毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ふん、この程度ではやるだけ無駄か」
結果がわかっていたかのように――事実、予想はしていたのだろうが――サヌバヌールが独りごちる。
全方向から放射された魔力ビームの爆発。その光芒の中から飛び出したのは青い鎧。
その鎧には傷一つついていない。
「・・・」
「・・・」
にらみ合う巨人とヒーロー。
二人の周囲を、いつもヒョウエが金属球でやっているようにサヌバヌールの
(・・・?)
ふと嫌な予感がする。
そして現実はその予感を裏切らなかった。
「ルクヴァット・ショーシャ!」
「!」
サヌバヌールが素早く呪文を唱えて印を切る。
二人の前後左右上下を囲む12体の
12の頂点を結ぶ正二十面体の緑色のフィールド。
「これ・・・は!」
一瞬戸惑い、直後驚愕に震える青い鎧。体中から急速に何かが漏れていく。
魔力と呼ばれる、青い鎧の強さの根幹を成す力。
「フハハハハハ! 驚いたようだな!
どうだ、魔力を吸収される気分は!」
基本的に魔力は生命力を練り上げ、精製したもの。つまり人間の体内で働く力だ。
術式などによって外に放出したそれを吸収したり抑制したりすることはできるが、人間から体内のそれを直接吸収する事は極めて難しい。
それが術師の常識のはずであった。
「・・・そうか、魔導宮の魔力吸収機構!」
「頭の回転も速いようだな。さすがだ」
歯ぐきをむき出しにして魔神が笑う。
恐らくサヌバヌールは魔導宮の魔力吸収機構を研究し、自らの魔道甲冑に組み込むなり術式を構築するなりしてそれを再現することに成功したのだろう。
"
「さあ、
「くっ!」
乱打の音が、地の底で再び鳴り響き始めた。
打撃の舞踏が続く。
結界に閉じ込められた二人が、互いの全力を尽くして拳を放ち合う。
青い閃光の筋と化した青い鎧。その閃光を拳で捉えんとするサヌバヌール。
だが、先ほどに比べ僅かに青い鎧の速度が鈍っている。魔力を吸収され続けている影響だ。
一方でサヌバヌールの拳は僅かながらに加速し続けている。
青い鎧の魔力を一方的に吸収し、結界を通じて自らに流し込む。
結界を作る十二機の
「ぐっ!」
サヌバヌールの拳がクリーンヒットした。
続けて一発。更に連続してもう一発。
とどめとばかりに平手で打ち落とされ、床に落ちたところを全力の踏みつけ。
「ぐおおっ!」
一発、二発、三発。追撃の踏みつけに、床面に完全にめり込んだ青い鎧はたやすく逃れられない。
「ハハハハハ! ハハハハハハハ!」
サヌバヌールが拳を握る。今度は拳の周辺の念動障壁が
「がっ!」
着弾と共に魔力の爆発。
が、これはサヌバヌールの起こしたものではなかった。
鎧の表面を構成する術式を崩壊させて魔力を一瞬爆発的に放出。リアクティブアーマーのような使い方をして、青い鎧は宙に舞い上がった。
高度10mほどに逃れたときには既に破損した鎧表面は再生している。
「ほほう、器用なものだ。だがどうだ? 魔力の残りはまだあるのか? 我の魔力はまだまだ尽きぬぞ。
しかしこの魔力吸収結界の中でまだそこまで動けるとは! 惜しい、まこと惜しいな!」
「・・・」
青い鎧が無言で姿勢を正す。
「む」
何か危険信号を感じ取ったかサヌバヌールが口を閉じた。
素早く両手を合わせて念動の渦を発生させようとするが、青い鎧が一言呟く方が早い。
「
「なっ!?」
瞬間、周囲が漆黒に包まれた。
思わず、驚愕がサヌバヌールの口から漏れる。
続いて爆発音。一、二、三、四・・・あわせて立て続けに十二。
