動(テレポート)とはな・・・ずっと隠していたと言うことか」

「見せびらかす必要もあるまい。ミロヴァという隠れ蓑もおったことであるしな」

 

 ニヤリと笑ったサヌバヌールが、笑みを消した。

 その視線が、床の端に落ちたいくつかの人体に向けられる。

 

「惜しい女であったわ。だが負けた以上はそれまでのこと」

「冷酷だな」

「力あれば生きる価値あり、力なくば死に果てるのみ。それがこの世の理よ」

 

 すっ、と青い鎧の雰囲気が変わった。

 

「なればここでそれがしが勝てば、貴公に生きる価値無しと言う事になるな」

「いかにも」

 

 サヌバヌールが頷く。

 

「もっとも」

 

 その口元が再び笑みの形を作る。

 

「そなたが我に勝つ可能性など万に一つもないがな!」

「!?」

 

 サヌバヌールの背中から、10を越える何かが射出された。

 魔力ロケット、この世界で言えば「魔法の箒」のような魔力を噴出して推進する小型ユニット。

 小型と言っても巨大化したサヌバヌールから射出されたものであるから、一つ一つが2m近くある。

 リフティングボディの本体に小さな翼が付き、先端には魔力射出口らしき部位。

 

「オールレンジ攻撃?!」

 

 驚愕する青い鎧に向けて、12本の魔力光が発射された。

 避けようとしたところでサヌバヌールが合わせた両手から渾身の念動を放つ。

 

「かぁぁぁぁぁっ!」

「ぬっ!」

 

 念動による金縛り。

 古代兵器巨人(ギガント)が保有していた機能と同じだが、100mを越える巨人(ギガント)が数十機で何とか封じた青い鎧を、一瞬とはいえサヌバヌールの念動は押さえ込んでみせる。

 全方向から放射された魔力のビームが青い鎧を直撃した。

 

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