毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「詳しいことは後日決めるとしよう。大儀であった!」
そう言われて退出を促された一同は、謁見の間を出て大廊下を歩いていた。
行きとは違い、今度はベアードもゴードも普通に歩いている。
互いに時々睨み付けながらではあったが。
その後ろを何となく並んで歩いているヒョウエたちとゴード。
五人とも今聞いた話の意味を考えている。
「妙なことになりましたねえ」
「ほんとだよ。まあ依頼受けたら変な事になってたから逃げた事も結構あるけどさあ」
「ゴードさんって後先考えず依頼を受けてトラブルに巻き込まれるタイプじゃありません?」
「そんなことないよー、ほんとほんと。ただ単に時々運が悪いだけだってばさあ」
本気で言っているのかどうなのか、にこにこと両手を広げて本当です!アピールをするゴード。
「どうせ依頼が張り出されたら最初に気に入った依頼を一枚取ってそのまま受諾書にサインしてるんじゃないですか? 『スピードが命!』とか言って」
「な、何故わかった!?」
本気でショックを受けた顔のゴードに、はあと溜息をつく。
「確かに早いのうまいの安いのは良いことですけど、少しは考える時間もおきましょうよ。ギルドが一応審査してるとは言っても、結構裏のある依頼って多いんですから」
「壁に残った依頼を全部さらって、しょっちゅう裏のある依頼を掴まされているお前が言うと説得力があるな?」
「うっ」
にひひひ、とモリィが笑みを浮かべてヒョウエの頬をちょんちょんとつつく。
顔は頬のこけた精悍な幻影のそれのままだが、顔自体を変えているわけではないので、指先から伝わってくる感触がふにふにしていて気持ちいい。
リアスが自分もつつくべきか真剣に思案しているのを見て、カスミが溜息をついた。
そんなこんなをしているうちにエントランスを通って門をくぐり、跳ね橋を渡る。
門を出た瞬間ヒョウエが自分の顔をつるりと撫でると、幻影で覆われていたそれが元の顔に戻っていた。
跳ね橋を渡り、門衛が両脇に並んだ場所を越えて城の敷地の外に出る。
支店長二人が最後ににらみ合った後、別々の方向へ歩き出す。
「冒険者の方々、こちらについてきて頂きたい」
「ミスタ・ゴード。事務所で次の仕事の話を」
「お二方、ちょいとお待ちを」
そこで声をかけたのはゴードだった。
「む」
「なんだね。この場でなければいけないことかな」
やや不快そうに声を上げたのは、カル・リス社のハイド支社長。
今回の依頼におけるゴードの雇い主にあたる人物だ。
「ああ。この場で聞いておかなきゃいけないな」
ヒョウエとのかけっこの最中や無駄話をしている間のそれとは違う、今までにない硬い表情。
支社長二人もやや居住まいを正す。それを見ながらゴードが言葉を継いだ。
「今回の事、俺は『急ぎの運搬依頼』としか聞いてねえ。聞いてみればこっちの毎日戦隊エブリンガーの皆さんもそうだっていうじゃないか」
「毎日戦隊エブリンガー? は、はははは! 何かねそのセンスのない
「まじめな話だぜ、ハイドさんよ」
「・・・」
硬い表情を崩さないゴードに、ハイドも笑いを収める。
三人娘もだ。普段ぐちぐち文句を言うモリィでさえ、本気で睨み付けているのだから何をか言わんやである。
肝心のヒョウエはにこにこ笑っているが、これはもちろん気にしていないわけではない。
内心でこの男をブラックリストに入れている。
笑みとは本来攻撃的な(ry
「で? 聞いていればどうもおたくら二社でレースをするみたいじゃねえか」
「まだ未定の話だったものでね。もちろんここからは新しい依頼になるし、相応の依頼料も支払おう。改めて冒険者ギルドを介してもいい」
「別に受けるのが嫌だって話じゃねえよ。ただレースなら競い合いってことになるだろう。俺はな、妨害行為のある競争ってのは好きじゃねえ」
じろり、とハイドを睨むゴード。
睨まれた支社長はにこやかな笑顔を作る。
「まさか。変な噂を聞いているようだが、我が社はそんな事はしないよ。むしろそちらのタム・リス社の方を疑うべきじゃないかな」
ベアードの方をチラリ。
(嘘っぱちだな)
(でしょうね)
モリィが囁き、ヒョウエが頷いた。
彼女の《目の加護》は表情から相手の内心を読み取ることができる。
ヒョウエの目から見てもハイドはかなりうまく隠していたが、それでも彼女の目をごまかせるほどではなかった。
そして、ゴードが何かを言う前にベアードの方が爆発した。
「ふざけるな! 我が社のノウハウを盗んで独立して以来、陰に日向に妨害工作を仕掛けてきているのはそちらだろうが! 先月もラキ伯爵領への薬の輸送を妨害しおって!