ふっ、と。現れた時同様、唐突に闇は消え去るが、魔導端末とのリンクは回復しない。
周囲には魔力を伴った爆発の痕跡。結界は消失している。あの暗黒に包まれた一瞬で、魔導端末は全て破壊されていた。
「こしゃくな!」
発動しかけだった念動の渦を放ち、動きを止めようとする。
先ほど以上の全力の魔力を込めた念動力の破壊の渦。これに巻き込まれれば、メットーの王城ですらひとたまりもあるまい。
その渦を。
「なっ! なんだとぉ!?」
青い鎧は左手を軽く掲げるだけで止めた。
いや、正確には受け止めているのではない。
青い鎧の掲げた手の、わずか数センチ前で黒い球体に吸い込まれて念動力の渦は消滅し、マントの端を揺らすことすらできていない。
青い甲冑の左の籠手。その手の甲から手のひらまで、暗黒の星を表すルーン――ヒョウエの使う金属球に刻まれたそれと同じもの――が光っていた。
そう、金属球だ。ヒョウエの"
同じくヒョウエが具現化させた術式である
今までそれをしなかった理由はただ一つ――見るものが見れば、ヒョウエの術式と青い鎧の術式が同じであると察せられてしまうからだ。
並の術師ならともかくサヌバヌールやミロヴァ、エルフの森ならシャンドラやアディーシャ、ヒョウエの師匠やディテクの宮廷魔術師長と言ったあたりは、ルーンと術式を見れば確実に類似性に気付くだろう。
ゆえに。
「これを見せてしまったからには相手を確実に倒さねばならない――
「!?」
サヌバヌールが目を剥いた。
青い鎧が掲げた拳、それが一瞬に巨大化して現れたのは、拳だけで30mはありそうな巨大な腕。それが青い鎧の右肩から生えている。
「ぐぶぉっ?!」
激しい打撃音と破砕音。
巨大の上にも巨大な拳がサヌバヌールの巨体を上から丸ごと叩き潰す。
奇しくもサヌバヌールが巨大化したときの焼き直し。青い鎧の"
さすがの古代遺物の魔道甲冑が軋んでひび割れた。
「"
「がっ! ごっ! ぐおっ!」
巨人のみぞおちに、超絶の雷撃を纏った拳の三連打。
真なる魔法にて生み出された超古代の
「このっ・・・いい加減にしろっ!」
魔導甲冑の肩が開き、砲口がまばゆい光を吐き出す。
見るものが見ればわかるそれは"
城砦を丸ごと塵と化す、もっとも危険な術式の一つ。
「"
静かに呟いた青い鎧の左の人差し指が、くるりと宙に円を描く。
出現するのは直径3mほどの厚みを持たない真円の鏡面。
サヌバヌールの切り札の一つであった物質破壊光線は、普通の鏡が光を反射するように、その鏡面に触れて丸ごと反射する。
「ぐあああああああああああ!?」
物質破壊光線に飲まれるサヌバヌール。魔導甲冑に走るスパーク。
古代の具現化術式の防御機能が、かろうじてサヌバヌールの命と自身を救う。
光線の発射を中断したとき、魔導甲冑の節々からはうっすらと煙が、そしてその背後の壁はサヌバヌールの形を残して円形にえぐられている。
自身も防御のために魔力を振り絞り、一瞬朦朧とするサヌバヌール。
「ぐぶぉっ!」
意識がはっきりした直後に青い鎧が一撃を放ったのか、それとも一撃の衝撃が意識を取り戻させたのか。
「"
ともかくもそれが最後の一撃。
渾身の魔力を込めた燃える拳が、貫手の形をとってひび割れたみぞおちに突き込まれる。
「
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
貫手から内部に流し込まれる超高熱の炎。
それは内部から魔導甲冑とサヌバヌールの肉体を灼く。
「
次の瞬間サヌバヌールの巨体は炎をあげ、大爆発を起こした。
ドラグ・スレイヴや「雷の娘シャクティ」の呪文を未だに空で言える人、手を上げてー(ぉ