毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

248 / 374
08-06 ダルクの神馬

 伝説は伝える。ダルクの果てしなき草原に一つのダンジョンがあると。

 どこが入り口かも定かではないそれは稀に自ら勇者を招き、試練を課す。

 入り口の中にはやはり果てしなき草原が広がり、無数の獣が闊歩している。

 

 麒麟。天馬。飛龍。一角獣(ユニコーン)鷲獅子(グリフォン)合成獣(キメラ)。貘(ばく)。白澤。

 巨大な猪、青き巨狼、象ほどもある鹿、鉄の牛、大蛇、大モグラ、人面の羊、毒を吐くオオトカゲ。首切り兎、殺人リス。

 

 それらのモンスターをかいくぐり、ダンジョンとそしてダンジョンの深奥に住まう真の龍に認められた勇者は一頭の白馬を授かるという。

 青い瞳とひづめ以外は一点の染みなく全身が純白の巨馬。

 それはあらゆるダルク人から等しく敬意をもって「神馬」と呼ばれる。

 

 言ってみればモンスターの一種なのだが、人に害を為さず、主に忠実であり、ほとんど不老不死であり、風よりも速く走る。

 現在ダルクに存在する大小数百の氏族の中でこれを持つものは三つ。

 いずれも神馬に認められた勇者の子孫である族長の家系が代々伝えるものだ。

 

 そして今、ダルク開闢以来国外不出であった神馬の一頭がディテクにやってきていた。

 メットーの中央を南北に貫き、南門から王城に直通するクラーク大通り。

 特にパレードがあるわけでもなく、ディテク側が出迎えを準備していたわけでもない。

 それでも供を連れてメットーの大路を堂々と進む白馬の存在感は圧倒的であり、メットーの人々の目は釘付けになった。

 

「すげえな。何だあの馬?」

「何でもダルク一の馬だそうな」

「一体どうしてそんなのがディテクに? 例の何だかってあれのせいかい」

「なんだ、知らないのか? 五大国が仲良くするためにメットーからアトラまでレースをするんだってよ。あれがダルク代表なんだとさ・・・」

 

 仕事をさぼっている職人のおっさんたちが交わすそんな会話を聞きつつ、ヒョウエたちもまた大通りでそれを見ていた。

 

「すげえなあの馬」

「ええ・・・国王陛下だってあんな素晴らしい馬はお持ちではないでしょう」

 

 自身も騎兵(サムライ)としての教育を受けているリアスが、感に堪えないといった風情で首を振った。

 その頬が僅かに朱に染まっている。

 それをよそにどうしたものかとモリィが頭をかいた。

 

「あーいや、それもあるんだけどな」

「魔力ですね」

 

 ヒョウエの言葉にモリィが頷く。

 

「お前ならわかるだろうけどさ、とんでもない魔力だぜあれ。今まで会ったモンスターで言うなら、地竜(リンドブルム)毒龍(ヒュドラ)と比べても遜色ねえ」

「そんなにですか。あれもガーディアン級でございましたよね」

 

 カスミが目を見張る。

 最初に試しで潜ったヒョウエ保有のダンジョン「郊外の保養地(サバーブ・リゾート)」で遭遇したのが真なる龍の力の劣った子孫である亜竜の一種、毒龍(ヒュドラ)であった。

 力が劣るとは言えそれは天地を揺るがす真の龍と比較してのこと。周囲を毒の湖に変えた事も含めて、四人の全力をもってしてもかなりの苦戦を強いられた戦いだった。

 それと同等の力を普通の馬と大差ない肉体に秘めているのだ。

 全力で走ればどれだけの速度を発揮するものか。

 

「・・・」

「・・・!」

 

 ふと、神馬の騎手とヒョウエの視線が合った。

 黒目黒髪に日に焼けた肌。野性的で精悍、かつ冷酷な印象を与える顔立ちの壮年の男である。

 その口元がにやりと歪んだ。目は獲物を見つけた狼のように鋭く細められている。

 ヒョウエが笑みを返して帽子をちょいと持ち上げる。

 笑みをやや大きくした後、男は前に向き直ってそのまま去っていった。

 

「・・・っふう」

 

 モリィが大きく息をついた。既に秋であるのに、額が薄く汗ばんでいる。

 

「何だありゃ。やべえ奴だぞ」

「相当な手練れとお見受けしますわね」

「はい、お嬢様」

 

 カスミが頷く。

 

「アル・グ氏族のカイヤン。氏族の次期族長で黒等級冒険者ですよ。

 神馬を駈って、無数の冒険をくぐり抜けた本物の英雄です。

 神馬を授かった氏族の始祖でダルクの伝説の英雄ヘト・ターの再来とも言われていて、馬と話が出来るそうです」

「へええええ」

「馬と話が出来るって・・・それも《加護》ですか?」

「ええ、騎神(フリフット)の・・・」

 

 と言いさしたところでヒョウエが周囲の様子に気付く。

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 いつの間にか周囲の人々がヒョウエたちの会話に耳を立てていた。

 

「・・・撤収っ!」

 

 杖を掲げて号令をかけると、三人娘が苦笑しながらそれに続く。

 

「あ、ちょっと待てよ術師の嬢ちゃん! 一杯おごるからさ、話をもっと聞かせてくれ!」

「申し訳ありませんが、またそのうちにっ!」

 

 性別に対する誤解を解くのももどかしく、駆け足でその場を後にする。

 

「ああ、そんなあ! ちくしょう、べっぴんさんばかりだったのに・・・」

「下心丸出しだから警戒されたんだよアホウ」

「おめえが人のこと言えた義理か!」

 

 後ろから聞こえる会話を小耳に挟み、ヒョウエはげんなりと、三人娘はますます苦笑を強くした。

 

 

 

 王都の東西南北を井桁状に走る四本の準メインストリートのひとつ、西のニコルソン通り沿いにあるアキリーズ&パーシューズ魔法道具店に一行はやって来ていた。

 ヒョウエの兄弟子と姉弟子が夫婦で共同経営する店である。

 

「こんにちわー・・・あれ?」

 

 ヒョウエが戸を開けて挨拶するが返事がない。

 

「留守なのでは?」

「鍵がかかってませんし、台帳が出しっぱなしですからいるはずですよ。

 中で作業でもしてますかね。兄さん姉さん入りますよー」

 

 勝手知ったる他人の家、一声かけて中にずんずん入っていくヒョウエ。

 一瞬顔を見合わせて、三人娘もそれに続いた。

 

「ヒョウエ様、そちらの方から話し声が」

「応接間か。来客かな?」

 

 こんこんこん、とノックをしてから扉を引き開ける。

 

「兄さん姉さん、お邪魔します・・・えぇっ!?」

「なんだ・・・げっ!」

「な!?」

「えっ!」

 

 アキリーズ&パーシューズ魔法道具店の応接間。

 ソファに並んで座るイサミとアンドロメダ、それに向き合って座っている小柄な老婆が一人。

 先だっての事件で戦ったサヌバヌール配下の大魔術師(ウィザード)、ミロヴァだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。