他の品ならまだしも薬だぞ! 人の命がかかっているんだぞ!」
「おやおや、言いがかりをつけられては困りますね、ベアード支社長。我が社が妨害工作をしたという証拠でもあるんですか?
あるならば、恐れながらとお上に訴えればよろしいではありませんか。
そうでないなら、根拠のない噂を垂れ流すのはやめて頂きたいですね」
「ぬぬぬぬ・・・!」
顔を真っ赤にするベアードだが、うまい反論が思いつかない。
ふん、とハイドがあざけるような笑みを浮かべる。
「待ちなよ。まだ俺の疑問に答えて貰ってないぜ。向こうへの妨害行為はするのか、どうか」
厳しい顔のまま言葉をぶつけるゴードに、営業スマイルを貼り付けながらハイドが答える。
「もちろんしないとも。我が社は正々堂々と戦って相手を打ち負かすのだ」
「けっこう。それを守るなら俺はあんたらと契約してやるよ。ただし」
「ただし?」
鋭い目でハイドを見下ろすゴード。
「約束を守らなかったら全部チャラだ。そいつは覚えておくんだな」
「かまいませんとも。それでは失礼、ベアード支社長と妙な名前の冒険者諸君。
正々堂々と雌雄を決しようじゃありませんか」
「ふん! 何が正々堂々なものか! そこの君も注意するんだな! 勝つためだったら君にだって一服盛りかねない奴らだぞ!」
ヒゲの支社長の捨て台詞を切れ目の支社長が鼻で笑い、去っていく。
長身の緑等級冒険者は肩をすくめた後、にやりと笑みを浮かべて最初の時のように指を二本、シュッと振る。
ヒョウエもにやりと笑い返すと、気持ちよさそうに高笑いしながら去っていった。
リアスが溜息をつく。
「本当に気持ちのいい方ですわね・・・嫌な思いをなさらなければよろしいのですが」
ベアードが頷く。
「まったくだよ。奴の言う通り明白な証拠がないから正式に訴え出ることはできないが、下っ端や野盗を雇っての妨害工作や、法に触れない範囲での嫌がらせがここ数年日常茶飯事だ。
多分今回も仕掛けてくるだろう。まっすぐな青年だし、余り嫌な物を見せたくはないな・・・君たちと彼が正々堂々勝負できればいいんだが」
憂鬱そうな顔のベアード。ヒョウエが敢えて軽く振る舞ってみせる。
「おや、僕たちが依頼を受けるといつ言いました? 僕たちだって話によっては依頼をお断りするかも知れませんよ? もちろん、話自体も今回の報酬を全額頂いてからですけどね。
早く届けたことの追加報酬もお忘れなく」
笑みを浮かべて片目をつぶる。
ベアードは一瞬きょとんとして、それから破顔した。
「は、ははははははははははは! それはもっともだな! 取りあえずもうすぐ昼時だ。そのへんは飯を食いながら話そうじゃないか。もちろん私のおごりだ!」
「ヒャッホウ! 太っ腹だねえ、おっちゃん!」
指をパチンと鳴らしたのはモリィ。
にっこりと念を押すのはヒョウエ。
「おいしい店でしょうね?」
「もちろんだとも、とっときのを教えるよ」
そう言ってやや腹の出た中年商人は不器用にウィンクした。